一汁一菜というスタイル
ここでの「一汁一菜(いちじゅういっさい)」とは、単に「粗食(そしょく)」を意味するわけではありません。必要な栄養素をしっかりと摂りながらもおいしく、たった3つのメニューに収める食事について、詳しくみていきます。
一汁一菜とは
一汁一菜の原点は、「ご飯、味噌汁、漬物」という昔ながらの食事にあります。日本人の主食であるご飯を中心として、伝統的な発酵食品を溶いた味噌汁(汁)には、身近な野菜や豆の加工品をたくさん入れることがポイント。菜とは、保存のために塩をつけた野菜、つまり発酵した漬物、もしくは、いつもある作り置きのおかずを添えた食事が、一汁一菜の基本的な形です。
あまり手をかけずとも、最低限の栄養は摂れて、心豊かな食事になるよう意識することが中心にあります。
見逃せないメリット
忙しい暮らしの中で、毎日の食事作りを負担に感じたことがない、という方は少数派ではないでしょうか? そんなときには、具がたっぷりと入った汁物を用意することで、数多くのおかずを用意しなくても栄養を補うことができるでしょう。子育て世帯や、忙しい共働き世帯にとっては、大変助かる食事のスタイルといえます。
手づくりにこだわるあまり、家族でゆっくりと過ごす時間がなくなってしまうのは本末転倒です。忙しいときには一汁一菜の食事を気楽に取り入れてみると、無理のない時間の過ごし方ができるかもしれません。
一汁一菜レシピ
すぐに取り入れられて、栄養が摂れる3品をみていきます。サッとできるものばかりですから、試してみてください。
枝豆とハムの混ぜご飯
ご飯に具材を混ぜて、食材の品目数を多く盛り込む方法は、味の面からもおすすめです。粉チーズを加えて、乳製品もプラス。
材料(2人分)
ロースハム:3枚
粉チーズ:小さじ2
冷凍枝豆(さやつき):70g
温かいご飯:300g
オリーブオイル:小さじ2
粗びき黒こしょう:少々
作り方
【1】ハムは1㎝角にカットします。枝豆は解凍してサヤから取り出してください。
【2】ボウルに温かいご飯、ハム、枝豆、粉チーズを入れて、オリーブオイルを回しかけてさっくりと混ぜてください。
【3】器に盛り付けて、黒こしょうを振りかけます。
野菜たっぷりしょうが味噌汁
具だくさんの汁は、一汁一菜にぜひ取り入れてほしい一品です。肉、野菜、味噌が一度に取り入れられる優秀な汁ものです。
材料(2人分)
大根:100g
しめじ:50g
ごぼう:50g
水菜:50g
豚バラ薄切り肉:80g
ごま油:適量
しょうが:1片
味噌:大さじ2
顆粒和風だし:小さじ2
水:500㏄
作り方
【1】大根は皮をむいて薄い半月切りにします。しめじの石づきをはずし、ほぐしてください。ごぼうの皮をむいてささがきにして、10分ほど水にさらしてください。水菜は3cm、豚バラ肉は一口大にカットします。
【2】鍋にごま油をひいて、豚バラ肉を炒めます。色が変わったら大根とにんじん、水切りしたごぼうを加えて炒めます。
【3】水を加えて一煮立ちさせ、顆粒だしと、すりおろしたしょうがを加えます。アクをとりながら、野菜が柔らかくなるまで中火で煮込みます。
【4】味噌を溶かし、水菜を加えてください。ひと煮立ちさせたあと、火を止めて器に盛り付けます。
ザーサイとナムルのごま和え
茹でた野菜と具材を和えるだけですが、ごまを加えることで栄養価が高まります。
材料(2人分)
小松菜:1/2束(100g)
ザーサイ(瓶詰):10g
ごま油:小さじ2
すりごま:大さじ1
塩:少々
作り方
【1】小松菜の葉部分を1㎝、茎部分を3㎝の長さにカットします。ザーサイは細切れにしてください。
【2】すべての材料をボウルに入れて、和えます。
献立の例
品数が少ない中で、数多くの具材を加えるためには、どんな献立が参考になるでしょうか。ご飯、汁、菜、いずれかのどこかに焦点を当てながら、全体に栄養価が高くなる献立の立て方をみていきます。
ご飯を中心に考える献立
炊き込みご飯や混ぜご飯にしたり、また丼物に仕立てたりすることで、一皿に豊富な具材を盛り込めます。ご飯ものはバリエーションも豊富で、食欲が沸く献立になりますよ。定番の「親子丼」をはじめ、簡単にできる「納豆ご飯」などもおすすめです。
〈例〉
お揚げと湯葉の炊き込みご飯
落とし卵の味噌汁
辛子明太子
汁を中心に考える献立
鍋物にするなら、具材は野菜、魚、肉などたっぷりと加えることができます。ご飯や菜を控えめにする日は、ぜひ鍋を取り入れてください。体も温まりますよ。
〈例〉
白ご飯
つみれ鍋
佃煮
菜は彩りよく取り入れて
3品目に当たる菜をお漬物にしてしまうと、栄養素が足りなくなりがちです。お煮しめ、唐揚げ、魚の煮付けなど、お腹を満たすおかずを用意してください。ポイントは。彩りよく取り入れることです。
〈例〉
白ご飯
豆腐とわかめのお味噌汁
お煮しめ
一汁一菜のデメリットは?
品数が少ない一汁一菜は、栄養が偏ってしまう点には気をつけないといけません。注意するポイントと、改善策を考えます。
注意点
一汁一菜レシピとは、昔ながらの粗食を推奨するものではありません。昭和初期頃の庶民の食卓とは、穀物の主食に、塩辛い漬物と味噌汁を合わせて食べるものでした。これは実のところ、塩分過多に偏り、たんぱく質、脂質が不足しているため、成長期のお子さんに必要な栄養素は欠けている食事内容です。
気をつけてほしいのは
あくまで、忙しいときや食事の用意に負担を感じる方への提案だということを念頭に置き、バランスの取れた栄養の摂取を心がけてください。肉や魚を入れた汁物メニューは、数多くはありません。また、一汁一菜の献立時は、どうしても生野菜や乳製品が不足しがちです。さらに、塩分量が増える傾向もあるので、気をつけてください。余裕がある日には、もう一品をプラスすることでバランスがよくなるでしょう。
最後に
一汁一菜で栄養をしっかりと摂り、食事の用意を楽にするスタイルについて、詳しくみてきました。温かい汁物があると、食事の喜びを感じやすくなります。これに、ご飯や、シンプルなお惣菜を添えれば、工夫次第でバランスがよくなるので、取り入れてみてください。食事の用意への負担感が減り、充実した日々を送ることができるかもしれません。
レシピ/もぱ
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