「縁」(えん)とは物事のつながりのこと
「あの人とは縁がある」「ふしぎな縁を感じる」など、ふだん何気なく使っている「縁」という言葉には、幅広い意味合いがあります。まずは「縁」のさまざまな意味について確認していきましょう。
「縁」のさまざまな意味
「縁」の意味は、人とのかかわりあいに限られたものではありません。ときには「仕事が縁で知り合いになった」のように、きっかけを表す言葉として用いられます。
「親子の縁」「兄妹の縁」のように、血縁的なつながりを意味することもあるでしょう。
【縁】えん
1.《(梵)pratyayaの訳》仏語。結果を生じる直接的な原因に対して、間接的な原因。原因を助成して結果を生じさせる条件や事情。「前世からのー」
2.そのようになるめぐりあわせ。「一緒に仕事をするのも、何かのーだろう」
3.関係を作るきっかけ。「同宿したのがーで友人になる」
4.血縁的、家族的なつながり。親子・夫婦などの関係。「兄弟のーを切る」
5.人と人とのかかわりあい。また、物事とのかかわりあい。関係。「金の切れ目がーの切れ目」「遊びとはーのない生活」
6.(「椽」とも書く)和風住宅で、座敷の外部に面した側に設ける板敷きの部分。雨戸・ガラス戸などの内側に設けるものを縁側、外側に設けるものを濡れ縁ということが多い。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
また、日常生活ではしばしば「ご縁」という言葉が用いられます。「ご縁」は男女の間柄のほか、友人や上司、仕事との出会いを指す言葉として、「この度は貴重なご縁をいただきまして」などビジネスシーンでも活用できます。
「縁」には「ふち」の意味もある
「縁」には、前述したような人や物事のつながりだけでなく「ふち」の意味合いもあります。「机の縁」「崖の縁」のように、物の端や周りを意味する言葉です。
「縁側」(えんがわ)のように、住宅の外側に面した板敷きの部分を表すこともあります。縁側は、場所によって「くれ縁」や「濡れ縁」(ぬれえん)など呼び名が変わることが特徴です。
「濡れ縁」は、住宅の外周に造られます。雨が降ると濡れてしまうことが名前の由来です。
雨戸や窓の内側に造られる縁側は「くれ縁」とも呼ばれ、その起源は平安時代まで遡るといわれています。スペースの広い「くれ縁」は「広縁」と呼ばれるなど、種類もさまざまです。
「縁(えん)がある」のように物や人とのつながりを意味する用途が多い「縁」ですが、まったく異なる意味合いがあることも覚えておきましょう。
「縁」を使った慣用句やことわざ
幅広い意味合いをもつ「縁」は、慣用句やことわざも多い言葉です。ここからは「縁」を使ったさまざまなフレーズをご紹介します。それぞれの正しい意味を理解し、日常生活に取り入れてみてください。
縁と浮き世は末を待て(えんとうきよはすえをまて)
良い縁やチャンスを掴むには、焦っても仕方がないという意味合いのことわざです。「浮き世」には、「現世」や「人生」などの意味があります。
「末を待て」とあるように、縁を無理に追い求めることよりも、自然と訪れるのを待つことに重点が置かれています。物事がなかなかうまく進まず、悩んでいるときに思い出したいフレーズといえるでしょう。
また、「縁と浮き世は末を待て」には「時節」や「月日」を用いた以下のような似た意味合いのことわざもあります。
縁と浮き世は末を待て
良縁と好機とはあせってもだめで、自然に訪れるのを待つべきである。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・縁と時節の末を待て
・縁と月日の末を待て
縁に付く
「縁に付く」は、女性が男性の家に嫁ぐことを意味する言葉です。「嫁入り」(よめいり)の意味合いが強いことから、男性への使用頻度は少ない言葉といえるでしょう。嫁ぎ先との縁が生まれたことを表し、以下のようなフレーズで用いられます。
縁えんに付つ・く
嫁入りする。また、嫁入りさせる。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・長い付き合いのある家に縁付いた
縁は異なもの味なもの(えんはいなものあじなもの)
