ジャンルごとに異なるオーラスの意味とは?
「オーラス」は、主に麻雀などのゲームや、飲食業などのサービス業、アイドルのコンサートツアー関連で耳にする言葉ではないでしょうか。これらのジャンルで共通して使われる「オーラス」とは何か、文脈からどの使い方か分かるように説明していきます。

(c)AdobeStock
麻雀用語では勝負の「最終局面」
麻雀において「オーラス」とは、最終局面を意味する言葉です。英語の「オールラスト(all last)」が由来で、一般的な東南戦では南4局を指します。ゲームの勝敗を決する局面かつ、逆転勝ちも起こる可能性があり、プレイヤーは特に慎重な判断が求められる場面です。
オーラス
《〈和〉all+lastから》麻雀用語。ゲームの最終局面、南の第4局めをいう。
引用:小学館 デジタル大辞泉
現在では、スポーツやビジネスなどでもオーラスという言葉を聞くことがあるでしょう。麻雀用語から派生したオーラスは、「最後」を表す言葉として幅広い文脈で使用されているようです。
仕事のシフトでは「オープンラスト」
飲食業などのサービス業において、「オーラス」は「オープンラスト」の意味で使われています。オープンラストは、従業員が開店から閉店まで通しで働くシフトを指します。
たとえば、居酒屋やカフェのスタッフが「明日はオーラスだから、今日は早めに休もう」と言うときは、翌日に通し勤務が待っているという意味です。そこから転じて、客側も「今日はオーラスで滞在してしまった」などと使うケースがあります。
オーラスシフトは、体力的・精神的に疲労がたまりやすい働き方とも。ときには10時間以上働く場合も考えられるため、シフト管理者は従業員の体調管理に配慮しながら、オーラス勤務を組む必要があるでしょう。
コンサート・ライブでは「最終日」
アイドルのコンサートツアーなどにおいて、「オーラス」は最終公演を意味します。もともとアイドルのファンによって使われ始めたといわれていますが、今ではジャンルを問わず広く使用されている傾向にあります。
オーラス公演は、ファンにとって特別です。ツアーの締めくくりとして、しばしば通常の公演とは異なる演出や、次のイベントを予告する発表が行われるケースも珍しくないのだとか。そのため、オーラス公演のチケットは特に人気があり、競争率が通常の公演よりも高くなる傾向にあるようです。
オーラスの使い方や分かりやすい例文
オーラスの意味が分かっても、どのように使うのかピンと来ないかもしれません。麻雀や仕事のシフト、コンサートの文脈で、それぞれ例文を挙げていきます。
例文を見れば、具体的なシチュエーションもイメージしやすくなるでしょう。

(c)AdobeStock
麻雀用語として使う場合の例文
麻雀の試合における最終局面を「オーラス」と呼びます。「オールラスト」を略した言葉で、以下のような使い方ができます。
・オーラスで逆転を狙いましたが、相手の好手に阻まれてしまいました
・(首位が転落した逆転劇の後に)オーラスでトップが崩れるなんて、よくある話だ
・オーラスで思い切った攻めに出て、3位から1位に浮上しました
最終局面で順位が入れ替わることも多く、観客にとっても見ごたえのある試合になりやすいといえます。
仕事のシフトで使う場合の例文
仕事のシフトでも「オーラス」という表現があります。「開店から閉店まで勤務すること」という意味で、特にサービス業や飲食業などでよく使われる言葉です。
・今日のシフトはオーラスだから、終電に間に合うかな
・入ったばかりでオーラスシフト勤務はキツいと思うから、無理しないでね
・明日はオーラス勤務なので、今日はゆっくりしようと思う
このように、仕事におけるオーラスは、シフト表の表記や、同僚や友人との会話で使われます。
コンサートで使う場合の例文
コンサートにおいて「オーラス」を使う場合は、ツアーの「最終日」という意味です。
・オーラス公演のチケットはプレミアが付いているらしい
・SNSで見たオーラス公演のレポを見て、行けなかったことを後悔している
・今回のツアーも残すところオーラス公演のみ。最後まで全力で楽しみます
ファンの間では「オーラスは絶対に外せない」という声が多く、オーラスについて熱く語るSNS投稿を見かけることもあるかもしれません。
オーラスの言い換え表現
「オーラス」というと、やや砕けた表現になります。よりかしこまったビジネスシーンに使える言い換え表現は「大詰め」「千秋楽」などで、それぞれ歌舞伎や能楽からきた古くからある言葉です。言葉の由来やニュアンスを見ていきましょう。

