「一進一退」の基礎知識
読み方は〈いっしんいったい〉。「事態がよくなったり悪くなったりすること」という意味の言葉ですが、もうひとつ異なる意味もあります。
はじめに「一進一退」という表現の詳しい意味や「一」を2つ重ねる意味、「頭打ち」との違い、使い方、例文などについて、それぞれ詳しくチェックしていきましょう。
事態がよくなったり悪くなったりすること
【いっしん‐いったい一進一退】
(名)スル
進んだり退いたりすること。また、事態がよくなったり悪くなったりする状態。「戦況は―を繰り返す」「病状が―する」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
一進一退とは、情勢や状態が改善されたり悪くなったりすることをあらわす言葉です。また、「一進」は進むことを、「一退」は戻ることを意味しており、前へ進んだり、後戻りしたりすることという意味も含まれています。
「一進一退する」というように動詞として表現することもあり、「戦況は一進一退を繰り返している」や「容体が一進一退する」などと使います。
「一」を2つ重ねる意味とは?
「一」の文字を2つ重ねることには意味があります。「一〇一〇」とすることで、「〇したり、〇したり」や「あるいは〇、あるいは〇」という意味になるのです。
ちなみに、同じように一を2つ重ねる言葉には「一挙一動」や「一言一行」「一言一句」「一喜一憂」などがあります。
「頭打ち」との違いと似ている点
一進一退と少し似ている言葉に、「頭打ち」があります。「物事が上限に達しており、これより上にはいかない状態」をあらわす言葉です。伸び悩んでいる様子やスランプなどを表現したいときに使う場合があります。
一進一退は良くなったと思ってもまた悪くなってしまうという表現のため、結局同じところで足踏みしてしまうことは頭打ちと似ているといえるでしょう。
しかし、それ以上良くならないという意味の頭打ちと、良くなったり悪くなったりするという意味の一進一退とではニュアンスが異なるため、言い換えをしたい場合は注意が必要です。
一進一退の使い方・例文
ここでは、一進一退の使い方と例文もチェックしていきましょう。前へ進んだり後戻りしたりするという意味で一進一退を使う場合の例文は、以下のとおりです。
例文
・実力が拮抗しており、一進一退の戦いであった。
・兵士たちは一進一退の攻防を繰り広げている。
また、事態がよくなったり悪くなったりすることという意味で使う場合の例文は、以下のとおりです。
例文
・祖母の病状は一進一退するような状況が続いている。
・いろいろなことがあり、昨日から感情が一進一退している。
これらの例文を参考にして、一進一退の2種類の使い方を理解しましょう。
一進一退の2つの類語・同義語
言葉を理解する際は、類語などをあわせて覚えることで効率的に語彙を増やせます。
一進一退と言い換えができる類語・同義語の表現をチェックして、場面にあわせてさまざまな表現ができるよう、語彙力を高めていきましょう。
・二転三転
・紆余曲折
これらの類語のほかに「停滞」や「足踏み」「抜きつ抜かれつ」といった言葉も、似た表現として使えるでしょう。
それでは、一進一退の3つの類語をそれぞれ詳しくチェックしていきましょう。
1. 二転三転(にてんさんてん)
物事の状態が何度も変わり、定まらないことです。一進一退と少しニュアンスは変わりますが、似たような使い方ができます。「進む/退がる」「良くなる/悪くなる」という二方向のイメージの一進一退に対し、「事態がいろいろな方向に変化する」という意味合いを含みます。
例文
・試合の展開は二転三転して、なかなか決め手につながらない状況だ。
・彼女の発言は二転三転しており、何が本当なのかかわからなくなっている。
2. 紆余曲折(うよきょくせつ)
物事が順調に運ばず、込み入った経過をたどることです。もともとは曲がりくねった道や川の様子を表す言葉で、一進一退と比べると、より複雑な状況において使えるでしょう。
例文
・会議は紆余曲折を経て、ようやく結論が出た。
・これまでの人生紆余曲折あったが、今では心から幸せだと感じる。
一進一退の意味を理解して正しく使おう
一進一退の読み方は〈いっしんいったい〉。「事態がよくなったり悪くなったりすること」という意味の言葉です。また、「一進」は進むことを、「一退」は戻ることを意味しており、前へ進んだり、後戻りしたりすることという意味も含まれています。「一」の文字を2つ重ねることで、「〇したり、〇したり」や「あるいは〇、あるいは〇」という意味を表している言葉です。
言葉が持っている意味・使い方・類語などをしっかりとチェックして、さまざまな言葉を正しく使えるようになりましょう。