敬語の基礎知識
敬語とは、相手に対して敬意や丁寧さを表す言語表現を指します。ビジネスはもちろんのこと、日常会話でもよく使われる表現です。敬語は、日本語のほかに朝鮮語、チベット語、ジャワ語などでも使われますが、欧米語では少ない表現といえるでしょう。
デジタル大辞泉では以下のように説明されています。
【敬語】
話し手または書き手が相手や話題の人物に対して敬意を表す言語表現。
日本語では敬意の表し方によって、ふつう、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種に分けられる。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
敬語は、動詞や名詞、助詞、接尾辞、接頭辞などの言葉の形態や用法によって表現されます。
■敬語を使う理由
敬語を使う理由は、いくつかあります。おもな理由は以下の4つです。
・相手に敬意を示すため
・社会的なマナーとして
・自己表現の1つとして
・コミュニケーションの円滑化のため
敬語を使い、相手に敬意を示すことによって、相手との関係性を明確にし、社会的な信頼や好感を得られるでしょう。敬語は社会的なマナーとしても必要です。
また、敬語を正しく使うことは自分のスキルや能力を示すことにもつながるため、自己表現の1つとしての役割も果たします。コミュニケーションを円滑にするためにも必要なものです。
敬語には尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類ある
敬語には、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つの種類があります。
2007年2月の文化審議会答申の「敬語の指針」では、敬語の働きと適切な使い方をより深く理解するために、3種類ではなく、5種類に分けています。尊敬語、謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)、丁寧語・美化語の5種類です。
ここでは、従来どおり、3種類で解説します。
■尊敬語の解説
尊敬語とは、話し手が語りかけている相手や第三者の動作・状態・所属する物などを高めて言う言語表現と説明できます。たとえば、「会う」という動詞の尊敬語は「お会いになる」「会われる」、「聞く」という動詞の尊敬語は「お聞きになる」「聞かれる」です。
「会社」という名詞の尊敬語は「貴社」「御社」、「店」の尊敬語は「貴店」となるため、名詞の尊敬語はそのまま覚える必要があるでしょう。
■謙譲語の解説
謙譲語は、話し手が、自分もしくは自分の側にあると判断されるものについて、へりくだった表現をすることにより、相対的に相手や話に登場する人に対して敬意を示す言語表現です。へりくだる表現であることがポイントでしょう。
たとえば、「言う」という動詞の謙譲語は「申す」「申し上げる」、「渡す」の謙譲語は「お渡しする」です。「会社」という名詞の謙譲語は「弊社」、「店」の謙譲語は「弊店」となり、尊敬語とセットで覚えるといいでしょう。
■丁寧語の解説
丁寧語は、話し手が聞き手に対して敬意を示して丁寧に言う表現です。語尾に「ます」「です」などをつける使用法や、単語の冒頭に「お」や「ご」をつけて「お言葉」「お名前」「ご検討」とする使用法などがあります。
「お天気」や「お食事」のように、素材を美化する言葉として「美化語」に分類するケースもあります。丁寧語は、相手との関係性や内容に関わらず使えるのが特徴です。
ビジネスでよく使われる敬語の例文
ビジネスに関わる文章には、敬語を使用するのが基本です。主語が誰であるのかを把握して、尊敬語・謙譲語・丁寧語を意識して使うことをおすすめします。
【例文】
・日頃より大変お世話になっております。本日はよろしくお願いいたします。
・A商社のB様がお見えになりました。
・イベント当日は弊社の担当者がうかがいますので、なんなりとお申し付けください。
・まもなく担当が参りますので、おかけになってお待ちください。
よくある間違った敬語の使い方
敬語の正しい使い方は簡単ではありません。すべての言葉に同じようなルールが適用されるとは限らないからです。例外的な使い方もあるため、フレーズを丸ごと覚えておくことが必要になる場合もあります。
よくある間違った使い方を知ることも、正しい使い方をするために有効でしょう。おもな間違った敬語の使い方は以下の3つです。
・二重表現
・上司や目上の人に使えない表現
・尊敬語と謙譲語を混同した表現
それぞれくわしく解説します。
■二重表現
二重表現とは、1つの動作などに対して、「謙譲語+謙譲語」「尊敬語+尊敬語」のように同じ種類の敬語を重複して使用することです。間違った使い方の例文とその理由を解説します。
【間違った使い方の例文】
・御社のA様は先ほどお帰りになられました。
上の文章は、「帰られる」と「お~になる」の二重敬語になっており、正しい使い方ではありません。正しくは「御社のA様は帰られました」です。
ただし、二重表現であっても慣用句のようになっている「お召し上がりになる」「お見えになる」などの表現は容認されています。
■上司や目上の人に使えない表現
敬語として使っているつもりでも、実際には上司や目上の人に対して使うと、失礼になる表現があります。
【間違った使い方の例文】
・本日は遠方まで足を運んでくださり、ご苦労さまでした。
「ご苦労さまでした」は目下の人に対して使う言葉であるため、上司や目上の人には使えません。「お疲れさまでした」という表現に言い換えましょう。
尊敬語と謙譲語を混同した表現
敬語の使い方の間違いで多いのは、尊敬語と謙譲語の使い分けができていないケースです。
【間違った使い方の例文】
・弊社の大株主であるA様が参りました。
「参りました」は謙譲語であるため、へりくだった言い方となってしまいます。主語が自社の社員である場合には使えますが、この文章の主語は社外の人であるため、使えません。正しくは、「弊社の大株主であるA様がお見えになりました」です。
敬語の正しい使い方をマスターしよう
敬語は、相手に対して敬意や丁寧さを示す言語表現で、尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類に分けられます。敬語はビジネスや公的な場面で必須の表現であり、正しく使うことが求められているといえるでしょう。
しかし、敬語の間違った使い方は少なくありません。使い方のルールを覚えておくとともに、よく使うフレーズを覚えておくことも必要でしょう。普段から使い慣れるように心がけて、敬語の正しい使い方をマスターしてください。
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