「雪洞」とは?
「雪洞」という漢字を見たことはありますか? なじみがないという方も多いかもしれませんが、きっと1度は耳にしたことがあるはず。本記事は、この「雪洞」がキーワードです。まずは読み方や意味、使い方などを解説していきます。
「雪洞」の意味と読み方
「雪洞」には、いくつかの読み方とあらわすものがあります。ひとつひとつ押さえていきましょう。
1:雪洞(ぼんぼり または せっとう)
いちばんなじみがあるのは、「ぼんぼり」ではないでしょうか? 「紙や絹でできた張りで灯りが灯る部分の周辺を覆ったもの」のことを指します。お雛様のひな壇に飾る灯りとして、現在でも用いられていますね。
上部は開いており、下に向かってすぼまる形が多いです。ぼんぼりは手元や足元を照らす用途や、神仏の前に据え置かれたりしたとされています。「ぼんぼり」と呼ばれることが一般的ですが、「せっとう」と呼ぶこともあります。
2:雪洞(せっとう)
茶道の世界でも「雪洞」というワードが登場します。茶道の世界での「雪洞」の読み方は主に「せっとう」です。「せっとう」とは、竹や木の枠に白い和紙を張り、一部穴をあけ、風炉の上を覆うもののこと。火持ちをよくするために用いられます。
3:雪洞(ぼんぼり)
近世に宮廷で使用された扇に「ぼんぼり」といわれていたものがあったようです。また、別の名称として、「中浮(ちゅううけ)」もあります。
4:雪洞(ぼんぼり)
耳掃除の道具を指すことも。耳の垢を取るもので、柄があり、頭部が羽で飾られています。
5:雪洞(せつどう)
「せつどう」と読む場合も。「せつどう」とは、雪の洞穴のこと。積雪期の登山における露営のためや、雪が多く降る土地では、冬季の貯蔵庫として活用されることがあります。
「雪洞」にはたくさんの読み方や意味があることがわかりました。現在でも使われ、特によく知られているのは、「ぼんぼり」かもしれません。
ここからは、照明の「雪洞(ぼんぼり)」に焦点を当てて見ていきましょう。
「雪洞(ぼんぼり)」と「提灯」「灯篭」の違い
かつての照明でもある雪洞。似たような役割を果たすものとして、提灯や灯篭などが有名です。しかし、現在では日常的に使われることも減り、それぞれの意味について曖昧かもしれません。
そこで、ここでは雪洞と似ている提灯や灯篭について紹介します。
「提灯」とは?
「提灯(ちょうちん)」とは、「周りを照らすために持ち歩いたり、標識として備え付けたりする照明」のこと。当初は、木枠や籠状のものに紙を張るタイプが主流でした。その後、折りたためるように竹ひごを用いて紙を張り、そのなかにろうそくを立てるタイプが一般的になります。
「灯篭」とは?
「灯篭」の読み方は「とうろう」もしくは「とうろ」で、漢字も「灯篭」「灯籠」「灯楼」など種類があります。「灯篭」とは、神仏に備えるともしびを安置するための用具。竹や石、金属などでつくられ、中にろうそくを入れて灯します。ぼんぼりと似ていますが、灯篭は主に屋外用の照明です。
雪洞の祭り「尾道灯りまつり」
あたりをやわらかく照らすぼんぼり。この美しいぼんぼりをたくさん見られる「尾道灯りまつり」を知っていますか?
開催地は広島県尾道市。2023年は、10月7日に約3万個のぼんぼりが一斉に照らされました。美しいぼんぼりと、ぼんぼりにあたたかく照らされる尾道の町を堪能することができます。
尾道市は、平安末期より港町として発展してきました。尾道灯りまつりは、北前船が目印にしていたといわれている「常夜灯」をぼんぼりで再現したお祭りなのだとか。
気になる方は、ぜひInstagramで「#尾道灯りまつり2023」と検索してみてください。絵やメッセージが書かれたぼんぼりやきれいな景色を見ることができます。
最後に
本記事ではさまざまな「雪洞」を見ていきました。照明の「ぼんぼり」、茶道における「せっとう」、扇や耳掃除の道具としての「ぼんぼり」、雪の洞穴である「せつどう」などがありましたね。照明の意味で使う場合は、「雪洞」と漢字で表記するのではなく、ひらがなで「ぼんぼり」と表記するほうが読み手にとってはわかりやすいでしょう。
参考:デジタル大辞泉(小学館)
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