嵐の前の静けさとは?
嵐の前の静けさとは悪いことが起きる予感を表す語句です。もともとは、台風や暴風雨が接近してきた時に、一時的にあたりが静かになる気象現象からの連想です。悪いことが起こる前の静けさを表す言葉として使われるようになりました。
小学館デジタル大辞泉では以下のように説明されています。
【嵐の前の静けさ】
暴風雨が襲来する前に辺りが一時静まり返るところから、変事が起こる前の不気味な静けさをいう。
(引用〈小学館デジタル大辞泉〉より)
さらにくわしく読み方や由来を解説しましょう。
■嵐の前の静けさの意味と読み方
嵐の前の静けさとは、良くないことが起こる予感や予兆を表す表現です。良いことが起こる前の予感の言葉としては使われません。映画やドラマ、小説などでも、ドラマチックに盛り上げたり、緊張感を高めたりするためによく使われる表現といえるでしょう。
嵐の前の静けさの読み方は、そのまま「あらしのまえのしずけさ」です。
■嵐の前の静けさの由来
嵐の前の静けさという言葉の由来は、台風の気象状況によって生まれました。台風が陸地に接近すると、その進行方向の前方に副低気圧が発生し、暴風雨が一時的におさまって、静かになったように感じることがあります。
しかし、その後に激しい雨風に急変することから、悪いことが起こる前触れを表す言葉として、使われるようになったのです。
嵐の前の静けさの例文
嵐の前の静けさという語句は、日常会話の中でも登場する言葉です。また、映画、ドラマ、小説などでドラマチックな展開を作り出す時などにも使われます。
【例文】
・優勝を決めるための大事な一戦が始まる直前に、まるで嵐の前の静けさのように、会場内が一瞬、静まりかえった。
・私の直属の上司であるプロジェクトリーダーは、嵐の前の静けさのように押し黙ったかと思うと、数分後に激しく私を非難し始めた。
・会議が始まって、今回のプロジェクトが失敗したことへの責任の追及へと議題が移った瞬間、嵐の前の静けさのように、誰もが無言になる瞬間があった。
・壮大な歴史映画を観ていたら、敵対する両軍がしばしにらみあう膠着状態となり、嵐の前の静けさのようだった。
嵐の前の静けさの類似表現2つ
嵐の前の静けさと似た表現がいくつかあります。おもな類似表現は以下の2つです。
それぞれの語句の意味をくわしい解説し、例文を紹介します。
1.雲行きが怪しい
雲行きが怪しいとは、ものごとの成り行きや状況が不穏で、悪いことが起こりそうな雰囲気の漂っているさまを表す言葉です。読み方は「くもゆきがあやしい」です。天気が崩れそうな様子と似ていることから、使われるようになりました。
【例文】
・朝から部長の機嫌が悪く、雲行きが怪しいから、職場にいる時には言動には気を付けたほうがいいですよ。
・今回のプロジェクトには、犬猿の仲のあの二人がメンバーに入ったこともあって、なかなか意見がまとまらず、雲行きが怪しいですね。
2.虫が知らせる
虫が知らせるとは、なんとなく予感がするという意味の言葉で、読み方は「むしがしらせる」です。良くないことが起こることを、事前に察知する時に使われることの多い語句といえるでしょう。
【例文】
・虫が知らせるという言葉がありますが、何の気なしに実家に電話をかけたら、誰も電話に出ず、おかしいなと思って家に行くと、母が倒れていました。
・なんとなく気が乗らず、予定していた旅行を直前に中止したら、行く予定だった観光地を台風が直撃したので、虫が知らせたのかもしれません。
「嵐」という漢字を使った慣用句3つ
嵐の前の静けさと同じように、「嵐」という言葉を使った慣用句がいくつかあります。よく使われる慣用句は以下の3つです。
それぞれの言葉の意味を解説し、例文を紹介します。
1.コップの中の嵐
コップの中の嵐とは、大局にはほとんど影響しない、狭い範囲の中で起こった騒ぎを表す言葉で、読み方は「こっぷのなかのあらし」です。大騒ぎするほどではない出来事を、形容する際に使われます。
【例文】
・営業部の部長と課長とのいがみあいは、会社が抱えている問題に比べると、コップの中の嵐のような小さなことです。
・世界各地で戦火が絶えないことを思えば、私と妻とのケンカなど、コップの中の嵐のようなものだ。
2.花に嵐
花に嵐とは、嵐が吹いたことにより、花が散ってしまうことから、良いことには邪魔が入りやすいというたとえの表現で、読み方は「はなにあらし」です。小説などにも登場する語句といえるでしょう。
【例文】
・花に嵐ではないけれど、せっかくきれいに飾り付けしたクリスマスツリーだったのに、飼い猫のタマがメチャクチャにしてしまいました。
・我が子の運動会だったので、気合いを入れてお弁当を作ったのに、風が強くて、グランドの砂がたくさん、お弁当にかかってしまい、花に嵐だなと思いました。
3.四方の嵐
四方の嵐には、おもに2つの意味があります。1つ目は「あたり一面に吹く風」、2つ目は「浮世の風」という意味です。読み方は「よものあらし」です。「しほうのあらし」ではないため、注意してください。
【例文】
・SNSでの彼の何気ない発言は、各方面に四方の嵐を巻き起こす結果となった。
・人とちょっと違っているというだけで、四方の嵐を受けることがたびたびあったと、祖父が語っていたことがあります。
嵐の前の静けさの意味を知って正しい使い方をしよう
嵐の前の静けさとは、変事が起こる前の不気味なまでの静けさを表す言葉です。悪いことが起こる予感や予兆を表す語句といえるでしょう。嵐の前に一瞬、風雨がおさまる気象現象を連想することから使われるようになりました。
映画・ドラマ・小説などでもよく登場し、日常会話でもよく使われる言葉です。ポイントは良くないことの予兆として使われることでしょう。
良いことが起こる前触れの言葉としては使わないので注意が必要です。嵐の前の静けさの意味を知って、正しい使い方をしてください。
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