「慇懃無礼」の意味は、言動が丁寧すぎてかえって失礼な様子です。
「お為ごかし」の類義語
「お為ごかし」の類語は「上手ごかし(じょうずごかし)」です。または「きれいごと」や「おべっか」も「お為ごかし」の類語として使えます。
「上手ごかし」
「上手ごかし」は、相手をおだてる、持ち上げる、あるいは少し騙すような言葉や態度で、自分の都合の良いように誘導したり、何かをさせたりすることを指す言葉です。多くの場合、表面上は相手を褒めているように見えても、裏には自分の利益や目的があるというニュアンスを含みます。
【例文】
・彼の言葉は、どうも上手ごかしに聞こえる
・彼は上手ごかしに振る舞って、私の協力を取り付けようとした
・その政治家は、国民を上手ごかしに丸め込もうとしている
「きれいごと」
「きれいごと」という言葉は、私たちの日常生活や社会の中で頻繁に耳にする表現です。一見すると「きれいなこと」「美しいこと」といったポジティブな響きを持つように思えますが…実は現実離れした理想論や建前論、口先だけで実行が伴わない言動に対して、批判的、あるいは冷めたニュアンスを込めて使われることが多い言葉です。
【例文】
・そんなきれいごとばかり言っていても、何も解決しない
・きれいごとを言うのは簡単だが、実行するのは難しい
「おべっか」
「おべっか」は、相手に取り入るために言うお世辞や、心にもない褒め言葉、媚びへつらいの言葉や態度を指します。多くの場合、その言動には下心や打算が込められており、聞き手は〝本心からのものではない〟と薄々感じることが多いです。
【例文】
・彼のおべっかにはうんざりする
・彼は上司におべっかを使うのが得意だ
似ている「慇懃無礼」との違い
「お為ごかし」に似ている表現として、「慇懃無礼(いんぎんぶれい)」が挙げられます。それぞれニュアンスは少し異なりますが、意味が似ていることから混同して使われることが多いといえます。
「お為ごかし」の意味を正しく理解したら、あわせて「慇懃無礼」の意味もきちんと覚えておきましょう。ここでは「慇懃無礼」の意味や使い方、関連する言葉などを解説します。

「慇懃無礼」の意味
「慇懃無礼」は態度や言動の丁寧さが度を越していて、かえって失礼な様子を表します。または表面上は礼儀正しく見せかけて、実際は横柄で無礼であるという意味もあります。
「慇懃」は「丁寧であること」「礼儀正しいこと」を表す言葉で、悪いニュアンスは含みません。失礼な様子を表す「無礼」を後ろにつけることで、悪い意味をもつ言葉に変化します。
「慇懃無礼」が使える対象は、故意的なものと無意識的なものの両方です。つまり、わざと過剰に丁寧な振る舞いをする人にも、純粋に丁寧すぎる行動をとる人にも使えます。
「慇懃無礼」であるかどうかの基準は、相手の気持ちにかかわらず、受け手が失礼だと感じたかどうかだと覚えておきましょう。

