「不倶戴天」とは?
不倶戴天とは、同じ天の下でともに生きることはできないほど、憎しみや恨みが深いという意味の言葉です。
【不倶戴天】
《「礼記」曲礼の「父の讐(あだ)は倶(とも)に天を戴(いただ)かず」から》
ともにこの世に生きられない、また、生かしてはおけないと思うほど恨み・怒りの深いこと。また、その間柄。「―の敵」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
かなり強い意味を持った言葉であるため、「相性が合わない」「気に入らない」といった程度の関係には使用しません。
不倶戴天は、「不倶戴天の敵」「不倶戴天の相手」「不倶戴天の仲」など、「敵」「相手」「仲」などの言葉とセットで使われるのが一般的と言えるでしょう。
■「不倶戴天」の意味と読み方
「不倶」には「ともにいない」という意味があり、「戴天」には「同じ空の下で生きる」という意味があります。この2つの言葉を合わせると、「同じ空の下にはいられない」というニュアンスになります。
不倶戴天の読み方は「ふぐたいてん」です。不倶戴天の「倶」を「具」、「戴」を「載」と間違えるケースがあるので、注意してください。
■「不倶戴天」の語源
不倶戴天という言葉の語源は、中国・戦国時代の儒学者が礼に関する説を編集した書物「礼記(らいき)」に書かれた以下の一文です。
「父の讐(あだ)は倶(とも)に天を戴(いただ)かず」この文章には、「父を殺した相手とは、同じ空の下にいられない」という意味があります。つまりもともとは父親の仇に対して用いられた語句でしたが、後に「父親の仇であるほど憎い相手」へと対象が広がったのです。
「不倶戴天」の例文
不倶戴天は、歴史物や映画、ドラマなどで使用されることの多い言葉です。憎しみあっている関係以外でも、ライバル関係にある相手に使われることもあります。
【例文】
・隣接する土地の戦国武将である彼らは、不倶戴天の敵として何度も戦いを繰り返しましたが、決着はつかないままでした。
・親の代からの不倶戴天の相手と和解するのは簡単なことではありません。
・我が社の社長とライバル会社の社長は、もともとは同じ高校の同級生で友人だったが、仕事で競争相手となったことから、今では不倶戴天の敵として反目しあっている。
・幼少期からの長い年月にわたる確執が積もりに積もって、彼ら兄弟を不倶戴天の仲にしてしまいました。
■「不倶戴天」をビジネスで使う場合の注意点
不倶戴天という言葉は、強い印象を与えるため、ビジネスで使う場合には注意が必要です。歴史上の人物や物語の中の登場人物などに使う場合には、問題はありませんが、ビジネスで直接的な関わりのある人間に対しては、使わないほうがいいでしょう。
敵を作らないようにすることが、ビジネスの基本だからです。ライバル関係にある人間について、「不倶戴天の関係」といった表現を使うと、波風が立つ可能性もあるでしょう。
「不倶戴天」の類義語・類似表現4つ
不倶戴天には、さまざまな類義語・類似表現があります。おもなものは、以下の4つです。それぞれの言葉のくわしい意味や読み方、例文をご紹介します。
1.「恨み骨髄に徹す」
「恨み骨髄に徹す」とは、骨髄に染みこむほどの深い恨みを抱いていることを意味する言葉です。何度も苦しめられた相手に対して使うことの多い言葉と言えるでしょう。読み方は、「うらみこつずいにてっす」です。
【例文】
・小学校の頃から10年以上にわたっていじめられてきたので、近所のAに対する気持ちには、「恨み骨髄に徹す」という表現がぴったりです。
・かつての友人から、「恨み骨髄に徹す」と言われたのですが、理由がわからず驚いています。
2.「遺恨」
遺恨とは、「忘れられないほど深い恨み」という意味です。遺恨の「遺」には後まで残るという意味があります。つまり遺恨とは一時的な恨みではなく、長く続く恨みを表す言葉と言えるでしょう。遺恨の読み方は、「いこん」です。
遺恨という言葉を使った四字熟語に「意趣遺恨」があります。この言葉も、不倶戴天の類義語・類似表現の1つと言えるでしょう。意趣遺恨は、「晴らさずにはおけない深い恨み」という意味です。
【例文】
・遺恨を残さないように、この場所で徹底的に戦って白黒はっきりさせたほうがいいでしょう。
・親の代の遺恨が原因となって、またしても戦いが始まってしまいました。
3.「怨恨」
怨恨とは恨むこと、または深い恨みの心を意味する言葉です。事件の報道などでもよく使われる言葉と言えるでしょう。読み方は「えんこん」です。「おんこん」とは読まないので、注意してください。
【例文】
・ホテルの中で発見された死体にはたくさんの刺し傷があったため、怨恨による犯行であると見られていますが、くわしい状況はまだわかっていません。
・この土地の住民たちは、大惨事が原因となった怨恨を背負っており、よそ者に対して冷たい扱いをしています。
・彼は新規のプロジェクトを進める際に不公平な扱いを受けたことに対して、怨恨を抱いていた。
4.「漆身呑炭」
「漆身呑炭」とは、「仇を討つためならば、どんな苦労もいとわない」という意味の四字熟語です。「漆身」は体に漆(うるし)を塗ること、「呑炭」は炭を飲むことという意味で、苦労を表しています。「漆身呑炭」の読み方は、「しっしんどんたん」です。
【例文】
・その漫画家は出版社からひどい扱いを受けて、漆身呑炭の日々を送りながらも。作品を書き続けました。
・長い戦いが終わったのちも、その部族の人々の多くが家族を失い、漆身呑炭の時代が続きました。
「不倶戴天」の意味を知って正しい使い方をしよう
不倶戴天とは、ともにこの世に一緒に生きられないほどに、恨みや怒りが強いという意味の四字熟語です。読み方は「ふぐたいてん」で、「不倶戴天の敵」「不倶戴天の相手」「不倶戴天の仲」などの使い方をするケースが多いと言えるでしょう。
歴史物などでもよく登場する語句ですが、かなり強い意味を持っているため、ビジネスで使う場合には、不快感を与えないような配慮が必要です。
歴史上の人物などに使う場合には問題ありませんが、現実の世界でライバル関係にある相手に使うのは、控えたほうがいいでしょう。不倶戴天の意味を理解して、適切な使い方を心がけてください。
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