処世術とは?意味を解説
処世術という言葉の正しい意味をご存じでしょうか。仕事はもちろん、普段の人間関係でも重要になる処世術の意味と使い方をチェックしましょう。
社会生活を営む術の1つ
処世術とは、社会生活を円滑に営んでいくための技術や知恵のことです。身近な人間関係やに限らず、仕事の場面でうまく立ち回るのに役立つコツともいえます。
「処世」とは、「世の中で暮らしていくこと」「世渡り」などを意味する言葉です。ここに方法という意味の「術」がついた処世術は、文字通り生きていくためのやり方を意味しています。
新入社員や転職した人などが、新しい職場で上司や先輩とのコミュニケーションに悩む場面は珍しくありません。処世術を身に付けることは、スムーズな人間関係を築く手助けにもなり得るのです。
しょせい‐じゅつ【処世術】
巧みな世渡りの方法。
引用:小学館 デジタル大辞泉
言葉としての使い方
処世術という言葉はビジネスシーンでも使われており、「彼は処世術に長けている」といった使い方が一般的です。これは、その人の人間関係の築き方や仕事の進め方が優れているという意味合いを持っているといえます。
コミュニケーションで悩んでいる人が、「処世術を身に付けるといいですよ」とアドバイスされることもあるようです。この場合は、相手の立場を理解して適切に対応する能力を磨くことを勧めているのでしょう。
処世術は、状況を読み取って正しく行動するスキルです。相手の振る舞いを高く評価したいときなどは、「彼女の処世術は見事だ」のように使ってみましょう。
処世術の類語もチェック
処世術と似たような意味を持つ言葉も存在します。処世術の言い換えとして使える類義語を見ていきましょう。
渡世術
渡世術は、処世術と同じく、社会で生き抜くための技術を指しています。「渡世」という言葉には世の中を渡り歩くという意味や、生活していくための職業という意味があります。
渡世術と処世術は使う場面や使い方がほぼ変わらないため、言い換え表現として問題なく利用できるでしょう。「自分もあの人のような渡世術を身に付けたい」のように使うことができます。
渡世術を身に付けるには、同僚の性格や上司の好みといった、周囲の状況を冷静に観察する力が重要です。また、状況に応じて自分の態度や言動を変えられる柔軟さも、ビジネスで役立つはずです。
と‐せい【渡世】
[名](スル)
1 この世で生きていくこと。生活すること。世渡り。「渡世の義理」
「盗賊ひとごろしの心配もなくして―するを」〈福沢・学問のすゝめ〉
2 生活していくための職業。なりわい。生業。稼業かぎょう。「物書きを渡世とする」
引用:小学館 デジタル大辞泉
遊泳術
遊泳術は、処世術の類語として使われる表現の一つです。水泳の技術を意味する「遊泳」という言葉を比喩として用いることで、社会という大海を泳いで渡るための術を表現しています。
泳ぐというイメージが示すように、遊泳術はそのときの環境に適応し、柔軟に対応する能力を指している言葉といえます。たとえば、仕事上での急な方針変更や予期せぬトラブルに対して、冷静に対処する力がこれにあたるでしょう。
世の中の流れに乗って泳いでいくためには、職場の雰囲気や同僚の心情といった、周囲の状況を適切に察知する能力が必要になるケースも。処世術の言い換えとしては、「彼は巧みな遊泳術を持っている」のように使えます。
ゆう‐えい〔イウ‐〕【遊泳/×游泳】
[名](スル)
1 泳ぐこと。「―禁止」《季 夏》
2 うまく世間を渡ってゆくこと。世わたり。処世。「政界を―する」
引用:小学館 デジタル大辞泉
立ち回り
立ち回りとは、その場の状況に合わせて適切な行動を取る能力を指しています。処世術の実践的な側面を表す言葉ともいえるでしょう。
たとえば職場での会議で自分の意見を主張しつつ、上司の反応をうかがいながら発言するのも立ち回りに含まれます。ビジネスでは器用な立ち回りが求められる場面が多いため、処世術と同様によく使われる言葉です。
「会議での立ち回りを考える」などの名詞的な用法もできますが、「状況を見ながらうまく立ち回る」といった動詞的な用法もあります。場の空気を読み取り、相手の気持ちを考えながら振る舞うのが立ち回りのコツです。
たち‐まわり〔‐まはり〕【立(ち)回り】
1 あちこち歩き回ること。また、ある所に立ち寄ること。「立ち回り先」
2 振る舞い。特に、自分が有利になるような行動。「如才ない立ち回り」
3 演劇・映画などで、切り合いや殴り合いなどの場面。殺陣たて。
4 つかみ合ったり、殴り合ったりするけんか。乱闘。「町なかではでな立ち回りを演じる」
5 能で、大鼓・小鼓や太鼓を加えた囃子はやしに笛のあしらいで、シテが舞台を静かに一巡する所作。
引用:小学館 デジタル大辞泉
処世術を身に付ける方法
処世術は仕事はもちろん、普段の人付き合いの中でも欠かせない重要なスキルです。生活に役立つ処世術を身に付けるために、必要なポイントを解説します。
しっかり傾聴・知ったかぶりをしない
処世術を身に付ける上で重要なのは、相手の話にしっかりと耳を傾けることです。相手の真意を理解しないまま自分の考えを一方的に押し付けると、信頼関係を損なってしまう可能性があります。
相手からの信頼を得るためには、素直に学ぼうとする姿勢を見せることが大切。傾聴する際は相手の話を遮らず、頷きなどの相槌を挟むことで、相手の話に興味を持っていることを示しましょう。
また、理解できないことがあれば、知ったかぶりをせずに質問する勇気も時には必要です。疑問を解消しないまま作業を進めると、トラブルにつながりかねません。「恐れ入りますが、この部分をもう少し詳しく教えていただけますか? 」などと丁寧に尋ねるとよいでしょう。
人と接するときはにこやかに
人と接するときの態度に気を配るのも、基本的な処世術の一つです。にこやかな笑顔で接することで相手に好印象を与えられるため、より円滑にコミュニケーションを取ることに期待できるでしょう。
心理学では、人に笑いかけることで相手に安心感を与えられ、信頼関係を築きやすくなるという研究結果もあるようです。先輩に質問する際に、緊張した表情ではなく柔らかな笑顔で接することで親身に教えてくれる可能性が高まるかもしれません。
ただし、必ずしも常に笑顔を作っている必要はないといえます。話題によっては笑顔が不適切になる場合もあるため、話の内容やその場の雰囲気に合わせた表情と態度を選ぶようにしましょう。
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