年功序列とは
「うちの会社は年功序列だから」などと耳にしたことがある方もいるかもしれません。「年功序列」という言葉はなんとなく聞いたことがあっても、具体的にどのようなものなのか、説明しようとすると難しいのではないでしょうか? また、最近ではグローバル化が進んでいることもあり、海外の人にこのような言葉を説明する場面もあるかもしれません。
年功序列とは、わかりやすく言うと、年齢や勤続年数に応じて、賃金や役職が上がっていく体制のこと。たとえば、ひとつの会社で勤めた期間が長くなればなるほど、昇進、昇給をしていくというシステム。やや極端な例ですが、「勤続1年ごとに〇円昇給する」というようなイメージです。
また、年功序列は、昇給や昇進の基準が勤続年数に応じて明確に決められている場合だけではありません。中には、暗黙の了解で、勤続年数が長い人が自動的に昇進していくというような慣習がある会社も。
明文化されているもの以外にも、こういった空気や伝統があるときにも「年功序列」と呼ぶことがあります。
年功序列のメリットとデメリットは?
年功序列のメリット、デメリットも見ていきましょう。
1:メリット
年功序列は、企業にとって人材を安定的に確保できるという点で、メリットがあるといわれています。勤続年数が長くなればなるほど、年収や地位が上がっていくというシステムでは、「なるべく長く勤めよう」というような意識が働く人も多いでしょう。こうして人材を定着させたいときに、年功序列制度を選択する傾向があるようです。
また働く側にとっても、働いている年数に応じて自動的に収入が上がっていくことで「ライフプランが立てやすい」というメリットがあるよう。年齢が高くなると、結婚や出産、育児、マイホームの購入など、お金のかかることが多くなる傾向にあるでしょう。もちろん、最近では価値観や選択も多様化していますが、「お金がかかる時期に昇給があると助かる」という声もあるようです。
2:デメリット
年功序列の企業側のデメリットとして特に大きいものは、人材コストが高くなることです。というのも、勤続年数が長いほど賃金が上がっていくシステムでは、だんだんと従業員の年齢が上がるに従って、人件費が上がってしまいますよね。
また、年功序列では、「頑張らなくても長く勤めさえすればよい」というような意識の従業員が残ってしまうことも問題になっています。そして、このような風潮の会社では、若手社員が「正当に評価されない」というような不満を持ち、能力主義の会社に転職してしまうことも。
実際に、「成果を出していない年上の上司が、自分の年収の倍をもらっているのは、おかしいのでは?」という疑問の声も聞きます。このように、人件費の増加や、社員のモチベーション低下、離職率増加などが、年功序列のデメリットといえるでしょう。
年功序列を廃止する動きも
急激なテクノロジーの発展や、時代の変化によって、年功序列を廃止せざるを得ないという企業も。特に年功序列制度の下で、人材コストが跳ね上がっていくことに頭を抱える企業も多いようです。
また、近年ではテクノロジーの変化やグローバル化が急激に進み、それに対応するために、より多様な人材の確保が急務になってきました。こうした背景の中、年功序列制度に限界を感じ、能力や成果を重視する動きが出てきたともいわれています。
参考:令和元年度 年次経済財政報告 第2章 労働市場の多様化とその課題 第2節(内閣府)
もともと年功序列制度は、若いときに身につけた職業スキルが高齢になっても業務に生かせるような時代では、メリットも多くありました。しかし、変化のスピードが急激に増している現代では、見直さざるを得なくなってきたともいえるでしょう。
特に日本の企業でも、スタートアップ企業などでは、年功序列ではなく能力や成果によって昇進や昇給をするということも増えてきているようです。中には、20代の管理職の部下が30代や40代ということも。
これまで、年功序列が当たり前の働き方をしていた人が、こうした文化の会社に転職して驚いたというケースもあるようです。
年功序列を英語で言うと?
年功序列は、英語ではどのような表現になるのでしょうか? なかなかすぐに思い浮かぶ方は、少ないかもしれませんね。
日本では伝統的な年功序列制度ですが、国によってはまったく異なる考え方をするので、英語で説明できるようにしておくと役に立つ機会があるかもしれません。それでは、年功序列の英語表現を一緒に見ていきましょう。
年功序列は、「seniority system」といいます。
これだけだと、海外の人から、「具体的にどういうこと?」と聞かれることもあるかもしれません。具体的に説明する例文も見ていきましょう。
例文:In this company, employees are promoted according to length of service.
意味:「この企業では、従業員は勤続年数に応じて昇進します」
ただし、このように説明したとしても、海外の従業員から納得してもらえるかどうかは、疑問です。もし、海外の優秀な若手人材を採用したい場合には、年功序列制度は、あまり適さないかもしれません。能力主義の海外企業も、そういった人材を欲しがっているからです。若手からすれば、より能力や成果を評価してもらえる企業に就職したいというのが自然な流れでしょう。
もちろん、これは個人の考え方や文化圏にもよるので、一概には言えません。たとえば、「この先どうなるのかわからない」というような不安定な働き方を避けたいという人もいるでしょう。そう考えると、比較的先を見通しやすい年功序列制度の企業は、魅力的に映るかもしれません。
ただ、年功序列制度を維持しきれなくなっている日本の企業が多いのも事実。これから時代がどのように変わっていくのかは、注目したいポイントですね。
最後に
この記事では、年功序列の概要や、メリットとデメリット、英語での説明の仕方などを解説しました。年功序列は見直す動きもあり、今後変化していく可能性もあるので、この先の動向にも注目したいところですね。
執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン
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