「左遷」とは、低い地位に落とすこと
「左遷(させん)」と聞くと、不安になる人もいるでしょう。異動や配置転換は会社員につきものですが、どのような理由であっても、環境が変わることに対する不安は尽きないもの。加えて、理由が「左遷」となると、さらに不安は大きくなるでしょう。
「左遷かもしれない」と感じても、実はそうではないケースというのも多数あります。一方で、注意した方がよいパターンもありますので、その判断基準などを知っておきましょう。
「左遷」とは? 意味を確認
さ-せん【左遷】
[名](スル)《昔、中国で、右を尊び左を卑しんだところから》低い地位・官職におとすこと。左降。「閑職に—される」
(出典:小学館 デジタル大辞泉)
今よりも低いポジションや役職、仕事量が少ない部門や部署へ異動になることを意味します。異動の辞令が出る際、「左遷」だと伝えることはほぼありません。そのため、「左遷」かどうかは個人の推測になってしまいます。しかし、個人が望まない配置転換や、明らかに降格とみなされる異動については、「左遷」と呼ぶのがほとんどです。
「左遷」の対義語は?
今よりも地位が上がる、高いポジションや役職につくことを「栄転」といいます。「左遷」の対義語になりますので、覚えておくことをおすすめします。
「左遷」と異なり、異動が「栄転」にあたるかどうかは判断しやすいでしょう。部署内の雰囲気もお祝いムード一色になり、祝福されるというケースもあります。
「左遷」とは言えないケースもある
前述したように、異動が「左遷」であると伝えられることはほとんどありません。そのため、自分は「左遷」だと思っても、実際は違ったというパターンもあります。
経験値を上げるため
人材育成に力を入れる企業は増えています。特に総合職スタッフや、若手社員に対しては、さまざまな部署や部門で経験を積んでほしい、経験のない業務を担当し力をつけてほしいと期待をしていることがほとんどでしょう。
自分が予期しない異動や、望んでいない異動を命じられたとしても、それは経験値を上げ、キャリアアップしてほしいという思いがあるのかもしれません。経験値は、仕事の質を上げる大きな武器ですが、座学では身につかないもの。それを期待しての異動命令という可能性もあります。
社内バランスを考えて
社員の適性を見て、配属先で活躍してくれるかもという期待を込めての異動というケースもあります。たとえば、「部署内のまとめ役がいないから、それを担ってほしい」という理由で、異動命令が出たというようなパターンです。
このような異動は、たいていの場合、社内バランスを考えてのこと。「この社員なら変えてくれる」と期待されての異動かもしれません。
「左遷」と「栄転」は紙一重?
上述したようなパターンもあるため、実のところ「左遷」と「栄転」はその人の捉え方次第という側面があります。ある意味、両者は紙一重。異動の辞令が出た段階で、「左遷です」や「栄転です」のように明確に伝えることはあまりないため、どうしても不安になりますよね。
役職やポジション、業務の良し悪しは、環境や状況、個人の価値観により異なります。「左遷かもしれない」と悩んでしまう場合は、上司などに気持ちを打ち明けてみるのも一つです。
このような異動や配置転換は注意
「左遷」かどうかの判断はつきにくいですが、中には注意した方がよいものも。不当な異動や左遷に該当する可能性があるからです。異動や配置転換において、注意したいことを見ていきましょう。
理由が明かされない
異動に対して何かしらの不安や不満を抱いた場合、一番よいのは、上司などに相談することでしょう。企業側には、従業員に異動理由を説明する必要はないとされていますが、可能な範囲で、不安を軽減できるよう、対応しようとするはずです。
注意したいのは、異動理由を尋ねた際、妙なはぐらかしをする、言葉を濁してうやむやにしようとするというパターン。業務上の理由で、異動理由を伝えることができないというケースももちろんありますが、人事異動の必要性を確認することは大切です。
理由が不当である
異動になる前に部署内の人間関係で揉めた、ハラスメント行為を受けたなどがあった場合は、不当な異動や左遷の可能性も。基本的には、不当な動機や目的で従業員を異動させることは認められていません。もし、パワハラなどがあると感じたら、それを主張し、担当部署と話し合うようにしましょう。
異動により著しい不利益が生じる
異動により、労働条件が著しく低下する、私生活に深刻な影響が出るという場合は、異動そのものが認められないということがあります。この場合は、企業側に対して、異動により大きな不利益が生じることを伝え、再考するように求めましょう。
それでも異動を強行された場合は、弁護士などの専門家に相談を。場合によっては、法的手続きが必要になるケースもあります。
雇用契約書と条件が異なる
求人情報や雇用契約書には「転勤なし」と明記している場合、引っ越しを伴う異動を命じることはできません。このような異動は、従業員の合意が必要となるからです。もし、このようなケースにあたる場合も、専門家に相談するとよいでしょう。
「左遷」かも、と感じたら?
もし、「左遷」かもと思うことがあれば、一人で抱え込むのではなく、上司や周りに相談するようにしましょう。そこで解決することもあるはずです。
それでも解決しない、疑問が残るという場合は、専門部署に相談するのも一つ。またどうしても納得ができない場合は、転職を視野に入れるのもおすすめです。
もし、不当な扱いや、不利益となるような扱いを受けてしまった場合は、弁護士などの専門家に相談を。場合によっては、法的手続きが必要になることもあります。
最後に
人事異動や配置転換は、会社員にとってついてまわるもの。企業規模が大きな会社は特に、異動などを避けるのは難しいというのが通例でした。しかし、時代は変わり、働き方改革が進んでいます。異動を拒否できる、引っ越しを伴う転勤がないポジションを選べるなど、選択肢が増えている会社もありますよね。
異動や配置転換は生活を大きく変えます。不安がある場合は、ぜひ周りの人に相談するようにしてください。
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