ご一報ください
「ご一報ください」の「ご一報」は、簡単に知らせる・耳に入れるという意味の「一報」に「ご(御)」をつけた丁寧語です。このため、「とりあえず知らせてください」という意味が含まれ、取り急ぎ連絡するというニュアンスが強い言い回し です。
詳しい内容を教えてほしいというよりは、なんでもいいからとりあえず連絡が欲しいときなどに使用します。緊急を要するシーンにも使える表現だといえるでしょう。
例文
・大変恐縮ですが、至急担当者までご一報ください。 ・大雪の影響が心配です。無事でしたらご一報ください。
お教えください
「お知らせください」は「お教えください」と言い換えられますが、両者のニュアンスは少し違います。
「お知らせください」には「連絡が欲しい」というニュアンスが含まれます。一方「お教えください」は相手に何かを「教えてほしい」というニュアンスが強く、「連絡が欲しい」という意味合いは含みません 。
また、ビジネスにおいては、「お教えください」よりも堅い言い回しである「ご教示ください」を使用するケースが多い です。「お教えください」自体に命令のニュアンスがあるため、相手が強制力を感じてしまう可能性もあります。
「お教えください」は丁寧な表現とされており、決して間違った言葉ではありません。しかし、敬語表現ではあるものの、ビジネスでは使われない場合が多い ことは念頭に置いておきましょう。
例文
・〇〇の件について、詳細をお教えください ・お申し込みに必要ですので、住所や電話番号をお教えください。
ご教示ください
「ご教示ください」は「教えてください」をより丁寧に表現した言葉です。そのため「お知らせください」の丁寧表現としても使用できます。
ただし、「お知らせください」よりも〝詳しい内容や状況に対して教えを請う〟意味合いが強いので、ビジネスでは部下や後輩に使用する機会はほとんどなく、先輩や上司に対して使用する場合が多い です。
なお、「ご教示ください」をより丁寧に伝えるには「ご教示のほどよろしくお願いいたします」「ご教示くださいますようお願い申し上げます」「ご教示いただけますか?」 のような使用方法があります。
また、もっと専門的な知識を教えてほしい場合には「ご教授願います」のように「ご教授」を使用するのが一般的です。「ご教示」と「ご教授」は似た表現ですが、使えるシーンが違うので誤用には注意 しましょう。
例文
・会議の資料に目を通しましたが、よくわかりませんでした。資料にある◯◯についてご教示ください。 ・営業は不慣れなのでノウハウをご教示ください。
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【Domani編集部の体験談】ビジネスシーンでの適切な使い方
実際のビジネスシーンで「お知らせください」を使用する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。Domaniの編集者たちの「お知らせください」にまつわる成功・失敗談を踏まえつつ、使用法を見ていきましょう。
【episode1】教えてもらいたい具体的な内容を併記するとなお良し
Domani編集部 T氏(35)
先日、部下がお客様へのメールで「進捗があればお知らせください」とだけ書いていました。私は「〇〇さん、この場合は『〇日までにご連絡いただけない場合は、一度状況をu003cstrongu003eお知らせくださいu003c/strongu003e』のように、いつ、何を、どうしてほしいのか具体的に伝えたほうが、相手も動きやすいよ」とアドバイスしました。u003cstrongu003e丁寧な言葉でも、具体的な指示がなければ伝わらないことを、部下にも理解してほしかったu003c/strongu003eのです。
【episode2】相手によっては上から目線に捉えられることもある
Domani編集部 T氏(32)
新卒の頃、どんな場面でも「お知らせください」を使えば丁寧だと思い込んでいました。たとえば、社内の先輩に資料の修正をお願いした後も「修正が終わりましたらお知らせください」と伝えていたんです。ある日、先輩から「〇〇さん、社内では『教えてください』や『ご連絡ください』で十分だよ。u003cstrongu003e『お知らせください』は少し堅苦しいし、相手によっては上から目線に聞こえることもあるu003c/strongu003eから気をつけてね」と優しく指摘されました。言葉の使い分けの重要性を学んだ最初の経験です。
「お知らせください」の英語表現
「お知らせください」を英語で表現するなら「Please let me know 」が適しています。また場合によっては「Please tell me 」も使用できるでしょう。しかし、この2つの表現には明確な違いがあるので、使い分けが必要です。
(c)Adobe Stock
ここでは「お知らせください」の英語表現である「Please let me know」「Please tell me」について、詳しくご紹介します。
丁寧な表現をするなら「Please let me know」
「お知らせください」という丁寧な表現を英語で再現するなら、「Please let me know 」がふさわしいです。「よろしければ」というニュアンスが含まれるので、日本語の「お知らせください」にぴったりです。
また、組織に知らせて欲しい場合には、「Please let us know」と言い換えることも可能です。より丁寧にするならば、「Can you please let me know?」のように疑問形にしても良いでしょう。
