貴社とは?
普段の仕事の中で、他社とやり取りをするときに「貴社」という言葉を使うことがあるのではないでしょうか? 当記事では、この「貴社」について詳しく見ていきましょう。
まず読み方ですが「きしゃ」と読みます。もともと「貴」の字には身分が高い、価値があるといった意味があり、「貴社」という表現は、相手の会社や組織を尊重し敬意を表す意味があります。それは、相手の会社が重要で価値のある存在であることを認識していることを示すものです。
似たような表現に「御社(おんしゃ)」があり、「御」という字も尊敬や丁寧の意味を表します。
貴社と御社の違い
「貴社」と「御社」は、場面によって使い分けます。貴社は書き言葉として、御社は話し言葉として使用するのが一般的。どのように使い分けるのか、それぞれ例文をあげて紹介します。
貴社の使い方
履歴書・職務経歴書・エントリーシート・メールなどの書き言葉として用いるのが貴社です。「記者が汽車に乗って貴社に帰社した」のように、「きしゃ」には同音異義語が多くあり、話し言葉で使うと相手を混乱させたり、正しく伝わりにくくなったりするおそれがあります。
【例文】
1:(エントリーシートに記入するとき)英語の勉強に力を入れ、TOEICで930点を取りました。今後も勉強を続け、将来貴社の海外支社で仕事をする機会がいただける場合に備えたいと思います。
2:(履歴書の本人希望記入欄に)貴社規定に従います。
3:(メールで)このたび貴社の新卒採用において選考の機会をいただきたく、連絡いたしました。
4:(送付状の冒頭文で)拝啓 時下、貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
御社の使い方
御社は社外の人との商談や就職・転職活動での面接など、改まった場面での話し言葉として使います。
【例文】
1:(面接で志望理由を聞かれたとき)同じ業界の企業を比較したとき、○○な点がわたしの強みを発揮して働ける環境だと確信し、 御社を志望しました。
2:(会社説明会やOB・OG訪問で質問するとき)〇〇さんが就職活動をされたとき、御社に決めた理由を教えて頂けますか?
3:(折り返しの電話をかけるとき)先ほど、御社の○○様からお電話をいただいた件ですが…
4:(訪問先で謝罪するとき)御社に多大のご迷惑やご心配をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。
「貴社様」「御社様」はNG
これらを使うときの注意点についても触れておきます。前述したように、もともと「貴」や「御」は相手に敬意を表すときに使う言葉。そのため「貴社様」「御社様」では二重敬語になり、過剰な表現になってしまいます。気をつけましょう。
「貴社」「御社」以外の使い分け
これまで、貴社と御社の使い分けについて見てきました。しかし、相手が銀行、学校、病院などの場合は異なる表現を用いるケースがほとんど。書き言葉には「貴」を、話し言葉には「御」を使う点は同じですが、会社が相手ではない場合にも使い分けができるように押さえておきましょう。
銀行
・書き言葉 「貴行(きこう)」
・話し言葉 「御行(おんこう)」
信託銀行株式会社の場合は「貴社」「御社」を使います。
信用金庫
・書き言葉 「貴庫」「貴金庫」
・話し言葉 「御庫」「御金庫」
病院
・書き言葉 「貴院」
・話し言葉 「御院」
学校(小学校・中学校・高校・専門学校)
・書き言葉 「貴校」
・話し言葉 「御校」
「学校法人○○学園」という場合は「貴学園」「御学園」とも表せます。
学校(大学)
・書き言葉 「貴学」
・話し言葉 「御学」
協会
・書き言葉 「貴会」「貴協会」
・話し言葉 「御会」「御協会」
自分の会社は何という?
これまで、相手の企業・組織に対しての呼び方について見てきましたが、自分の会社について表現する際の言葉もチェックしましょう。
当社(とうしゃ)
当社は、上下関係がなくフラットな印象を与えます。社内会議や社内プレゼン、社内文書、就職説明会などで使われることが多いでしょう。
【例文】
1:当社の今年度の売り上げ目標について発表します。
2:当社の2022年度の採用実績は…
弊社(へいしゃ)
弊社は相手よりへりくだる意味を持つ言葉です。おもに社外へのメールやビジネス文書、お客様と話すときなどに使います。
【例文】
1:ご不明点は弊社スタッフに何なりとお申し付けくださいませ。
2:弊社の新商品の説明をさせていただきます。
ただし、提案や交渉、クレーム対応などで、相手と対等の立場に立つ必要がある場合は、へりくだる「弊社」を使うのではなく、あえて「当社」を使うことで相手に対して対等であることを表現できます。
小社(しょうしゃ)
小社は「弊社」と同じく、自分の会社のことをへりくだって表す言葉。「しょうしゃ」と読むことから「商社」と聞き間違えてしまうので、おもにメールなどでの「書き言葉」として使用されます。しかし、最近は「弊社」の方が一般化しており、「小さな会社」という意味合いもあるので、あえて「小社」を使う必要はないかもしれません。
自社(じしゃ)
自社は文字通り自分の会社という意味。自社株や自社製品など、「自社〇〇」と使われるのが一般的です。
同期社員と「うちの会社の製品が売り上げを伸ばして…」と会話するイメージです。「当社」よりもくずした表現で利用できます。
まとめ
書き言葉としての「貴社」と話し言葉としての「御社」。どちらも相手の会社や組織を敬意を持って呼ぶための表現であり、ビジネスの場や公式な文脈で使用されることが一般的です。正しい使い方を知って、相手とのコミュニケーションやビジネス文書を作成するときに活用しましょう。
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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