(c) Adobe Stock
麻雀用語のオーラスの言い換えは「大詰め」
通常、麻雀の東南戦ではまず東1局から東4局を行い、その後、南1局から南4局に移行します。この南4局が「オーラス」と呼ばれる最終局面です。
このような最終局面を表す言葉に「大詰め」があります。江戸時代は一番目狂言の最終の幕を「大詰め」と呼んでいましたが、後に劇全体の最終幕を指すようになりました。
大詰めは歌舞伎の脚本用語から転じて、他のジャンルでも使用されています。現在はプロジェクトの最終段階や、ゲームの最終局面なども指す言葉です。
おお‐づめ
1 芝居の最終の幕、また場面。江戸時代には、一番目狂言の最終の幕をいった。→大切 (おおぎ) り
2 物事の終局の場面。最後の段階。「捜査は—を迎えた」
引用:小学館 デジタル大辞泉
コンサート用語のオーラスの言い換えは「千秋楽」
コンサートで使われる「オーラス」は、最終公演という意味です。似たような言葉に「千秋楽」があります。
由来とされるのは諸説ありますが、雅楽の演奏の最後の一曲として演奏されることが多かったのが『千秋楽』だったことから、ものごとの終わりや興行最終日を指して使われるようになった、というのがその一つです。
また能楽「高砂」の「千秋楽は民を撫で~」という一節が付祝言(つけしゅうげん)として謡われることから、能楽・芝居・相撲などの興行最終日を表す言葉として定着したという見方も。付祝言とは、最後の演目の後に謡い、めでたく終わらせるための伝統です。
「千秋楽」は、コンサートや演劇の最終公演を指す言葉としても広く使われています。千秋楽公演では、サプライズ企画が用意されることもあり、初日公演と並んで人気があります。
せんしゅう‐らく
【1】《法要の最後に【2】[1]が奏されるところからという》
1 (「千穐楽」「千穐樂」「千龝樂」とも書く)芝居・相撲などの興行の最後の日。千歳楽。楽日。らく。
[補説]「穐(龝)」は「秋」の異体字。芝居小屋などが火事に通じる「火」を避けて縁起のいい「亀(龜)」を含む「穐」を用いたものといわれる。
2 物事の最後。終わり。
【2】
[1]雅楽。唐楽。盤渉 (ばんしき) 調で新楽の小曲。黄鐘 (おうしき) 調の移調曲もある。舞はない。哀調のある曲で、後三条天皇の大嘗会 (だいじょうえ) に監物頼吉 (けんもつよりよし) が作ったという。
[2]謡曲「高砂」の終わり、「千秋楽は民を撫 (な) で、万歳楽には命を延ぶ。相生 (あいおい) の松風、颯々 (さつさつ) の声ぞ楽しむ、颯々の声ぞ楽しむ」の部分。婚礼などの席で謡われる。
引用:小学館 デジタル大辞泉
オーラスの対になる表現とは?
一方、オーラスの対になる表現は「開局」「初日」などです。「大詰め」「千秋楽」と同じように、ジャンルによって対応する言葉が変わります。「開局」「初日」の意味や使い方を見ていきましょう。

(c)AdobeStock
麻雀の勝負を始める「開局」
麻雀用語の「開局」は、対局の開始を意味する言葉です。麻雀では、プレイヤーが席に着いて最初の試合を始めることを「開局」と呼びます。
麻雀におけるオーラスは「終局」を指すため、始まりと終わりという意味で「開局」が対義語となるのです。
この言葉は、麻雀以外の分野でも使われています。一つ目は、放送局や郵便局などの施設が新しく業務を開始することをいいます。二つ目の意味は、麻雀と同じく囲碁や将棋などの対局競技で、勝負を開始することです。
コンサート最初の日は「初日」
コンサートにおいて「初日(しょにち)」は、連続公演の最初の日をいいます。演劇や相撲などの興行で使われる「初日」という言葉が、コンサートにも応用されました。
アーティストのコンサートツアーでは、オーラスとは異なる意味で、初日公演もまた特別なもの。新しい演出や楽曲の初披露、新作グッズの先行販売など、ファンにとって魅力的な要素が盛り込まれます。
また、初日公演はアーティストにとってもツアー全体の成功を占う重要な機会です。有名なアーティストなら、メディアの注目も集まりやすい日になることもあります。
メイン・アイキャッチ画像:(c)AdobeStock
▼あわせて読みたい