男女の縁は、どこでどう結ばれるかわからないことを意味することわざです。また、だからこそおもしろく不思議であることを表しています。
「縁」は「えにし」とも呼ばれ、この場合は男女間を意味します。
【縁】えにし
《「えに(縁)」+強意の副助詞「し」から》えん。ゆかり。多く男女間についていう。「われら二人、なんという薄いーであろう」〈藤村・春〉
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「縁は異もの味なもの」の「縁」も、男女の関係を表すものです。また、同じような慣用句、四文字熟語として以下の3つが挙げられます。
・縁は味なもの
・縁は知れぬもの
・合縁奇縁(あいえんきえん)
「合縁奇縁」も、多くは男女の関係を表す四文字熟語です。人と人とのめぐり合わせが不思議な力によるものであることを表しています。
「合縁」は、気心がよく合う関係を意味する言葉です。「奇縁」は、思いもかけない不思議なめぐりあわせや因縁を表します。また、「合縁」はその意味から「相縁」、「愛縁」と表記することもあります。
縁もゆかりもない
「ゆかり」は、「縁」の類義語にあたる言葉です。同じく「縁」と書き、物事のかかわりあいやつながりを意味します。血縁関係を意味する点も「縁(えん)」と同様です。
類義語を重ねた「縁もゆかりもない」は、何のかかわりあいもないことを表します。主な使用例は以下の通りです。
縁えんもゆかりもな・い
何のかかわりもない。類義の語を重ねて強調した表現。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・単身赴任当時は、縁もゆかりもないこの土地にこれほど愛着が湧くとは思わなかった
・私には縁もゆかりもない話です
・縁もゆかりもない伝統工芸の世界に飛び込み、はや3年経ちました
縁を切る
親子や夫婦の関係、物事の関係を解消する際に用いられる表現です。この場合の「切る」は、関係を「絶つ」ことを意味します。「切っても切れない関係」、「彼と手を切る」などと同じような使い方です。
血縁関係や人、物事とのつながりを絶つだけに、「縁を切る」は以下のように強い意志をもって使用されることが多いでしょう。
縁えんを切き・る
1 夫婦や親子などの関係をなくす。
2 あることとの関係を解消する。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・何度も裏切りを繰り返す彼とはもう縁を切ろうと思う
・こちらの意見を聞き入れないというなら、もう親子の縁を切るつもりだ
・健康のことを考え、タバコと酒とは縁を切ろうと思う
・どんなことがあったって彼と縁を切るなんて考えられない
縁を結ぶ
夫婦や養子などの縁組をすること、縁を組むことを表す言葉です。「縁結び」のように、男女の縁を結ぶ表現として用いられることもあります。
「縁結び」になると、思う人と縁が結ばれるよう、祈願する行為そのものを指す意味合いが強くなります。「縁結びスポット」「縁結び神社」のように、ご利益のある場所を表すことも多いでしょう。
縁がつながったことを意味する「縁を結ぶ」は、主に以下のように用いられます。
縁えんを結むす・ぶ
1 夫婦や養子などの縁組みをする。縁を組む。
2 仏道に入り、往生するつながりをもつ。仏縁を結ぶ。結縁けちえん。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
・どうかあの人との縁が結ばれますように
・妹が良い相手と縁が結ばれたことを、自分のことのようにうれしく思っています
「縁」の意味を知り日常で正しく使おう
「縁」は、血縁関係や人とのつながり、物事のかかわりあいなど、さまざまな意味合いをもつ言葉です。縁側のように「ふち」を表す際にも用いられます。
「縁を切る」「縁を結ぶ」のように、目に見えないつながりを表すことも特徴です。「えにし」と読み男女の間柄を示すことも多いでしょう。
慣用句やことわざを知れば、会話の幅も広がります。「縁」の意味を知り、日常生活で正しく使っていきましょう。
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