「当社比」ってどんな意味?
「当社比」という言葉を、目にしたことはありますか?日用品や化粧品をはじめ、同じメーカーから新しい製品が販売された場合、前製品よりも高性能であることをアピールするケースがあります。
その際に「洗浄力2倍にアップ!」といったキャッチコピーのあとに小さく、「※当社比」と書かれているのを目にしたことがある方も多いでしょう。
本章では「当社比」がどのような意味なのか、その注意点と合わせて解説していきます。
■語句の意味
「当社比(とうしゃひ)」の「当社」とは、「自分の会社」という意味です。そのため当社比とは、そのまま「自分の会社での比較」といった意味になります。
つまり「当社比」の意味とは、“自社の他製品と比べて”という意味です。主に、新商品の性能が前商品よりも優れていることを表すときに使われます。
メーカーとしては他社の商品と比較して、自社商品が優れていることをアピールしたいところですが、「〇〇社の製品よりも2倍の洗浄力」などと記載してしまえば、さまざまなトラブルに繋がります。
もちろん、広告に関するルール違反にもなってしまうでしょう。ルールについては後ほど解説しますが、このような理由から「当社比」という表記をして、自社の商品と比べて製品が優れていることをアピールするというわけです。
■「当社比」の注意点
「当社比3倍」や「当社比15%アップ」といった記載のように、具体的な数字で表している広告は、一見わかりやすいように感じてしまいます。しかし、ここで注意したいのは、性能が上がっているのは「あくまでも自社製品と比べて」ということです。
つまり、当社比で洗浄力が2倍となっていても、ほかの商品と比べて洗浄力が優れているとはいえません。そのためそもそもの基準となる自社の製品が、平均値よりも低い場合は、当社比2倍となっていても、性能が高いと断言することはできないのです。
何のために「当社比」と書いている?
先ほど「A社の製品の2倍の洗浄力」と記載することで、広告に関するルール違反になると解説しました。このルール違反には「景品表示法」と「有利誤認表示」といった、2つの意味が含まれています。
本章ではこのような広告のルールに関する説明をはじめ、企業が何のために「当社比」と記載しているのかについて解説します。
■景品表示法に違反しないため
景品表示法とは、事業者が出す広告の内容が実際の製品とギャップがないように定められている法律です。商品の性能と広告内容との間に差が生じてしまうと、消費者は適切に商品を選ぶことができなくなります。これを防ぐためにも、この景品表示法が定められているというわけです。
景品表示法で定められているなかで、当社比に関連する事項が「優良誤認表示」で、広告のなかで実際の製品よりも著しく優良であることを制限する決まりです。また他業者の製品よりも、著しく優良であるといったアピールを規制するためにも有効な規定です。
■有利誤認表示にも注意!
景品表示法には、有利誤認表示という規定もあります。これは製品やサービスの内容ではなく、価格をはじめとした「取引条件」に関する規制です。
内容としては優良誤認表示と同様に、実際よりも著しく有利であるといったアピールを防ぐものですが、その対象は製品自体ではなく、取引条件に対してです。
例を挙げると、広告では「送料無料」と記載していたにもかかわらず、実際には限られたエリアのみに適用されるといった場合です。
また「今だけ半額!」と記載していたにもかかわらず、いつまでも半額であることから事実上は半額=定価となっている場合もこれにあたります。
「当社比」の言い換え表現
当社比と同じ意味を持つ表記には、ほかにも「当社基準」「当社調べ」「伸び率」などがあります。いずれも、基準が自社であることには変わりがありません。しかし、なかには少しニュアンスが異なる表現もあります。
本章では、上記3つの言い換え表現について解説していきます。それぞれの違いを理解したうえで表記ばかりに惑わされず、冷静に製品を選びましょう。
■当社基準
「当社比」と似た言葉に、「当社基準(とうしゃきじゅん)」というものがあります。漢字のとおり、これは「当社における基準値」という意味です。
例えば、「最高濃度のビタミンC ※当社基準」と表記されます。これもまた、「当社比」と同様の意味でも用いられます。より簡単に言い換えると、「自社製品のなかでは、最高濃度である」ということです。
■当社調べ
当社調べという記載もまた、当社比とほとんど同様の意味で使われる表現です。意味はそのまま、自分の会社でおこなった独自調査による結果であるという意味で使われています。当社基準や当社比よりも、シンプルな表現であるため意味がわかりやすいでしょう。
メーカーによっては「当社」ではなく「自社」として、「自社調べ」と表記する場合もありますが、これも「当社調べ」と同様の意味です。
■伸び率
「伸び率(のびりつ)」とは、言葉どおり「伸びる割合」のこと。売上の伸び率や生産伸び率といったように、ほかの単語と組み合わせて表現されることの多い表現です。
ただし「売上」や「生産」と組み合わせることからもわかるように、「当社調べ」「当社基準」といった表現が使われる製品などとは少し異なります。
数字に惑わされないためには?
「〇〇成分30%アップ(当社比)」などのように書かれていると、数字にばかり注目してしまいます。しかし、数字ばかりに気を取られてしまうのは避けたいところです。
数字に惑わされることなく冷静に判断するためには、1つの数字だけで実態を全て把握することはできないと意識しておくことが重要です。
具体的な数字はわかりやすいようで、かえってほかの情報を遮断することになってしまいます。そうならないように、数字以外の情報にも気を配っておきましょう。
「当社比」の意味を正しく理解しよう!
製品のキャッチコピーでよく目にする、「当社比」というワードについて解説しました。「50%アップ!」などと書かれていると、つい非常に優れた製品であるように感じてしまいます。
しかし、「50%」という数字ばかりを見てしまうと、その数字の本当の意味を見失ってしまうかもしれません。当社比の意味をしっかりと理解して、製品を冷静に判断しましょう。
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