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【例文付き】「慇懃無礼」の使い方
「慇懃無礼」は人や態度などを対象とする言葉です。たとえば「慇懃無礼な人」は、態度や言動が丁寧すぎるあまり、かえって失礼になってしまっている人を指します。
例文
・彼女の丁寧さは度を越していて【慇懃無礼】な印象を受ける。
・何度も顔を合わせているのに「〇〇様、本日も何卒よろしくお願い申し上げます」と他人行儀に言われると、さすがに【慇懃無礼】な人だと感じてしまう。
「慇懃無礼」は、態度や言動そのものを表すこともできます。「慇懃無礼な態度」と表現すると、特に大げさな振る舞いであることが伝わるのです。
例文
・終始丁寧なのは結構ですが、人によっては【慇懃無礼な態度】と映るでしょう。
・【慇懃無礼な態度】をとってしまったのであれば、お詫びしなければいけません。
過剰に丁寧な言葉づかいで書かれたメールは「慇懃無礼なメール」と表現できるでしょう。特にビジネスシーンでは、目上の人に対してメールを送る機会も頻繁にあるため、無意識に慇懃無礼な文章になっていないか注意してください。
「慇懃無礼」の類語と対義語
「慇懃無礼」の類語
「慇懃無礼」には「お為ごかし」以外にもいくつかの類語があり、「小手先」や「慇懃尾籠(いんぎんびろう)」などが挙げられます。「小手先」は言動と内心が異なり、その場しのぎで、将来を見通した深い考えのないことを意味する言葉です。
「慇懃尾籠」は、丁寧すぎることでかえって不快に思われてしまうことを表します。そのほか、表面上だけいい顔をするという意味の類語として、「上辺(うわべ)」や「見掛け倒し」も挙げられるでしょう。
類語
・小手先
・慇懃尾籠
「慇懃無礼」の対義語
「慇懃無礼」にはハッキリとした対義語はないものの、反対の意味をもつ言葉はあります。以下の3つは心の優しさや思いやりを表す言葉で、失礼な様子を意味する「慇懃無礼」とは正反対といえるでしょう。
類語
・情け深い
・慈悲深い
・人情に厚い
「お為ごかし」と「慇懃無礼」の使い分けの基準
「お為ごかし」な行動の裏には、自分の利益を優先したい気持ちがあります。自分にとって都合のいい展開に導くための手段として、親切な行動をとるということです。
「慇懃無礼」には相手を見下すというニュアンスが含まれており、利益を追求する意図は含まれていません。どちらも丁寧すぎる行動であるのは同じですが、その裏に隠れた感情に違いがあると覚えておきましょう。

「お為ごかし」も「慇懃無礼」も、親切に見せかけている点は共通しています。両者を使い分ける基準は、親切に見せかける際、どのような感情であるかです。
「お為ごかし」に関するよくある質問
「お為ごかし」という言葉に関して、ビジネスシーンでよくある質問とその回答をご紹介します。
Q. 「お為ごかし」と「恩着せがましい」はどう違う?
「お為ごかし」 とは、表面上は相手のためを装いながら、実際には自分の利益や都合を優先する行為や態度を指します。つまり、相手をだます意図や利用しようとする気持ちが根底にあるのです。たとえば、「あなたのためを思って言っている」と言いながら、実は自分の都合の良いように相手を誘導することなどがこれにあたります。
一方「恩着せがましい」 は、相手に施した恩をことさらに強調し、見返りや感謝を強要するような態度を指します。相手に〝借りができた〟という意識を植え付け、精神的に拘束したり、自分の思い通りに動かそうとするニュアンスが含まれます。恩を売って、相手に罪悪感や義務感を抱かせるのが特徴です。
Q. 「お為ごかしな態度」にどう対応すればいいですか?
「お為ごかしな態度」をとる人への対応として、まずその言動の裏にある真の意図を見抜くことが重要です。表面的な言葉に惑わされず、その人が本当に何を求めているのか、自分にどのような影響があるのかを冷静に判断しましょう。安易に相手の提案に乗ったり、要求を飲んだりすることは避け、一度立ち止まって考える時間を持つことが大切です。
可能であれば、相手の言葉の矛盾点を指摘したり、具体的な根拠を求めたりするのも有効。そのほか、感情的にならず毅然とした態度で接し、相手に自分のペースを乱されないように心がけてください。自分の意見をはっきりと伝え、必要であれば距離を置いてみましょう。
「お為ごかし」の正しい意味を知っておこう
- 「お為ごかし」 とは、表面上親切に見せかけながら、実は自分の利益を優先する行動や態度を表す言葉
- 「慇懃無礼」と似ているが「お為ごかし」には自己の利益追求、「慇懃無礼」には相手を見下す意図が根底にある
- 「お為ごかし」な態度をとられたら、相手の真意を見極め、感情的にならず毅然とした対応をとることが重要
「お為ごかし」とは、表面上は親切なふりをしながら自分の利益を優先すること。言葉の由来は相手を敬うことを意味する「御為」と、口実を作って私益を図る「ごかし」です。
「慇懃無礼」は「お為ごかし」に似た意味をもつ言葉で、どちらも親切に見せかける点は共通しています。ただし、利益を求める「お為ごかし」に対して、「慇懃無礼」は相手を見下すという意味合いがあります。
「慇懃無礼」との違いも含め、「お為ごかし」の正しい意味を理解しておきましょう。

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Domani編集部
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