「思慮が浅い」の意味と使い方
「思慮(しりょ)が浅い」は、よい意味では使われない言葉です。周囲から低く評価されたり、問題のある人物だと思われたりすることが少なくありません。
日常的に使われるわけではなく使用場面が限定されるので、改めて言葉の意味や使い方、言い換え表現などを見ていきましょう。
「思慮が浅い」の意味
十分に物事を考える力が足りないことを、思慮が浅いといいます。思慮とは 「十分に考慮し思うこと」「注意を払って考え判断すること」という意味です。
ただ考えるのではなく、ある事柄に対し熟慮したり思いを巡らせたりします。その場の思いつきだけで発言したり行動したりするのは、思慮が浅い人の特徴といえるでしょう。
思慮が浅いの反対語は「思慮深い」で、物事を深く考えられる人に対して使用します。思慮深いといわれたら、よい意味で使われていると思って構いません。
「思慮が浅い」の使い方
思慮が浅いとは、十分に物事を考えられていない状態を指します。主に人柄について表現する際に使用される言葉です。使い方を理解するために、例文を参考にしましょう。
【例文】
・彼は思慮が浅いので、重要な場面で失敗することが多い
・彼女は思慮が浅く、周りの意見に耳を貸さない
・その場の利益しか考えないビジネスマンは、思慮が浅いと感じられる
・その有名カップルは思慮が浅く、結婚の発表において国民の反応を考えられなかった
上記のように、人物に対して「批判的な意見」を述べる場面で使われることが少なくありません。
「思慮が浅い」の類語・言い換え表現
思慮が浅いの類語には、「短慮」「考えの浅い」「短絡的」などがあります。それぞれの意味を見ていきましょう。
・短慮…考えが足りない以外にも、知識や見識などが浅い様子。また、気の短いこと
・考えの浅い…物事を深く考えられない状態
・短絡的…物事の本質を深く考えず、原因と結果をすぐに結びつけてしまうこと
これらの類語を使えば、「彼は思慮が浅いので、重要な場面で失敗することが多い」を、「彼は短慮なので、重要な場面で失敗することが多い」のように言い換えられます。
思慮が浅い人の特徴
思慮が浅い人には、いくつか共通する特徴があります。全員が当てはまるわけではありませんが、似たような傾向を持つケースが少なくありません。どのような特徴なのか、さっそく見ていきましょう。
同じミスを繰り返している
物事についてしっかりと考えることをしないため、同じミスを繰り返してしまいがちです。
「なぜミスをしたのか」「ミスが繰り返される原因は何か」など、根本的な原因にまで考えが及んでいないので、取るべき対策を怠ります。同じミスを繰り返していると周囲からの評価が下がり、頼りにならない人だと思われてしまうでしょう。
反対に思慮深い人は、ミスをしないための方法に思いを巡らせるだけでなく、ミスをしないことでどのようなメリットがあるのか、という部分にまで考えが及んでいることが少なくありません。
何事にも計画性がない
思慮が浅い人は何事においても深く考えることがなく、行き当たりばったりで行動する一面も。「うまくいかなかったときは、どうするか」という点にまで考えが及ばず、失敗が多い傾向です。
目標が盛大でも計画が不十分なので、実行力が伴わないことが珍しくありません。やるべき仕事があるときも、いつまでに何を終わらせておくべきかの計算を誤り、間違った方向に進めてしまいがちです。
思慮深い人が仕事に取り組む際は、計画的に物事をこなそうとします。さまざまな可能性を考えて計画を立てるので、思わぬトラブルが起きたときも別の方法で実行できるのです。
アドバイスを聞かない
自分の考えが足りていないという自覚がなく、アドバイスを聞く必要性を感じていないということも挙げられます。
全ての物事を分かっているつもりで自信があるので、他人のアドバイスに耳を貸さず、失敗を繰り返すことが多いといえます。偏ったものの見方をしている場合もあり、間違いを指摘すると自分は正しいと反論する人も少なくありません。
自分と異なる意見でも受け入れられる柔軟さがあれば、他者の考えを聞き入れられます。人の話をよく聞く注意深さや素直さがある人は、思慮深くなれる可能性があるでしょう。
思慮が浅い人・深い人の違い
思慮が浅い人と思慮深い人には、どのような違いがあるのでしょうか。両者の違いを知ると、どのように改善すべきかが見えてくるはずです。
学習能力の有無
学習能力とは、学んだことを自分の経験や知識として身に付け、考え方や行動に反映する力のことです。
思慮が浅い人は学習能力に欠け、失敗を深く反省しません。失敗の原因を深く考えずに「また頑張ればいいや」と思ってしまうので、同じようなミスを繰り返すことに。本人は反省しているつもりでも、表面上だけである場合が珍しくありません。
思慮深い人は学習能力が高く、失敗から学んで行動します。ミスの原因が分からなければ、先輩や上司などにアドバイスを求める点も、思慮が浅い人との違いといえるでしょう。積極的に成長しようとする姿勢が感じられるので、さまざまな場面で期待されチャンスを与えられます。
