そもそも「象徴」ってどんな意味?
なんとなく何かのシンボル的なものを指して「象徴的」と言うことがあります。象徴と言うワードに限らず、どのような意味があるのか正確に知らず、なんとなくのニュアンスで使ってしまっている言葉は、案外たくさんあるものです。もちろん象徴もその一つでしょう。本章ではまず初めに「象徴」の正しい意味や使い方について解説します。
語句の意味
「象徴(しょうちょう)」とは基本的に、目には見えない「抽象的な思想」または「概念」を、物やマーク(図形)を用いることで、わかりやすく伝えることを意味する言葉です。
つまり基本的に対象となるのは「目に見えないもの」であり、誰の目から見ても明らかなものに使われることはありません。辞書によると「象徴」は、以下のような解説がされています。
抽象的な思想・観念・事物などを、具体的な事物によって理解しやすい形で表すこと。また、その表現に用いられたもの。シンボル。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
つまり象徴をごく簡単に説明すると、「抽象的なもの」を理解しやすくするために「具体的なもの」で表現することや、またそのものが「象徴」とされるということです。
語句の使い方
では「象徴」とは、どのように使われる言葉なのでしょうか。以下では象徴の使い方として、2つの例文を紹介します。
1.キジは日本を象徴する鳥であり、国鳥でもある
2.鳩は平和の象徴だ
1の「キジは日本を象徴する鳥であり、国鳥でもある」というのは、日本という国のイメージ(抽象的なもの)を「キジ」という具体的な鳥を用いて表現している一文です。
キジのオスは、飛ぶ姿が力強く男性的とされています。そしてメスは、常に巣のまわりで卵やヒナを守るといった習性をもつことが、古くからの「日本家庭」の姿に似ていることから国鳥とされているといった説があります。
2の「鳩は平和の象徴だ」というのは、平和という抽象的な概念を、鳩といった具体的な鳥で表現しています。
さまざまな「象徴〇〇」
象徴という単語は「〇〇の象徴だ」のように、それ単体で使用されることもありますが「象徴主義」や「象徴機能」などのように熟語のなかに用いられることも多くあります。
本章ではこの2つの四字熟語について、その意味を解説していきます。「象徴」というワードと合わせて、ぜひ2つの四字熟語の意味も一緒に覚えておきましょう。
象徴主義
「象徴主義」と言う言葉は、19世紀後半のヨーロッパ(フランスやベルギー)で広まった芸術の潮流のことです。目には見えない人間の内面的な要素や観念を浮き彫りにした作品などが、象徴主義に該当します。またこのような表現方法を用いる運動自体を「象徴主義」ということもあります。
芸術の潮流と説明しましたが、もともとは文学界からはじまったものです。詩人のジャン・モレアスによって始まった運動であり、近代史に大きな影響を与えるものとなりました。
象徴機能
「象徴機能」とは、特定の物事を何かの記号やマークによって表現し、認識することを指したものです。「象徴機能」の代表的なものは「言葉」です。特定のイメージを他者に伝えるために、人は「言葉」を用います。
例えば「クマのぬいぐるみ」と聞くと、人によって多少の違いはありますが、大体似た形状のものをイメージするでしょう。このように頭の中でイメージしているものを、わかりやすく伝えるために用いるこの「言葉」こそが象徴機能なのです。
「象徴」に似た言葉
抽象的なイメージや概念をわかりやすく伝えるために用いられる表現として使われる言葉には、象徴の他にもいくつかあります。代表的なものが「表徴」「シンボル」「表象」「比喩」の4つです。
本章ではこの4つについて、詳しい意味を解説するとともに、象徴と異なるニュアンスで用いられる場合は、その違いについても解説していきます。
表徴(ひょうちょう)
「表徴(ひょうちょう)」という単語には、2つの意味があります。1つ目の意味は、外面に浮き彫りになった印であり、2つ目は言葉やモノで表現することのできない「事象」や「心象」を、連想できるような言葉に言い換えることというものです。例えば「10代のニキビは思春期の表徴」といった具合に使用されます。
意味としては、象徴とほぼ同様の意味で使われていますが、どちらかと言うと、象徴の方が一般的に使用されるイメージです。
シンボル
「シンボル」は象徴と同等に聞き慣れている単語といえるでしょう。英語では「Symbol」と書き、それをそのまま「シンボル」と使います。象徴と同じ意味で使える単語であり、既出の例文「鳩は平和の象徴」は「鳩は平和のシンボル」と表現することもできます。
言葉のニュアンスとしても、特に象徴と異なる部分はありません。人によって違いはありますが、シンボルマークのように具体的なマークを連想させるときに多く使われるイメージです。
表象(ひょうしょう)
表象(ひょうしょう)もまた、象徴と同じ意味で使用される単語です。例文としては「解放された精神を表象する造形」のように使用されます。
主に哲学や心理学の分野で使用されることの多いワードであり、直観的に心に思い浮かべることができるものを「外的対象像」ということもあります。
比喩(ひゆ)
「比喩(ひゆ)」とは、主に文章などで用いられる「技法」を指して使われる言葉です。比喩表現などということが多いです。
特定の物事を説明する、または描写する際に、誰にでも伝わる「共通点(共通認識)」をピックアップして説明することを指します。ごくシンプルにいってしまえば「たとえ」となります。ただし「比喩」は表現方法の一つであるため、象徴の言い換え表現として使われるものではありません。
「象徴」の意味を理解し、正しく使おう!
象徴というワードの意味を解説しました。目には見えない昼食的な概念や事柄を、わかりやすく伝えるために用いられる「象徴」。
象徴と似た意味の言葉には、表徴(ひょうちょう)やシンボル、表象(ひょうしょう)、比喩(ひゆ)といったものがあります。しかし比喩は、象徴と全く音時意味というわけではないため、言い換え表現としては使用できないため、注意してください。
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