ストレッチの効果とは?
運動不足を解消、コリやゆがみもリセット!
光伸メディカルクリニック院長・整形外科医の中村光伸先生に聞いてみました。
たまのジムより、毎夜のストレッチ! 長年のデスクワークで首や肩が慢性的に凝っている人は、若いころと同じように過ごしているつもりでも日々の運動量が減少する傾向にある、と解説する中村先生。
コリで硬くなっていたり、姿勢が悪いと、運動能力が低下してしまう
たとえば、立ってスマホを見るときは、猫背になって首や肩が前に落ちた姿勢になります。すると上半身の傾きをカバーするために、下半身はひざが曲がり、骨盤が後ろに倒れるという立ち姿に。骨盤が後傾すると、歩くときに足を強く蹴り出すことができなくなり、歩幅の狭い、弱々しい歩き方になってしまうのです。そんな生活を続けていると筋肉の量が落ちて太りやすくなるし、体力が落ちて疲労も抜けにくくなります。その結果、動く気力が低下してますます運動不足になってしまう、という悪循環に陥るのです。
1日の終わりにストレッチを取り入れてみて
まずは、コリやゆがみを翌日に持ち越さないようにしましょう。体がほぐれると血のめぐりがよくなるし、質のよい睡眠を得やすくなります。しっかりと心身の修復が行われ、翌日に疲労が残りにくいというメリットも。朝から元気で活動的に動ける、軽やかな体になれます。
なんか疲れてる・・・気分転換にストレッチも◎
体よりも心が疲れていると感じたら、少々動きたくない気持ちがあっても思い切って体を動かしてみましょう。体を動かすと血の巡りがよくなり、心がリラックスします。ベッドから起き上がってストレッチをしたり、近所を散歩したりするだけでも十分効果的です。
また、運動して体が疲れると、食欲が出るうえによく眠れるようになります。多少疲れがたまっていても、早めに回復することが可能です。
脚瘦せにも効果あり?むくみが解消
たとえば、ふくらはぎのストレッチを行うと、脚のむくみケアにつながります。血液中の水分が外に染み出し、周辺の部位が腫れぼったくなる症状がむくみです。
脚にむくみが生じると、だるさを感じたり脚が太く見えたりします。そんなときは、ふくらはぎの筋肉をストレッチでほぐしましょう。むくみをケアすることで脚をすっきりと見せられ、美脚に近づけるでしょう。
プロに聞いたストレッチの基本と注意点
デスクワーカーに向けたコリ解消プログラムに定評のある、ストレッチトレーナー・菅原みどりさんに伺いました。
ストレッチをより効果的に行うポイント
「リモートワーク続きで、“なんとなく不調”だと感じる方が増えているような気がします。コンディションの調整が少しづつ難しくなってきている今こそ、ストレッチで体と心のゆるみ時間をもつことが大切になってきます。そこでストレッチがより効果的になるポイントをいくつかお伝えします」(菅原さん)
・1日1分でもいいので毎日続ける
「体を動かさなければ運動量の低下でさらに筋肉が縮みますし、関節の可動域も小さくなってしまいます。1日のうち、たとえ1分でもいいので“ストレッチで筋肉を伸ばして関節を動かす習慣”をもつことが大切です」
・リラックスして行う
「ストレッチを行うとき“たくさん伸ばそう!”と、つい力んでしまうこともあると思います。力みは筋肉の収縮を招くので逆効果。できるだけリラックスして、体もゆるませながら行うことでより効果が上がります」
・水を飲む
ストレッチをする前後と最中には、水を飲んで老廃物の排出を促しましょう。そもそも人の体は60%くらいが水分だと言われています。体内の水分を循環させるという意味でも大切です。
「ふだんから力みがちな方は、体の筋肉も硬くなりがちです。怒ると筋肉も硬くなります。また、ストレスも人の体を硬くさせる要因といわれています。毎日少しのストレッチ習慣をもつことで、体と心をゆるめてリセットさせる。ごく当たり前のことだからこそ、今改めておすすめしたいですね」(菅原さん)