想像力の有無
想像力の有無も一つの特徴として挙げられます。思慮が浅い人は、想像力を巡らせたり、先々を考えたりするのが不得意な傾向があります。想像力の欠如は、さまざまな視点で物事を考えられないことにもつながってしまうのです。
「この言葉が、どのような影響を与えるか」と考えてから発言できないので、周囲の人を傷つけたり嫌な思いをさせたりすることが珍しくありません。本人に悪気がなくても、近くにいる人からは配慮が足りない人だと思われます。
思慮深い人は想像力を働かせて相手の気持ちに配慮でき、物事の先々を予測することが得意です。また、言い方や表現の仕方に注意するので、コミュニケーション能力が高い人だと認識されます。
思慮が浅い人への接し方
思慮が浅い人とうまく付き合えず、人間関係が嫌になってしまうことはありませんか? 仕事や友人関係などの都合で付き合いを断てない場合は、うまく接していくことが大事です。思慮が浅い人への接し方のポイントを見ていきましょう。
話半分に聞くようにする
思慮の浅い人の言動を都度まともに取り合っていると、相手に振り回されてしまいます。トラブルに巻き込まれる原因にもなるので、真面目に受け止めすぎず、話半分に聞くようにするとよいでしょう。
しかし、他愛のない話や世間話などであれば聞き流せても、仕事だとそうはいかないこともあります。本人は自分の意見を通そうと、一生懸命であることが少なくありません。立場上、相手の話を簡単に受け流せないケースもあるはずです。
「どうしてそのような考えに至ったのか」が分からない状態では、意見を取り入れても失敗する可能性が高いといえます。表面上はよい考えのように思えても、深く考えて導き出したものなのか、精査してから取り入れるようにしましょう。
トラブル回避のためにも距離を置く
思慮が浅い人に対し、「この人はこういうタイプの人なんだ」と受け入れた上で、必要以上に関わらないようにしましょう。考え方が合わないと分かっているなら、何かトラブルが起こる前に、距離の取り方を変えた方が賢明です。
人の考えやアドバイスを聞き入れる姿勢を持っていない人を変えようとしても、うまくいきません。こちらが態度を変えて接する方が、付き合いやすくなります。
完全に無視してしまうと人間関係が悪化するので、適度に距離を置くのがポイント。「仕事で必要なこと以外は話しかけない」「なるべく顔を合わせないように過ごし方を変える」などの方法がおすすめです。
思慮が浅いといわれないためには
思慮が浅いと思われてしまうと、重要な仕事を任せてもらえなくなったり、人間関係が悪くなったりする可能性があります。「自分は思慮が浅いのかもしれない」と悩んでいる人は、改善できる方法を試してみるのがおすすめです。
行動する前に考えるくせをつける
思慮が浅いと思われないためには、行動に移す前に一度立ち止まって考えるくせをつけましょう。深く考えるとは、一つの意見をさまざまな視点から考えて結論を出すことです。
自分の考えに自信が持てないときは、尊敬する人物などをイメージして「あの人だったらどのように行動するか」と、思い浮かべてみます。周囲を見回せば、仕事で成果を上げている人や誰からも好かれている人など、手本にできる考え方を持つ人が見つかるはずです。
また、想像力を働かせて行動に計画性を持つことも重要です。例えば「重要な会議に遅れない」という目標があるなら、「道が混んでいるかもしれないから、いつもより20分早めに家を出よう」などと想像力を働かせれば、失敗しづらくなります。
他にも「Aがダメだったら、Bのやり方でやってみよう」という柔軟な考え方を取り入れると、より目標を達成しやすくなるはずです。
ジャンルを問わず本を読む
本を読めば、さまざまな人の経験や考え方を学べます。時間には限りがあるだけでなく、自分では挑戦が難しいこと、周囲にいる人のタイプが限定されていることもあります。
いつも同じ話題や似たような考えにしか触れない環境では、学びがありません。普通は体験できないことでも、本を読めば追体験が可能です。
自分の興味があるものだけでなく、できるだけ多くの分野に触れることは思慮を深める助けになります。さまざまなジャンルの本を読んで、視野を広げましょう。
人の意見を聞く
周りの人の意見やアドバイスを聞き入れると、自分を客観的に見直せます。周囲にいる思慮深い人の意見を聞いて、「どこまで深く考えているのか」「どのように思考しているのか」を知りましょう。
ときには現実を直視したくないと感じる場合や、人の意見に傷つくこともあります。しかし成長するために必要なものだと考え、受け入れることが大事です。
受け入れづらいことであっても、「そういう考え方もあるんだ」と思い認めることが、思慮深くなるための第一歩。人の意見を聞き入れる姿勢を持ち、自分の性格を改善したい旨を伝えれば、きっと協力者を見つけられるはずです。
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