ビジネスシーンにおいて「あたりまえ」と言いたいとき、ありますよね。「あたりまえ」は使い勝手のいい言葉ですが、ときには押し付けがましく感じられることもあるでしょう。では、どう言い換えたらいいのでしょうか?
そこで、本記事では、日常業務に役立つ「あたりまえ」の言い換え表現とシチュエーション別の使い方を紹介していきます。
「あたりまえ」の意味と注意点
まずは「あたりまえ」の意味をしっかり確認し、ビジネスで使用する際の注意点を整理しましょう。
「あたりまえ」の意味
「あたりまえ」の意味を辞書で確認しましょう。
あたり‐まえ〔‐まへ〕【当(た)り前】
[名・形動]《「当然(とうぜん)」の当て字「当前」を訓読みにして生まれた語》
1 そうあるべきこと。そうすべきこと。また、そのさま。「怒って―だ」
2 普通のこと。ありふれていること。また、そのさま。並み。ありきたり。「ごく―の人間」「―の出来」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「あたりまえ」には、「そうあるべき」「普通のこと」という意味を持つことがわかりました。
「あたりまえ」の語源には諸説ありますが、一説には「当然」の当て字であった「当前」を訓読みして生まれたという説があります。この背景が示すように、「あたりまえ」という言葉は、社会的な規範や常識に強く結びついているといえるでしょう。
「あたりまえ」を使用する際のリスクと注意点
「あたりまえ」は、大きく2つの意味を持つことがわかりました。
たとえば、「怒ってあたりまえだ!」という場合は、「そうあるべき」という価値判断が含まれているでしょう。一方で、「ごくあたりまえの人間」という表現では、「特別ではない」というニュアンスが強調されます。
つまり、「あたりまえ」という言葉は、使用する場面や文脈によってニュアンスが変わるということです。管理職として、「あたりまえ」を用いる際には相手の価値観や置かれている状況を考慮し、柔軟なコミュニケーションを心掛けることが重要でしょう。
ビジネスシーンで使える「あたりまえ」の言い換え表現
「あたりまえ」の代わりとなる表現を、使用例やニュアンスとともに解説します。
当然
「当然」は、「あたりまえ」の語源でもありますから、代替できる表現だといえるでしょう。ただし、感情を込めていうと断定的に聞こえるため、「当然」と発言するときには控えめなトーンを心掛けることがポイントでしょう。
例:「この結果は、当然のものとして認識しています」
常識的に考えて
「常識的に考えて」という表現は、相手の理解を促しつつ、自発的な気付きも期待できる表現です。管理職として「共感」を引き出す場面で発言する上で効果的です。
例:「常識的に考えて、これは優先度が高い事案です」
言うまでもない
「言うまでもない」は、「言う必要がないほど、分かりきったことだ」という意味があります。チーム全体の共通認識を前提に話を進める際に有効でしょう。会議などで議論の焦点を明確にするときなどに使えます。
例:「ここが最も重要なポイントだということは、言うまでもない」
基本的なことですが
「基本的なことですが」は、特に注意を促したいときに、相手を傷つけずに配慮を示すことができます。
例:「基本的なことですが、納期の確認をお願いできますか?」
無論
「無論」とは、論じる必要がないほど、はっきりしている際に使われる言葉です。正式な場や厳格なトーンが求められる場面に適しているでしょう。
例:「無論、これは全員で達成すべき目標です」
具体的なビジネスシーンでの「あたりまえ」の言い換え活用例
言い換え表現を適切に使い分けることは、管理職にとって重要なスキルです。以下は、シチュエーション別に「あたりまえ」の言い換え例を挙げながら、意図と効果を解説します。
「これは、あたりまえのことです」→(言い換え例)「これは、常識的に考えて大切なことです」
「あたりまえ」という言葉を使うと、聞き手に「自分の考えが否定された」と感じさせたり、「押し付けがましい」という印象を与えるおそれがあります。特に、多様な価値観が共存する職場では、「あたりまえ」の基準が個人によって異なることを理解しておく必要があるでしょう。
そのため、表現を工夫し、共通の土台を築くよう心がけることが大切です。この例文で言い換えた、「常識的に考えて」という言葉は、相手に合理性を感じさせるだけでなく、冷静で客観的な議論を促進するでしょう。
たとえば、会議の場で「常識的に考えて大切です」と述べれば、自分の意見が独断的なものではなく、共通の理解に基づいたものであることを示せます。管理職としては、意見を述べる際にこのフレーズを活用することで、議論の方向性を整理し、建設的な雰囲気を作り出すことが求められます。
「あたりまえのことですが、ご理解ください」→(言い換え例)「基本的なこととして、ご理解ください」
「あたりまえ」という言葉には「そうあるべき」という意味があるため、言われた方は「配慮がない」と感じることがあります。一方、「基本的なこととして」というフレーズは、話の前提条件を整理するためのものなので、感情を刺激することはないでしょう。たとえば、プレゼンテーションで「基本的な事項としてご理解ください」と述べれば、相手は情報をフラットに受け止め、話の本題に意識を向けることができるでしょう。
このフレーズを使うことで、聞き手との温度差を埋め、伝えたい内容をより効果的に伝達することが可能になります。
「あたりまえのことですが、最終確認をお願いします」→(言い換え例)「言うまでもないことではございますが、最終確認をお願いします」
「あたりまえ」は、相手に有無を言わせないかのような強い意味を持つ言葉であるため、相手が防御反応を引き起こすことがあります。
「言うまでもない」という前置きを使うと、相手に丁寧で配慮のある印象を与えながら、重要事項を自然に強調できます。
たとえば、プロジェクトの進捗確認や期日の周知において、「言うまでもないことではございますが、月内に納品をお願いいたします」と述べることで、配慮しつつも行動を促すことができるでしょう。管理職としては、特にメールのやり取りにおいて、相手が気持ちよく動ける表現を意識することが大切です。
最後に
管理職としての役割は、「相手がどう感じるか」を常に意識しながら、コミュニケーションの質を高めることです。言葉は道具であり、選び方次第でチームの雰囲気や成果にも影響を与えるでしょう。だからこそ、難しいものですね。本記事が一つの参考になれば幸いです。
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