初心者はまずここから!簡単ストレッチ
朝の硬い体をゆるく伸ばす1分間のストレッチ
「睡眠中は筋肉や関節を動かさない時間が長いため、血流やリンパの流れがとどこおって、筋肉が自然と硬くなってしまいます。人によってはストレスによる歯ぎしりが出たり、空調で体を冷やしてしまったり、もともとの体のゆがみから深い呼吸ができていないためにリラックスできないなど、さまざまな影響が考えられます。
そこで朝おすすめしたいのが、布団の中から始めるゆるやかなストレッチ。頭の先とつま先を、できるだけ遠ざけるようなイメージで行ってみてください」(菅原さん)
How to
1 仰向けのまま両手を組んで頭の上に上げて、つま先はピンと伸ばします。上下に気持ちよく伸びながら、自然な呼吸で10秒キープ
2 組んだ両手はそのまま、両足はかかとを突き出してふくらはぎを伸ばします。腰が反らないよう、自然な呼吸で10秒キープ
3 足を開いてひざとつま先を外側に向けて立ちます。腰を深く落とした四股を踏むような中腰の体勢から、肩を前に入れるように上体をひねって10秒キープ
4 反対側も同様に、肩を前に入れるように上体をひねって10秒キープ。両足の股関節がよく伸びているのを感じながら行ってみてください
5 足を肩幅より少し広めに開けて立ち、両手を後ろで組んだらそのまま静かにあごを上げ、胸を反らして10秒キープ
6 息を吐きながら上体を静かに前に倒して、お尻を天井に向けるように前屈しながら10秒キープ。体が固い人は床に手がつかなくても大丈夫です
「ストレッチを指導するとき、ひとつのポーズを何秒くらいキープするのかは専門家によって異なります。時間をかけて筋肉をじっくり伸ばせれば理想的ですが、トータルの所要時間が長かったり、難しすぎるポーズだと、どうしても続かなくなってしまいます。やらずに筋肉を伸ばす時間がゼロになってしまうよりは、たとえ10秒でも、毎日継続して行うことで体はよい状態を保てます。
またストレッチを行う際には、決して頑張りすぎないことも大切です。硬くなった筋肉を無理に伸ばそうとすると、かえって筋肉を痛めてしまいます。“ああ、気持ちいいな”と感じる程度の心地よさで、毎日少しづつでもストレッチの時間をもつことからスタートしてみてください」(菅原さん)
寝ながらできる!寝る前の全身ストレッチ
寝る直前に3分足らずで全身ほぐし!道具不要、ベッドの上でできるので、明かりを消して行い、そのまま眠りにつく、という方法もおすすめ。
step1:まずは全身を伸ばす。ベッドの上でバンザイ、肩や肩甲骨周りの緊張がほぐれる。10秒間静止。
step2:①腕を頭上でクロスさせ、両手を合わせる。そうすると腰が伸びる。10秒間キープ。②ふくらはぎを伸ばす。つま先を上げて10秒→下げて10秒。
step3:次に腰周りを。骨盤を上下に動かす。まずはゆっくりと右足を足元方向に踏み出して、腰の右サイドを伸ばす。左右交互に10回ずつ。
step4:腰をひねって伸ばす。10秒間伸ばした後、逆側も同様に。
step5:お尻、もも裏を伸ばす。片脚を上げ、両手で支えて胸の前に引きつける。10秒キープした後、ひざを伸ばしてさらに10秒間。逆側の脚も同様に。
step6:ももの前面を伸ばす。左を下に横たわり、右手で右足首をつかんでももの前面を伸ばして10秒間。ももの外側が張りがちな人は、ひざを左足に近づけて。逆脚も同様に。
体を柔らかくする!上半身のおすすめストレッチ
〝スマホ首〟のコリを制す1分ストレッチ
デスクワーカーの悩みのひとつが、首のコリ。前に突き出た“スマホ首”の状態は、頭の重さの3倍の負荷が首にかかると言われています。腕の重みを利用して首まわりの筋肉をストレッチ!
