営業とはどんな仕事?
人は悩み始めると、視野が狭くなってしまうものです。向いているかどうかを考える前に、まず営業職とはどんな仕事か理解しておきましょう。
1:仕事内容
営業職とは、自社の物やサービスを売ることが仕事ですが、商品・相手先によって、内容はさまざまです。
おおむね、〈アプローチ先を見つける→状況を確認→商品を説明・提案→購入を検討してもらう→契約が成立したら、顧客の元へ届くよう手配→フォロー〉という流れです。顧客だけではなく、顧客の要望に応じて社内の関連部署と連携したり、新商品の必要性を社内に提案したりすることもあります。
法人相手と個人相手・国内営業と国外営業・新規営業と既存顧客への営業、などでも随分異なり、売り上げ目標の厳しさも企業や担当によって千差万別。
共通する大切なポイントは、営業に求められるのは「たくさん話してどんどん売り込む」ではなく「相手の話を聴き、課題や悩みを見つけて解決する」ことです。
2:営業職の辛さ
・ノルマがきつい
辛さとして挙がる筆頭でしょう。歩合制だとそれで収入が決まるので、かなりのストレスになるかもしれません。一方、歩合制は自分の売り上げに応じて収入が増えるのでうれしいという人も。数字に追いかけられずに営業ができたら、という声も聞きますが、数値目標がない営業というのはまずありませんし、営業職でなくても期ごとに予算や目標があるのが通例です。
・顧客に断られる
一生懸命説明して勧めた提案が、冷たく断られると誰しもがっかりするでしょう。しかし、商品を勧めた相手全員が購入するなどあり得ません。次第に慣れていくことも多いものです。
・顧客に無理難題を言われる
営業担当に向かって偉そうに言ったり、無茶を言う人は確かにいます。内容や頻度によっては、心が折れてしまいそうになるかもしれません。しかし、ほかの職種でも、関係している社内外の人から、同様のことを言われることはあります。そして、無茶と思える依頼に上手く対応することにやりがいを感じている営業の方も大勢いるのです。
3:営業職の魅力
・成果が見えやすい
営業は個人の工夫や努力で成果が目に見えやすい仕事です。努力した分が報われたり、感謝されたりすれば、さらなるモチベーションに。
・顧客の反応が直にわかる
商品を顧客がどのように感じているか、生の情報を得られるのは営業ならではの醍醐味。改良や新商品のヒントにもなります。怒られることもあるかもしれませんが、感謝され頼られるのもまた営業担当者です。
・対人スキルが身につく
さまざまなタイプの人と会い、ヒアリングし、説明し、提案するので、柔軟なコミュニケーション力・プレゼンテーション力・相手を観察する力が身につきます。言葉遣いも綺麗になります。これらの力はどこでどんな仕事をするときにも(仕事以外でも! )役に立つ力です。
「営業に女性は向いてない」という思い込み
女性は営業に向いていないのでは、と思うこともあるかもしれませんが、性別で向いている・向いていないは決まりません。なぜそのように考えられてしまうことがあるのでしょうか。
営業に女性が向いていない、と思ってしまう理由は?
・顧客側が女性は頼りないと思い込んでいる
実際に、以前はよくありました。「うちの担当は男性にしてほしい」とはっきり言われたという話も少なくありません。しかし、対応の仕方次第で信頼してもらえるようになりますし、違う視野の話を1度聞いてみようかなと思ってもらえるなど、チャンスは十分にあります。
・強気で売り込むのが難しいと考えている
営業を「売り込む仕事」と捉えている人もいます。しかし、実際求められるのは、「客の悩みや課題を聞き出して、解決する助け」をすることです。そのため、これは勘違いといえるでしょう。そして、強気で売り込めるかどうかは、性差というより個人差の要素の方が大きそうです。
このように、一般的には営業の向き不向きに性差はあまりないと言えます。
「営業に向いてない」と感じるときのよくある5つの理由
自分は営業に向いていない…と感じる理由で多いものを挙げていきます。
1:数字に追われたくない
割り当てられた目標数字が大きなストレスに。達成できないときはもちろん、達成できたとしても今後について不安がつきまとう、ということも。
2:話し上手ではない
上手くコミュニケーションが取れない、内向的、話を思うように運び、うまくまとめるのが苦手、と感じてしまうと、営業という仕事そのものに対して後ろ向きになってしまうことがあります。
3:人に勧めるのが苦手
商品の購入を勧めるのは気が重い、強く勧められない、というケース。顧客の悩みを解決するものや欲しているものを提案できたり、自身が本当によいと思っているものを共有できたりするのはうれしいことですが、「強く勧めている」という意識が強くなってしまっているのかもしれません。
4:断られると落ち込む
自分が否定されたようで辛い、と感じてしまう人も。断られた場合も、理由を尋ねたりほかの提案をしたり、コンタクトをとり続けることが必要なのですが、そのことさえ精神的疲労になっているケースです。
5:向いていないと言われた
相手は何気なく言ったつもりでも、言われた側は重く受け止めてしまうことも。自身でもそう感じていたり、反対にやる気を持って取り組んでいたりするタイミングだと、よりショックを受けてしまうでしょう。
営業職が好きか嫌いかは横に置いておくと、営業に向いていない人の特徴としては
・一方的に話して相手の話を聴かない
・共感できない
・相手の役に立ちたいと思わない
・臨機応変に対応するのが苦手で、自分のペースで決まったことを淡々としたい
・成果がはっきり見えるのが苦痛
などが挙げられるのではないでしょうか。
営業をやめたいと思ったときの対処法
やめたいと思ってもすぐに転職と決めずに、落ち着いて次のようなことを順に考えてみましょう。
1:自分のたなおろし
やめたい理由・やりたいこと・自分のスキル、を書き出してみましょう。頭の中で考えても考えがまとまりにくいので、紙に書き出すのがおすすめです。その上で2以降へ進みましょう。
3以降を選択する場合は、適性診断などを受けて自分の持ち味を客観的に知ることも有効です。
2:上司に相談
職場内で解決の可能性がある、人間関係や業務の効率化、担当替えなどであれば、思い切って上司に相談をするのも一案です。
3:異動
いきなり転職を考えずに、社内で違う仕事や違うタイプの営業ができるところへ異動願いを出す、という方法も考えてみましょう。
4:扱う商品を変える
転職する場合も、今まで培ってきた営業職のスキルを活かすことも考えてみましょう。営業は扱う商品が違うと随分仕事内容が変わります。やめたい理由を解決するようなタイプの営業ができる商品や業界はないか、今一度考えてみてください。
5:違う職種へ転職
やはり営業職はいやで、社内に異動先もなければ、違う職種への転職を考えてみましょう。
最後に
向き不向きを考えるとき、我慢強い人は、これは甘え? と自問自答するかもしれません。思い込みや勘違いで営業職を避けるのはもったいないですが、我慢のしすぎで過度な精神的ストレスなどにはならないよう、心身の健康面にも目を向けて考えてみましょう。
ひとりで悩まずに、職場の信頼できる人やキャリアコンサルタントなど専門家に話を聞いてもらうのも一案です。
監修
米山万由美(よねやま・まゆみ)
キャリアコンサルタント
アンガーマネジメントファシリテーター(R)
組織の1on1面談や人財活用コンサルタント、研修講師として活動。楽しくはたらき楽しく暮らすを応援。趣味はチェロ演奏。
ライター所属:京都メディアライン
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