なお、連絡手段を指定したい場合には「by telephone 」「by mail 」のように「by〜 」を付け加えて表現することも可能です。
例文
・Please let me know your progress. (私に進捗状況をお知らせください) ・Please let us know if you have any other queries. (他に何か質問があったら、私たちに知らせてください)
積極的なニュアンスを伝えたいなら「Please tell me」
「Please tell me 」 は「Please let me know」よりも積極的に「教えてほしい」ときに使用されます。
「Please let me know」が「都合の良いときに教えてね」というニュアンスであるなら、「Please tell me」は「いますぐ教えてね」という催促や相手から答えを聞き出そうとする意図を含む表現です。
「Please tell me」には、「Please let me know」のように「よろしければ」というニュアンスは含まれていません。ビジネスでの依頼や質問をするときに「Please tell me」を使うと、催促や強制している印象を与えるので注意しましょう。
なお、「Please+動詞」だけでは、命令形のため少々不躾な表現です。「Could you tell me〜?」「Would you tell me〜?」を使うと、「教えていただけませんか?」「お知らせいただけませんか?」という柔らかで丁寧な表現になります。
例文
・Please tell me some. (いくつか教えてください) ・Could you tell me some. (いくつか教えていただけませんか?) ・Please tell me the details. (詳細を教えてください) ・Would you tell me the details. (詳細を教えていただけませんか?)
「お知らせください」に関するよくある質問
「お知らせください」はビジネスシーンでよく使われるフレーズですが、いくつか疑問に感じる点もありますよね。ここでは、その「お知らせください」にまつわる「よくある質問」について、手短に解説します。
Q. 「お知らせください」は目上の人に失礼ですか?
いいえ、「お知らせください 」は目上の人に対して使っても失礼にはあたりません 。これは「知らせる」の尊敬語である「お知らせになる」の命令形「お知らせになってください」を、より丁寧にした「お〜ください」の形だからです。相手に敬意を払いながら情報提供を依頼する、丁寧な表現としてビジネスシーンでも問題なく使えます。
Q. 「お知らせください」と「ご連絡ください」の違いは?
「お知らせください」 は、情報の内容を伝えること全般 を依頼する際に使います。対して、「ご連絡ください」 は、連絡という行為自体 を依頼する際に使います。どちらも「知らせてほしい」という意図は同じですが、「ご連絡ください」は電話やメール、対面など連絡手段を問わず使える点が特徴です。
Q. 「知らせる」の敬語表現は?
「知らせる」の敬語表現には、相手の行為を高める尊敬語 として「お知らせになる 」や「お伝えになる 」があります。例えば、「社長がお客様にお知らせになりました」のように使います。一方、自分が相手に知らせる際にへりくだる謙譲語 としては、「お伝えする 」「ご連絡する 」「ご報告する 」などがあります。「〇〇の件、私からお伝えいたします」といった形です。
Q. 「ご一報ください」の言い換え表現は?
「ご一報ください 」は「一度連絡をください」という意味で、迅速な連絡を促す際に使われます。これを言い換える場合は、「ご連絡ください 」が最も一般的です。「お知らせください 」も情報伝達の依頼として広く使えます。
より丁寧に依頼するなら「ご教示ください 」(具体的な内容を教えてほしい場合)や、「ご一報いただけますでしょうか 」(依頼を柔らかくする)、「お手数ですが、ご一報いただけますと幸いです 」(相手への配慮を強調する)といった表現が適切です。
丁寧な応対をするときは「お知らせください」を使おう
「お知らせください 」は「連絡する」「教える」両方の意味を含む丁寧な表現で、主に文末で使われる
目上の人にも使えるが、命令形のため「〜くださいますよう」など、依頼形にするとより丁寧 である
「ご連絡ください」や「ご教示ください」など類語との使い分けで、状況に応じた適切な依頼が可能
「お知らせください」は、目上の人にも使える丁寧な表現です。丁寧な応対が求められる場面では、「連絡ください」「教えてください」ではなく、「お知らせください」を使いましょう。
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ただし、「お知らせください」は丁寧な表現とはいえ命令形なので、人によっては上から目線だと不快に思われる場合がありますので、使用には注意が必要です。誤解を避けるには「お知らせくださいますよう」「お知らせ願います」のように、依頼形にすると良いでしょう。
「お知らせください」の類語も、ニュアンスや使用するシーンに合わせて、適切な表現を使うように心がけてください。そのためにも、正しい意味や用法をきちんと把握しておきましょう。
「お知らせください」や類語を正しく使用して、円滑なコミュニケーションに役立ててくださいね。
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Domani編集部
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