謝辞とは?複数の意味をチェック
謝辞には複数の意味があり、シーンによって使い分けます。どちらか一方の意味しか知らないと、誤って使ってしまうかもしれません。謝辞が持つ、二つの意味を紹介します。
感謝を表す言葉
謝辞が持つおもな意味は、相手への感謝の気持ちを言葉で表現すること。たとえば、結婚式でのスピーチや論文の最後に添える文章など、さまざまな場面で使われます。
しゃ‐じ【謝辞】
1 感謝の意を表す言葉。
2 非をわびる言葉。
引用:小学館 デジタル大辞泉
謝辞の基本は、誰に何を感謝しているのかを明確に伝えることです。単に「ありがとう」と言うだけでなく、具体的な理由や出来事を挙げて、心のこもった内容にするのが謝辞といえます。
また、相手の心に響くように真摯な態度で伝えることが重要。声のトーンや表情、ボディランゲージなども含めて、感謝の気持ちを全身で表現します。
非礼を詫びる意味もある
謝辞には、感謝を表す以外にも、非礼を詫びる意味があります。しかしながら、謝辞の基本的な意味としては感謝を伝えることが広く知られているため、非礼を詫びるという意味で謝辞という言葉を使っても、相手によっては「なぜお礼を言うのか」と誤った捉え方をされてしまう可能性もあるかもしれません。
自分の非を謝るという意味を表現したい場合は、「非を詫びる」「謝罪する」というような伝わりやすい表現を用いると齟齬が生まれにくくなるでしょう。
シーン別にみる謝辞の使い方・例文
謝辞は、感謝を述べるさまざまなシーンで使われています。結婚式・卒業式・論文など、シーン別に盛り込むべき内容や例文などを紹介します。
結婚式
結婚式での謝辞は、新郎新婦が感謝の気持ちを伝える大切な瞬間です。通常、披露宴の終盤で行われ、3分程度が理想的な長さとされています。心からの言葉を使うことが、感動的な謝辞のポイントです。
たとえば、「本日は私たちの晴れの日にお越しいただき、心より感謝申し上げます」などの導入から始め、「お父さん、お母さん、今日まで私たちを育ててくれてありがとう。これからは互いに支え合い、幸せな家庭を築いていきます」というように続けます。
列席者全体への感謝から始め、両親や友人たちへの個別の感謝を述べていく流れが多いでしょう。最後に「皆様のご支援のおかげで、新たな人生をスタートできます。これからも温かく見守っていただけますと幸いです」といった結びの言葉で締める傾向にあります。
卒業式
卒業式での謝辞は、学生生活の集大成を表現する重要な機会です。多くの場合、卒業生代表が登壇し、教職員や保護者への感謝を述べます。
たとえば、「本日はご多用の中、私たちの卒業式にご臨席いただき、誠にありがとうございます」と始め、「先生方の熱心なご指導により、私たちは大きく成長できました」と続けるのが一般的です。
謝辞では、学生時代の思い出や将来への抱負も織り交ぜると効果的とされています。「部活動で培った忍耐力を、社会人としても活かしていきたいと思います」といった具体例を挙げることで、聴衆の心に響く謝辞になるでしょう。また、卒業式の謝辞は通常3〜5分程度が適切とされています。
レポート・論文
レポートや論文における謝辞は、研究や執筆過程で支援を受けた方々への感謝を表す重要な部分です。通常、本文の最後に記載され、指導教官・共同研究者・資金提供者などへの謝意を示します。
たとえば「本研究を進めるにあたり、〇〇教授から多大なるご指導を賜りました。ここに深謝いたします」といった形で始めます。「△△氏には実験データの解析に関して貴重なアドバイスをいただきました。厚く御礼申し上げます」など、具体的な支援内容と各人の貢献を明確に示し、より誠意を込めることが大切です。
また、研究倫理の観点から資金提供者など利害関係の開示も重要です。その研究が公平性を損なうものではないかと疑われる状態を利益相反といい、それへの対応のために「本研究は××財団からの助成を受けて実施されました」のような記述を含めます。
謝辞と似た意味を持つ言葉
謝辞以外にも、謝意・祝辞・詫言など、似たような表現があります。謝辞と同様のシーンで使えるこれらの類語・言い換え表現の意味や、使用例をみていきましょう。
