「旅は道連れ、世は情け」とは?
「旅は道連れ、世は情け」とは、人と人とのつながりや助け合いの大切さを訴えることわざです。この言葉の意味や由来、また似たような言葉との違い、反対の意味をもつ言葉、そして誤用されやすい「旅は道連れ世は情け容赦なし」について解説します。本章を通じて、人とのつながりや思いやりの大切さを、再確認してみてください。
■「旅は道連れ、世は情け」の意味
「旅は道連れ、世は情け」という言葉には、旅は同行者がいることで安心できることから、世の中を渡っていくためには、人々が協力し合い助け合うことが大切だといった意味で使われます。優しさを持って共に生きることが必要であるといった「教訓」が込められている言葉です。「旅は道連れ、世は情け」について、辞書では以下のように説明がされています。
旅では道連れのあることが心強く、同じように世を渡るには互いに情けをかけることが大切である。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
とくに現代社会では、人々が孤立しやすくなっており、人との繋がりが薄れているため「旅は道連れ、世は情け」の意味を肝に銘じておきたい言葉です。
■「旅は道連れ、世は情け」の由来
「旅は道連れ、世は情け」の起源は、江戸時代に書かれた「東海道名所記」という書物にあります。当時の旅行は情報が不足しており、公共交通機関も存在しないため、一人旅は非常に困難であったようです。
そのため同行者がいることは、大きな助けと考えられていました。こうした背景から「旅は道連れ世は情け」ということわざが生まれたのです。厳しい旅を共に体験することで、お互いに支え合い、協力することが大切であることを教えています。
■「袖振り合うも多生の縁」との違いは?
「袖振り合うも多生(たしょう)の縁」ということわざは「たまたま道ですれ違った人々との些細な出会いや関わりも、実は前世からの因縁である」という仏教の輪廻転生といった教えに基づく言葉です。
このことわざは「他生の縁」とも書きます。他生でもまったくの誤りというわけではありませんが、やや俗語表現と考えられています。そのため正しくは「多生」という漢字を使うべきでしょう。また「多少の縁」といった表現は、完全に誤りであるため注意してください。
■誤りがちな「旅は道連れ世は情け容赦なし」
「旅は道連れ世は情け容赦なし」という言葉を聞いたことがありますか?これは「旅は道連れ世は情け」という言葉に「容赦なし」という言葉を加えたものです。似た言葉であることから、関連したことわざと認識している方もいるかもしれません。しかしこれは誤用です。
「情けをかけず、人間性に欠ける非人道的な行動や振る舞い」という意味で使われる「旅は道連れ世は情け容赦なし」ですが、これは造語とされています。ことわざを基にした皮肉や揶揄の意味合いがあるため、あまり使用しない方が良いかもしれません。
「旅は道連れ、世は情け」の類義語・対義語
「旅は道連れ、世は情け」には類義語や、対義語が存在します。本章では「旅は情け人は心」「孤軍奮闘」「孤立無援」など、関連することわざや言葉についてご紹介します。
それぞれの言葉には、人と人とのつながりや助け合いの大切さ、あるいは孤独や助けがない状況にあることの苦しさや厳しさを訴える意味が込められています。
■旅は情け人は心
「旅は情け人は心(たびはなさけひとはこころ)」という言葉は「旅をしている時には人の情けが何よりもありがたく感じられるという意味です。
「旅は心世は情け」などのことわざもあり、どちらも同じ意味で使用できます。旅をするときには、共に旅する人たちの思いやりや協力、そして自分自身の心の持ち方が重要であることを教えてくれるでしょう。
■孤軍奮闘
「孤軍奮闘(こぐんふんとう)」とは「誰にも支援されず、ひとりで努力すること」または「孤立した少数軍勢でよく戦うこと」という意味を持つことわざです。
「孤軍」とは「孤立した少数の軍勢」という意味であり、「旅は道連れ世は情け」は「人の情けの重要性」と「ひとりではなく誰かと一緒に協力することの大切さ」を教えてくれることわざ。「孤立して誰の助けもない」という意味を持つ言葉が、その対義語と考えられるでしょう。
■孤立無援
「孤立無援(こりつむえん)」とは「仲間や味方がいない状態であり、ひとりぼっちで頼るものや助けが来ないこと」を意味することわざです。
この言葉は孤独や孤立状態において、どれだけ苦しく辛いかを表現し、仲間との協力や助け合いの大切さを訴えかけるために用いられます。つまり「旅は道連れ、世は情け」の対義語です。
「旅は道連れ、世は情け」の使い方
「旅は道連れ、世は情け」は他人との関わりには人情を持ち、お互い助け合うことが大切だということを伝える言葉。どのような場面でも使える普遍的なものとされています。
本章ではこの言葉の使い方について考えていきます。 例文や会話例などをご紹介するので、誤用してしまうことのないように、本章でよく確認しておきましょう。
■例文
「旅は道連れ、世は情け」の例文は、以下を参考にしてください。
・旅行には、家族や友人と一緒に行くことが楽しいですよね。「旅は道連れ、世は情け」ですから、皆で助け合いながら満喫しましょう。
・会社の同僚とのビジネス旅行は、人脈を広げる良い機会。「旅は道連れ、世は情け」のとおり、助け合って成功を目指しましょう
・海外旅行では、言葉の壁はあるものの「旅は道連れ、世は情け」のように、助け合うことで存分に楽しめる
■会話例
日常会話のなかで「旅は道連れ、世は情け」を使う場合は、以下の例を参考にしてください。
〈例1〉
A「旅行に行くんだ。一緒に行かないか?」
B「いいよ。やっぱり誰かと行く方が心強いもんね。」
A「そうだね。旅は道連れ、世は情けって言うしね。」
〈例2〉
A「最近調子が悪いんだよね。」
B「じゃあ一緒に病院に行こうか?」
A「それはありがたい。旅は道連れ、世は情けってことか。」
B「そうだよ。心強いでしょう?」
「旅は道連れ、世は情け」を正しく使おう!
「旅は道連れ、世は情け」ということわざは、人と人との関わりにおいて、情けを持ち助け合うことが大切だと伝えています。このことわざは、現代社会においても人との繋がりや助け合いが大切であることを改めて考えさせられるでしょう。
「旅は道連れ、世は情け」は現代を生きる私たちこそ、しっかりと心にとどめておきたい言葉ですね。
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