金時にんじんってどんな野菜?
「にんじん」といえば、カレーやシチューに入れるオレンジ色の西洋にんじんを思い浮かべることが多いのでは? しかし日本には西洋にんじん以外にも、鮮やかな赤色をした金時にんじんがあります。
金時にんじんは、お正月に食べる紅白なますや煮しめに使うことで知っている方も多いのではないでしょうか。そんな特別な日の料理に彩りを添える金時にんじんについて、京都・錦の老舗「かね松」の主人・上田欣司さんにお話をうかがいました。
鮮やかな赤色が印象的な金時にんじんは、東洋品種の1つ。江戸時代に中国から伝わったとされています。金時にんじんは、西洋にんじんよりほっそりとした形をしていて、芯まで赤いのが特徴。肉質が柔らかく、味は甘味が強くクセがありません。
金時にんじんは、京都や大阪でも栽培されていますが、現在の主な生産地は香川県。旬の時期は、12~1月ごろです。金時にんじんは栽培方法が難しいため生産量は多くなく、お正月準備などで需要が高まるこの時期でしか、見かけることがほとんどありません。
金時にんじんの名前の由来は?
なぜ金時にんじんというのかというと、金太郎で知られる、坂田金時(さかたのきんとき)に由来するそうです。金時にんじんの鮮やかな赤色が、金太郎の特徴である赤ら顔を連想させることから、そう呼ばれるようになったといわれています。
関西では馴染みの深い野菜
金時にんじんは、別名「京にんじん」といわれ、関西地方では、お正月料理に使う野菜として有名です。八百屋では迎春用として松・竹・梅や干支、絵馬などの型抜きをして売られることもあるそう。関西では、紅白なますや煮しめといったお節、お雑煮などには金時にんじんが使われます。
金時にんじんと西洋にんじんの違いは?
もともとにんじんは、アフガニスタンが原産だといわれています。日本に伝わったのは江戸時代初めごろ。中国からまず東洋品種が伝わりました。その後、江戸中期から明治にかけて、外国との交流が増えたことから西洋品種が伝わったとされています。
では、普段私たちがよく食べる西洋にんじんと金時にんじんの違いについて見ていきましょう。
見た目
金時にんじんは、細長く30cmほど根があり、先端が尖った形をしていて、中心部まで赤いのが特徴です。一方で西洋にんじんは15~20cmの大きさのものが多く、オレンジ色をしています。
栄養素
西洋にんじんの主な栄養素といえば、カロテン。皮膚の健康を維持したり、免疫機能を高める効果があるとされています。一方で、金時にんじんに多く含まれているのは、リコピンです。リコピンは金時にんじんの赤い色素に含まれる栄養素で、強い抗酸化作用があり、動脈硬化などの生活習慣病を予防したり、紫外線からの皮膚へのダメージを防ぐ効果があります。
金時にんじんには、カロテンが含まれていないわけではありません。西洋にんじんよりは少なくなりなりますが、カロテンを含んでいます。また、金時にんじんの味は甘味が強く、西洋にんじん特有の土っぽさがありません。そのため、にんじんの土っぽさが苦手だという人にも食べやすくおすすめです。
金時にんじんの選び方や保存方法は?
おいしい金時にんじんの選び方や保存方法をチェックしていきましょう。
金時にんじんの選び方
・全体的に濃い赤色のもの
・表面の皮がみずみずしくハリがあるもの
・表面に傷がないもの
・葉の付け根が黒っぽくなっていないもの
金時にんじんの保存方法
金時にんじんは、冬であれば冷暗所での保存も可能ですが、一般的には冷蔵保存か冷凍保存がおすすめです。
冷蔵保存
金時にんじんの葉を落としてから新聞紙で包み、さらにポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存します。新鮮なものであれば冷蔵で1~2週間保存することが可能です。
冷凍保存
金時にんじんは冷凍保存することもできます。冷凍保存する場合は、そのまま冷凍するのではなく、千切りにしたり、使いやす大きさに切ってから、ラップで包んでフリーザーバッグに入れて保存するのがおすすめです。冷凍保存で約4週間日持ちします。
金時にんじんのおいしい食べ方とは?
金時にんじんは、柔らかい肉質にもかかわらず煮崩れしにくいという特徴があり、煮物にも向いています。しかし、甘味が強いので生食もおすすめ。千切りや薄くカットしてサラダにしたり、ピクルスにしてもおいしく食べられます。
また、金時にんじんに含まれるカロテンは油と一緒に摂ることで、その吸収力が高まります。そのため、炒め物にすると栄養価も効果的に摂取することができるでしょう。金時にんじんは京料理やお節などの和食に使われる野菜というイメージがありますが、和洋中どの料理にも合うのです。
金時にんじんを使ったおすすめレシピ
金時にんじんを使ったおすすめレシピ2つを紹介します。
金時にんじんのバター醤油炒め
材料
・金時にんじん… 1本
・サラダ油… 適量
・バター… 10g
・醤油… 小さじ1~2
・ブラックペッパー… 少々
作り方
1. 金時にんじんは皮をむき、千切り、半月切りなど好みの大きさにカット。
2. フライパンにサラダ油をひき、金時にんじんを炒めます。
3. 金時にんじんがしんなりしてきたら、バターと醤油を入れて混ぜます。
4. 最後にブラックペッパーを加えたら完成です。
金時にんじんと大根のピクルス
材料
・金時にんじん… 1本
・大根… 1/3本
<ピクルス液>
・水… 200cc
・酢… 200cc
・白ワイン… 100cc
・砂糖… 大さじ3
・塩… ひとつまみ
・ローリエ… 2枚
・ブラックペッパー(ホール)… 10粒
・クローブ… 5粒
・鷹の爪(輪切り)… 1本分
作り方
1. 金時にんじんと大根は皮をむき、好みの大きさにカット。
2. ピクルス液の材料を鍋に入れ、ひと煮立ちさせ、冷まします。
3. 保存容器に金時にんじん、大根、2のピクルス液を入れます。
4. 冷蔵庫で冷やして1日経てば食べられます。
保存期間は約1か月です。
最後に
金時にんじんは、特別な日の料理に使われることが多いため、普段使い慣れないかもしれません。しかし、甘くクセのない金時にんじんは様々な料理に使うことができます。旬の時期は短いので、もし手に入れたら、お節料理やお雑煮だけでなく、おかずにも使ってみてください。
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