How to
1 イスに座ったまま姿勢を正し、頭の後ろで両手を組みます
2 次に、頭を手で押し込むようにして、おへそを見ながら背中から丸まります。気持ちのいいところで止めたら、首すじや背中が伸ばされているのを感じながら10秒キープ
3 姿勢をもとに戻して背すじを伸ばし、肩や首の力を抜きましょう。腕の力で首を静かに前に倒していきます。気持ちのいいところで止めたら、そのまま自然な呼吸で10秒キープ
4 そのまま頭をゆっくりと外側にひねり、気持ちのいいところで止めたら、首すじが斜め前に伸ばされるのを感じながら、自然な呼吸で10秒キープ。背中が丸くならないよう気をつけましょう
5 頭をゆっくりと逆側にひねって気持ちのいいところで止めたら、首すじが斜め前に伸ばされるのを感じながら、自然な呼吸で10秒キープ
6 姿勢をもとに戻します。右手は左の側頭部に、左手は背中に置いて、右ひじを下げながら、左の首すじを横向きに伸ばしていきます。気持ちのいいところで止めたら、自然な呼吸で10秒キープ
7 逆側も同様に行います。左手は右の側頭部に、右手は背中に置いて、左ひじを下げながら、右の首すじを横向きに伸ばしていきます。気持ちのいいところで止めたら、自然な呼吸で10秒キープ。終わったら、静かに体勢を戻します
猫背を解消!立ったままストレッチ
パソコン作業をしていると、首が前に出て猫背になったり、キーボードを叩きながら肩が内向きになったりしていませんか。
首が前に落ちた状態でパソコンに向かっているとストレートネックになりやすく、また、キーボードを長時間叩いていると“手を体の前で下に向け続ける状態”も長くなります。ストレッチで違う動きを取り入れて筋肉を伸ばすことも大切!
How to
1 壁の横に立ち、壁側の足を小さく一歩前に出します。手のひらは肩の後ろ斜め上あたりの壁につけて、右ひざに軽く体重をかけながら胸を張ります。そのまま自然な呼吸で10秒キープ
2 次に体を外側(壁と逆側)に向けてひねります。胸が大きく開いて肩が伸びていることを感じながら、自然な呼吸で10秒キープ
3 終わったら、逆側も同様に行います。1で胸を開いて、2で肩のストレッチを行い、上半身を気持ちよく伸ばしましょう
「体を外側にひねるとき、壁にあずけるように少し体を傾けながら胸を開くのがポイントです。姿勢が良くなって胸をしっかり開けるようになり、肩の可動域も広がります。
ちなみに、肩甲骨は通常60度くらい可動できるといわれています。みなさんは今、どのくらい肩甲骨を動かせますか。肩甲骨の裏側の筋肉や、それに付随して動かされる筋肉は、動かさないと可動域が小さくなってしまいます。肩まわりを動かす動作を取り入れることはリフレッシュにもなりますので、ぜひ習慣にしてみてください」(ストレッチトレーナー 菅原みどりさん)
肩こりにや巻き肩に◎座ったままのヨガポーズ
忙しくてもできる! ママのあるある不調対策におすすめの簡単ヨガ。ホットヨガスタジオLAVAのヨガインストラクター・山口美香さんに教えてもらいました。
肩こりの改善には、肩甲骨周辺の筋肉をほぐすことがとても効果的。このポーズでは、両腕をカラダの前で交差させ、背骨を動かすことにより、肩甲骨と背骨の間にある筋肉「菱形筋(りょうけいきん)」を十分にほぐすことができます。
「座ってできるワシのポーズ」
STEP 1
・あぐらで座り、背筋を伸ばす
・両手を前に伸ばし、手のひらを上に向ける
・右腕が下になるように、肘の上で両腕を交差させる
STEP 2
・両肘を曲げて、手の平を合わせる
・手のひらを合わせづらい場合は、手の甲を合わせる
・両肩の高さを揃え、肩を下げて首を伸ばす
STEP 3
・息を吸って、吐きながら背中を丸める
・目線はおへその方へ
STEP 4
・息を吸って背中を反らせ、目線を上へ。
・背中を丸める&反らせる動きを1セットとし、5セット繰り返す。
<POINT>
・背中を丸める・反らすとき、背骨は下から上へ順に丁寧に動かすと良い。
・手の平(または手の甲)同士を押し合いながら動きを繰り返すと、より背中の筋肉が伸びる。
上半身のだるさに効く!タオルを使ったヨガストレッチ
このポーズでは、タオルを使うことで、普段肩が力みやすい人でも、自然と力が抜けた状態で腕を上げることができます。腕を大きく上げると、腰から背中にかけて広く筋肉が伸び、重だるさやコリを和らげるのはもちろん、血流促進にもなり、カラダがポカポカ温まります。
また、上半身を横に倒すことで、背骨を上に伸ばす役割の筋肉「脊柱起立筋」を左右均等に動かすことができるため、背骨の歪みの改善にも効果的ですよ!
