矜持(きょうじ)とは?語源や使い方を解説
矜持について「何となく意味を知っているつもりだけれど、普段は使わないからあまり自信がない」と感じている人もいるでしょう。まずは「矜持」の基本的な意味や、使い方から解説します。
意味は自分自身に誇りを持つこと
矜持は、「確固たる信念のもと、自らに誇りを持つこと」や「誇りと自尊心によって自分の行動を抑制すること」を意味する言葉です。
矜持が象徴する自信や誇りは、他者との比較の上に成り立つ相対的なものではありません。周囲がどうであろうとも、自分は自分を認めるという、絶対的なスタンスを表すものです。
たとえ周囲に自分よりも優れていると感じる人物がいたとしても、自分を卑下したり引け目を感じたりすることなく、自分自身を誇る気持ちが「矜持」です。
矜持の「矜」には、「きん」という読み方もあります。このことから、矜持を「きんじ」と読むことも一般化しつつありますが、正しくは「きょうじ」です。
矜持の語源
矜持の意味やニュアンスをより深く理解するためには、その語源について触れてみるのがおすすめです。
矜持の「矜」は、訓読みで「ほこ(る)」とも読みます。この「ほこる」はすなわち「誇る」で、矜持の意味に含まれる「誇り」を表しています。
矜持の「持」は、「保有すること」「保つこと」を意味する言葉です。「矜」と「持」のそれぞれの意味が組み合わさることで、矜持は「誇りを持つこと」を表す熟語となっています。
矜持の使い方
言葉のニュアンスや使い方を知る上で、目的の言葉が実際に使われている文章に目を通してみるのはとても効果的です。以下に、「矜持」を使った例文を紹介します。
<例文>
この業界に長く携わった者の矜持として、君の提案は受け入れられない
その業界で信念と誇りを持って仕事に取り組んできたからこそ、確固たる意志を「矜持」によって表現しています。
口を閉ざした彼の鋭い視線からは、どう説得しても折れないだろうと感じさせる強固な矜持がのぞいていた
誇りと自尊心によって、感情に流されずに自分の言動を抑制しているさまを「矜持」によって表現した言い回しです。
プライド・矜恃(きょうじ)・自負との違いと使い分け
矜持の意味について知る中で、「プライドや自負と似ている」「矜恃とよく似ているけれど違うのだろうか」と感じる人もいるのではないでしょうか。それぞれの違いと使い分けを紹介します。
プライド
「プライド(pride)」を日本語に訳すと、「誇り」や「自尊心」になります。矜持もまた、誇りや自尊心にまつわる熟語であることから、同じ意味として理解されがちです。
しかし、「プライド」と「矜持」とでは、ニュアンスに大きな違いがあります。
「矜持」は周囲の評価がどうあれ、揺らぐことのない絶対的な自信であるのに対し、「プライド」が意味するのは「他者に自分を認めさせたい」という気持ちを前提とする相対的な自信です。
「プライド」が、しばしば「高慢」や「うぬぼれ」と訳されることを見ても、「矜持」とのニュアンスの違いは明確といえます。
矜恃
矜持と特に違いが分かりにくい言葉に、読みが同じで、かつ漢字の見た目も似ている「矜恃」があります。
「矜持」と「矜恃」の違いは、「持」と「恃」の「へん」のみです。しかし、このわずかな違いがそれぞれの言葉のニュアンスに大きな違いを生んでいます。
矜恃の「恃」は「たのむ」「頼りにする」などの意味がある漢字です。つまり矜恃には「自分自身を頼りにする」「自信を持って堂々と振る舞う」というニュアンスが含まれます。
一方で、矜持は「自分を抑制する」「コントロールする」というニュアンスが含まれる言葉です。自信を意味する点では同じですが、結果としての振る舞いは異なります。
自負
自負もまた、矜持と同じく自信を意味する言葉で、主に自分の能力や才能をアピールするシーンで使われます。具体的には、以下のように使います。
<例文>
この商品の魅力を、わたし以上に正しくお伝えできる者はいないと自負しております
矜持が自分自身を抑制したり、コントロールしたりするニュアンスがある言葉なのに対し、「自負」は自己アピールのニュアンスを含む言葉です。同じ自信を根拠にした言葉ではありますが、使い分けを間違えた場合、意図が正しく伝わらないため注意が必要です。
矜持の対義語
矜持の対義語として挙げられる代表的な言葉に「忸怩(じくじ)」があります。詳しい意味や使い方を紹介します。
忸怩(じくじ)
忸怩は「深く恥じ入ること」を表す言葉で、基本的には「忸怩たる思い」という言い回しで使われます。
「忸怩たる思い」は、自分自身の言動に対して「恥ずかしく思う気持ち」「ふがいなく思う気持ち」「申し訳なく感じる気持ち」「自責の念」を表現する言い回しです。具体例としては、以下のような言い回しが挙げられます。
<例文>
あの頃の恩をようやく返せると思った矢先に永遠の別れになってしまい、忸怩たる思いだ
自分を責め、いたたまれない状態を表す言葉であることから、自信や自尊心に裏打ちされた「矜持」とは正反対の意味がある言葉といえます。
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