「是正」とは、「改め正すこと」
報道などでよく目にする「是正」ですが、ビジネスシーンでもよく用いられています。特に、取り扱っている商品やサービスに不具合が生じたときや、クレームやトラブルが発生したときは、「是正」に取り組まなければなりません。
よく目にする言葉ですが、意味や使い方をよく知らないという人は意外と多いもの。重要な場面で使われることが多いので、「是正」について押さえておきましょう。
「是正」の意味を辞書で確認
▷ぜ-せい【是正】
[名](スル)悪い点や不都合な点を改め正すこと。「不均衡を—する」
(出典:小学館 デジタル大辞泉)
上記から、何かしらの事象や手順、内容を正すという意味であることがわかりますよね。また、個人のことではなく、組織や社会全体で生じた事柄に対して使われる言葉でもあります。
「是正」の正しい使い方
「是正」の正しい使い方を見ていきましょう。どのようなシーンで使われるのか、例文とともに紹介します。
シーン1:悪い状況を正す
何かしらの原因で悪い状況に陥った場合に、状況を正すという意味で「是正」を使います。具体的には、次のような状況が該当するでしょう。
・組織や団体が規約に反した
・法律に反する行い
・組織の行為が、社会に悪影響を及ぼしている
また、政治の世界でも「是正」はよく使われています。政治や政治家のすることが国民にとって好ましくないと判断された場合に、「是正」という表現が使われることが多いでしょう。
《例文》
・従業員から、労働時間や労働環境の是正を求める声があがった
・トラブルの原因をつきとめ是正するまで、営業の停止を命ぜられた
「是正」は、明らかに悪い状況をよくする場合に用いられます。「状況をよりよくする」や「今の状況は悪くない」ということには使いません。
シーン2:不平等なことを正す
組織内や社会において、格差が生じるのは珍しくないことです。しかし、それを放置するのではなく、平等になるよう改めていかなければなりません。この場合も「是正」が用いられます。
《例文》
・同じ仕事内容なのに、正規社員と非正規社員に待遇の差があるため、是正が必要だ
・地域により生じる社会的な不平等については、是正すべきである
この意味で「是正」を使うのは、政治関連や労働環境、収入に関することが多いでしょう。
「是正」が使われている言葉とは
「是正」が使われている言葉についてもチェックしておきましょう。ビジネスシーンや報道で頻繁に登場する言葉なので、覚えておくと活用できますよ。
「是正措置」
誤りを正し、改善するように取り計らうことを意味します。金融機関に関する不祥事やトラブルが発生した場合、金融庁は該当機関に業務改善を命じますが、これを「早期是正措置」と言います。
「是正処置」
「是正処置」は、商品やサービスに生じた不具合を正し、再発を防止するためにする処置のこと。メーカーなどではISO用語としても使われています。再発防止のために行う、原因の特定と追及、検証、実験などの総称を表すのが「是正処置」です。
「是正勧告」
法令違反をしている組織や団体に対して、正しく改めるように要求することを「是正勧告」といい、国の機関である労働基準監督署が、労働基準法違反などを見つけた際、出す勧告です。安全基準を満たさない業務内容、不当な労働時間、残業代を支給しない残業などが該当します。
「是正報告書」
組織や団体が「是正勧告」を受けた場合、報告書の提出を求められます。指摘内容についてきちんと是正したということを証明しなければならないからです。これを「是正報告書」といい、定められた期日までに提出しなければなりません。
是正報告書の内容が虚偽と判断された場合は、労働基準監督署から書類送検される可能性が生じます。
「是正」と似た言葉、意味の違いは
ここからは、「是正」に似た言葉と、それぞれの意味の違いを紹介します。それぞれ異なるニュアンスを正しく把握し、適切に使えるようにしましょう。
「改善」
「改善」には、「是正」同様の「悪いところを改める」という意味以外に、「よりよくする」という意味があります。「今の状況でも悪くないけれど、よりよくする」という意味であれば、「改善」が適しているといえるでしょう。
《例文》
・プロジェクトの計画書を見る限り、改善の余地はある
→さらによくするという意味なので、「是正」は適しません。
「訂正」
「訂正」は、文章や言葉などで間違いが生じた部分について正すという意味。ニュースや記事、新聞などで誤りが生じた場合、書類や文書に間違いがあった場合に使われています。「是正」が対象とするのは状況であり、文字ではありません。この点が「訂正」との大きな違いになります。
《例文》
・自治体に提出する予定の書類に誤りがあったため、担当者に訂正を指示した
→正す対象が「文字」のため、「是正」は使いません。
「修正」
悪いところを正し、さらに不適当なところや、不十分な箇所を改善するというニュアンスを含むのが「修正」です。「是正」は、悪いところを正しい状況にするため根本から改めるという場合に使いますので、ニュアンスが少し異なります。
《例文》
・プレゼン用の資料を見直したところ、わかりづらい箇所があったので、レイアウトを修正した
→不十分な箇所を改善するという意味になるので、「是正」は使いません。
日常使いしない言葉の意味も知ろう
報道などで使われる言葉は、表記や読み方が難しいことが多いため、なじみのないものが多いでしょう。「是正」も、日常ではほとんど使いませんよね。
なじみのない言葉は敬遠しがちですが、意味や使い方を知っていると、知識や知見が深まります。よく知らない言葉を見つけたら、都度調べてみると、思わぬ発見があるかもしれません。また、語彙力も確実に身につきますので、ぜひいろいろ調べてみてください。
最後に
報道などでよく目にする「是正」は、悪い状況を改め正すという意味を持ちます。日常ではほとんど使わない言葉ですが、ビジネスシーンではたびたび登場することも。特に、労働の問題ではよく出てきますので、意味や使い方を覚えておきたいですね。
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