さらに、脇腹を伸ばす動作には、むくみの解消やウエストの引き締め効果も期待できるため、出産後のお腹のたるみが気になる方にもおすすめしたいポーズです。
「タオルを使った半月のポーズ」
STEP 1
・両脚を揃えて立ち、タオルの両端を左右の手で握り、頭の上に腕を伸ばす
STEP 2
・息を吸って、背筋を伸ばして胸を開く
・息を吐いて、上体を左真横に倒す
・目線は右の腕越し上へ
STEP 3
・息を吸って、上体を起こす
・息を吐いて、上体を右真横に倒す
・目線は左の腕越し上へ
<POINT>
・タオルを持つ幅はまず肩幅よりも広くしてポーズを行い、この動きに慣れ、肩甲骨周辺の筋肉がほぐれてきたら、肩幅で行いましょう。
・内ももを締め、お腹を引き上げることで、上体を横に倒しても安定した状態でポーズを取ることができる。
・目線を上げることで肩が力む場合は、目線を正面に戻してよい。
むくみ解消にも◎股関節や脚のストレッチ
座ったまま椅子を使って20秒のふくらはぎ~足首ストレッチ
足首の曲げ伸ばしでアキレス腱をストレッチ。「足首を曲げたり伸ばしたりすることでふくらはぎの筋肉が動かされて、脚の血行やリンパの流れが促進されます。アキレス腱がしっかり伸びていることも意識しながら行いましょう。気持ちよく行える範囲で、1と2をくり返し行ってもよいでしょう」(ストレッチトレーナー 菅原みどりさん)
How to 1 イスにやや浅めに腰をかけて、かかとを突き出しながら足を前に伸ばします。ふくらはぎが気持ちよく伸びるのを感じながら、自然な呼吸で10秒キープ 2 次に、つま先を床につけて足を前に伸ばします。足の前側が気持ちよく伸びるのを感じながら、自然な呼吸で10秒キープ。じんわり血流がめぐってきます
動画で解説!股関節ストレッチ超初級編
元体操日本代表選手の田中理恵さん。展開中のYouTubeチャンネル『【リエトレ】ストレッチ』をご紹介!
特にアクセス数の多い人気動画は、「超絶硬い人限定! 元オリンピック選手が教える股関節ストレッチ超初級編」とのこと。わかりやすくて簡単なのに効果絶大。関心のある方はぜひ見に行ってみてくださいね。
美姿勢をキープ!腸腰筋のストレッチ
体のバランスを整える腸腰筋(ちょうようきん)のストレッチ。このストレッチは姿勢改善にも効果的。腸腰筋が硬いと便秘を引き起こす原因にもなります。
STEP1:片膝立ちをする。手は膝の上に置く
STEP2:上半身を前方に移動させ(スライドするイメージ)、後ろに伸ばした脚の付け根から太ももの前を伸ばす。
呼吸のたびに少しずつ深くストレッチをし、15秒程度伸ばす。息を吐きながら⑴の状態に戻す。反対側の脚も同様に行う。
▲伸び方には個人差があるので、自分で伸びている実感があればOK。