謝意
謝意とは、感謝の気持ちを表す言葉や態度のことです。謝辞と同様に自分の過ちを詫びる際にも使用されます。
たとえば、結婚式のスピーチで「皆様のご支援に深い謝意を表します」と述べると、列席者への感謝の気持ちを伝えられます。謝意を示す際は、相手の立場や状況に応じて適切な言葉遣いを選ぶことが大切です。
また、謝辞が感謝を述べる「言葉・文章」を表すのに対し、謝意は感謝の「気持ち」にフォーカスしているのが両者の違いといえます。
謝意を適切に表すことで、人間関係の強化や社会的信頼の構築にもつながるでしょう。SNSやメールを通じて気持ちを伝える機会も増えていますが、対面での謝意表現の重要性は変わらず、状況に応じて適切な方法を選択することが求められるケースもあるかもしれません。
祝辞
祝辞は、めでたい出来事や特別な機会を祝福し、喜びを表す言葉です。謝辞が卒業生や新郎新婦、レポート作成者など祝われる側が伝える言葉であるのに対し、祝辞は来賓など祝う側が贈る言葉といえます。
結婚式や入学式、昇進祝いなど、人生の節目で用いられることが多く、相手の幸せを心から願う気持ちを込めて述べられます。
たとえば、会社の昇進祝賀会での祝辞は「〇〇さんの昇進を心よりお祝い申し上げます。今後のさらなるご活躍を期待しております」といった内容です。形式的な言葉ではなく、心からの祝福の気持ちを込めることで、より相手に響く祝辞となるでしょう。
詫び言
詫び言(わびごと)は、自分の非礼や過ちを認め、相手に謝罪の意を表す言葉や行為を指します。「非を詫びる」という意味での謝辞と同義で、相手への配慮や誠意を示す重要な役割を果たします。
たとえば、ビジネスシーンで「先日の会議で不適切な発言をしてしまい、申し訳ございませんでした」と述べて自らの過ちを認めるのも詫び言の一例です。詫び言を述べる際は相手の感情を考慮し、具体的に何が問題だったのかを明確にしつつ、再発防止の意思を示すと効果的でしょう。
適切な詫び言は、信頼回復や人間関係の強化につながる可能性があります。しかし、形式的な謝罪や過度な自己卑下は逆効果となる場合もあるため、状況に応じた適切な対応が求められます。
謝辞を述べる際に注意したい言葉も
謝辞を伝える際、使用すると失礼になる言葉があります。前もってNGワードを押さえておくことで、知らないで使ってしまう心配が軽減できるでしょう。謝辞を述べる際に避けたい、忌み言葉や重ね言葉を紹介します。
切れる・負けるなど「忌み言葉」
謝辞を述べる際には、言葉選びに細心の注意を払う必要があります。特に「切れる」「負ける」「流れる」「終わる」などの「忌み言葉」は避けた方が賢明です。これらの言葉をめでたい席で使用するのは縁起が悪いとされ、聞き手に不快感を与える可能性もあります。
たとえば「お世話になった恩師との縁が切れないよう」という表現は避け、「お世話になった恩師との絆を大切にしたい」といった前向きな言い回しを選びます。同様に「負けないよう頑張ります」ではなく、「勝利を目指して努力します」と表現するのが適切といえるでしょう。
また、「死ぬ」「病気」といった言葉も避け、代わりに「健康に気をつけます」「元気に過ごします」など、ポジティブな表現に言い換えるのが一般的です。
たびたびなど「重ね言葉」
結婚式において謝辞を述べる際、「たびたび」「くれぐれも」などの重ね言葉にも注意が必要です。同じ言葉を何度も使うと「結婚を繰り返す=再婚」をイメージさせるので、よくないとされます。
また、重ね言葉は繰り返しの印象を与え、聞き手に不快感や冗長さを感じさせる可能性もあります。「いろいろ」「さまざま」といった曖昧な表現もおすすめできません。具体的な内容を示した方が、より心のこもった謝辞になります。
例えば「いろいろとお世話になりました」ではなく「多くの貴重なアドバイスをいただきました」のように、できるだけ具体性のある感謝の言葉を述べるのが効果的です。
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