「破顔一笑」とは?
「笑顔」や「笑い」に関係する表現は非常に多いです。ひと口に「笑い」といっても、ほほえむという意味の「微笑」や、大きな声で笑うという意味の「高笑い」など、程度によってかなり印象が異なりますよね。また、相手を馬鹿にするというニュアンスが含まれる「嘲笑」や「冷笑」など、ネガティブな表現として使われる言葉もあります。
「破顔一笑」は「はがんいっしょう」と読み、顔をほころばせてにっこり笑うことを意味します。「破顔」には、顔をほころばせて笑うという意味があり、「一笑」には、少し笑う・ほほえむという意味があります。それまで無表情だった顔が一転し、表情をくずして笑顔になる様子をイメージすると、覚えやすいかもしれません。
「破顔一笑」は、主にうれしいときや喜ばしいときに使われます。また、にっこりする程度の笑顔を指すため、声を上げて笑うという意味としては使われません。
「破顔一笑」の使い方
顔をほころばせる・笑顔になるという意味をもつ「破顔一笑」。「採用通知を目にして、思わず破顔一笑した」「普段はあまり笑わない兄だが、趣味の話になると破顔一笑の表情を見せる」などのように使うことができます。
何かよいことがあったり、うれしくなったりして、思わず笑顔になってしまうといった場合に使われることが多いです。つくり笑いではなく、うれしさからの自然な笑顔というニュアンスが強いといえるでしょう。
「破顔一笑」の類義語は?
では、「破顔一笑」の類義語にあたる表現には、どのようなものがあるのでしょうか? ここでは、「破顔一笑」と似た意味をもつ表現について紹介します。
1:微笑
「微笑」とは、声を立てずににっこりと笑うことという意味です。「子供が楽しそうに遊ぶ姿を見て、微笑を浮かべた」「彼女は、大きな声で笑うより、微笑することの方が多い」などのように使うことができます。
「微」は、わずかという意味をもつ「微か(かすか)」にも使われる漢字であるため、「微笑」には静かに笑うという意味が含まれることがわかります。
2:喜色満面
漢字だけを見ても、何だか明るい雰囲気が漂っているように思えますね。「喜色満面」とは、喜びを顔いっぱいに表すことという意味であり、「友人は、喜色満面の笑みを浮かべて部屋に入ってきた。よほどうれしいことがあったのだろうか? 」「母の手術が無事成功したと聞いて、喜色満面になった」などのように使うことができます。
声を出して笑っているわけではなくても、満面の笑みを浮かべているという意味をもつ「喜色満面」。破顔一笑と似た意味がありますが、喜色満面の方が、喜びのあまり笑顔になっている様子が文面からもより伝わってくるような気がしますね。
3:目尻を下げる
「目尻を下げる」と聞くと、何となく落胆する・落ち込むという意味を想像してしまう人もいるかもしれませんが、実は反対の意味。「目尻を下げる」とは、満足して笑みを浮かべるという意味で、「かわいい子犬を見て、目尻を下げる」「頑張ってつくった企画書が通り、目尻を下げた」などのように使うことができます。
笑顔になると、自然と目元までゆるむことが多いため、このような表現が生まれたと考えられます。また、「目尻を下げる」は好色そうな顔つきをしているという意味として使われる場合もあるので、誤解しないように注意したいところです。
「破顔一笑」の対義語は?
では、「破顔一笑」と対照的な意味をもつ表現には、どのようなものがあるのでしょうか? ここでは、ほほえみ程度以上に声を上げて笑うさま、無表情なさまを表す言葉を紹介します。
1:呵呵大笑
「呵呵大笑」は「かかたいしょう」と読み、大声を上げて豪快に笑うことという意味です。「彼はいつも明るく、呵呵大笑していることが多い」「私は、酔うとどんなにささいなことでも呵呵大笑してしまうタイプだ」などのように使うことができます。
「呵呵」は、「あっはっは」「からから」といった大声で笑う様子を表す言葉。声を出して大笑いしているというときに使われます。
2:爆笑
「昨日見たバラエティ番組が面白くて爆笑した」などのように使われることが多い「爆笑」。話し言葉から文章まで幅広く使われていますが、「大勢の人がどっと笑うこと」が正しい意味であるとされていました。
そのため、ひとりで大笑いすることを「爆笑する」と表現するのは間違っていると言われてきましたが、『広辞苑』改訂版では「はじけるように大声で笑うこと」と意味が変更されています。辞書の上でも、人数に関わらず大声で笑うことを意味する言葉となったのです。
3:神色自若
「神色自若(しんしょくじじゃく)」は、重大事に直面しても冷静で、顔色が少しも変わらないことという意味です。「神色」は精神と顔色を意味し、「自若」は落ち着いている様子を指します。「自若」が使われている表現には、ほかに「泰然自若(たいぜんじじゃく)」などが挙げられるでしょう。
いずれも、何があっても落ち着いているという意味をもつ表現です。どんなにうれしいことがあったとしても、表情を変えずに冷静沈着としているというニュアンスで使われることもあるため、「破顔一笑」とは対照的な意味であるといえるでしょう。
最後に
今回は「破顔一笑」の意味や使い方、類義語や対義語について紹介しました。顔をほころばせて笑うという意味をもつ「破顔一笑」。漢字だけを見れば、大笑いしている様子をイメージしてしまうかもしれません。
日常生活で使われることはそれほど多くないため、なじみにくい表現のように思えますが、正しい意味を理解しておくことで、ボキャブラリーを増やすことにつながるでしょう。
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