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2024.07.28

「ベクトル」とは? 意味や分野別の使い方、類義語などを紹介

ビジネスシーンで、「ベクトル」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。ベクトルとは、いったいどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。ベクトルという言葉の意味や語源・分野別の使い方などを紹介します。

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ベクトルとは? 意味と語源

「ベクトル」は、日常生活からビジネスシーンまで、さまざまな場面で使われる言葉です。「ベクトル」という言葉を正しく使いこなすヒントとして、まずはその基本的な意味や語源から整理していきます。

カラフルな矢印のイラスト

(c)AdobeStock

辞書的には「向きと大きさを持つ量」を意味する

「ベクトル」は、一般的に「大きさと向きを持つ量」を意味する言葉です。シーンによって微妙にニュアンスが異なりますが、基本的にはこの定義が根底にあるといえます。

たとえば数学の分野では、ベクトルは線分に向きを加えた「有向線分」で表されます。つまり、ある地点から別の地点に向かう矢印のようなイメージです。

ベクトルを正確に理解するには、「向き」と「大きさ(長さ)」の2つの要素を押さえるとよいでしょう。

ベクトル(〈ドイツ〉Vektor)
1 大きさと向きをもつ量。有向線分で表す。→スカラー
2 ベクトル空間の要素である元。
3 (1から転じて)方向性をもつ力。物事の向かう方向と勢い。
引用:小学館 デジタル大辞泉

語源は英語の「vector」

ベクトルの語源は英語の「vector」で、数学で使われる「ベクトル」のほか、「進路」「軌道」という意味を持ちます。

遺伝子工学の分野では、他のDNAを運び込む媒体を「ベクター」と呼び、これも「運ぶ」が語源である「vector」に由来する用法の一つといえます。

英語の「vector」が持つ「方向」と「運ぶ」という2つの意味合いが、日本語の「ベクトル」にも反映されていると覚えるとよいでしょう。

【分野別】ベクトルの使い方

ベクトルを正しく使いこなすには、分野ごとの使い方について知っておくことが大切です。ここでは、「数学・物理分野」「ゲーム制作」「声について表すとき」の3パターンを挙げて解説します。

ポッドキャストのイメージイラスト マイクとノートPCを使って話している人、対面で話している人、それを捉えているカメラ

(c)AdobeStock

数学・物理分野で使う「ベクトル」

数学や物理の分野では、ベクトルは有向線分として扱われます。有向線分とは数学において線分に向きを加えたもので、長さと向きを合わせ持った矢印のようなイメージです。

速度や力といった物理量は、大きさと向きを持つのでベクトル量として表現されます。たとえば、時速50kmで東に進む車の速度は「東向きに時速50km」というベクトルで表します。

一方、質量や時間など大きさのみを持つ物理量は、スカラー量と呼ばれ、ベクトル量とは区別されるのが特徴です。ベクトル量とスカラー量の違いを理解することが、物理学習の基礎といえるでしょう。

ゲーム制作で使う「ベクトル」

ゲームの制作においても、ベクトルは重要な概念です。ゲームの世界を構成するにあたっては、基本的に縦軸・横軸・奥行きの三つの軸が必要になります。このとき、各軸の向きと大きさを定義するのがベクトルです。

また、ゲームのプログラミングでは、敵や味方キャラクターの視線の向きや、攻撃距離をベクトルとして計算するのが一般的です。これにより、キャラクター間の位置関係や攻撃の可否などを判定できます。

3Dゲームでリアルな世界観を表現するには、ベクトルを適切に活用することが欠かせないともいえるでしょう。

声について表すときに使う「ベクトル」

声のベクトルとは、声が届く方向と対象との距離のことです。同じ場所で話していても、声が聞き取りやすい人と聞き取りにくい人がいた場合、前者は声のベクトルの調節が得意な人、後者は苦手な人といえます。

実際の使用例としては、声が通りやすい人について「あの人は声のベクトルの調節がうまいね」と評価したり、初めてのプレゼンに不安を抱いている人に対しては「声のベクトルを意識すれば大丈夫」とアドバイスしたりするケースが挙げられます。

【ビジネスシーン】ベクトルの使い方

ビジネスシーンでの「ベクトル」は、具体的にどう使用されているのでしょうか。例文とともに詳しく解説します。

紙の資料やタブレットを用いて会議している人々の写真

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基本的な使い方

ビジネスシーンでの「ベクトル」は、「考え方や物事の向かう方向」を指して使われるのが一般的です。この使用法は、数学的な定義でいうところの「向き」に該当します。

たとえば「営業戦略のベクトルを決める」といえば、営業活動の大まかな方向性を定めるという意味です。あるいは「経営のベクトル」といったように、会社の進むべき針路を表すためにベクトルという言葉が用いられる場合もあります。

ただし、本来のベクトルは向きと大きさの両方を持つ概念です。「大きさ」を無視して「方向性」という意味だけで安易にベクトルを使うことは、厳密には適切とはいえないかもしれません。

ベクトルを使うときは、「向き」だけでなく「大きさ」、つまり対象のスケールや重要度も考慮に入れる必要がありなす。

方向性を確認したい場合

ビジネスシーンで方向性を確認したい場合、「ベクトルを合わせる」「ベクトルを一致させる」といった言い回しがよく使われます。これは、チームメンバー間の考え方や、目標とする方向性を一致させるという意味合いです。

実際の使用例は以下の通りです。

・プロジェクトを達成するために、チームのベクトルを合わせよう
・同僚とのベクトルが一致したため、スムーズに企画が進められた

「足並みをそろえる」というニュアンスを含む言い回しといえるでしょう。

同じ方向に進むと表現したい場合

ビジネスシーンで同じ方向へ進むことを表現するにあたって、「ベクトルを向く」という言い回しが使用されるケースもあります。

同じ方向に進むことを表現する「ベクトル」の使用例は、以下の通りです。

・プロジェクトを成功させるためには、社員が同じベクトルを向く必要がある
・同じベクトルを向いて業務を進めるのが大切だ

どちらも「一丸となって目標に向かって進んでいく姿勢」を示す言い回しです。

ベクトルと似た意味を持つ言葉

言葉の意味をより深く理解するためには、言い換えられる言葉について知ることが有効です。ベクトルと似た意味を持つ言葉を紹介します。

手をとり頂上へ向かうビジネスパーソンのイラスト

(c)AdobeStock

道筋という意味を持つ「ルート」

ベクトルに似た言葉の一つが「ルート」です。ルートも「道筋」という意味を持っており、ベクトルの「向き」に通じる部分があります。

ただし、ルートにはベクトルのような「大きさ」のニュアンスはありません。「観光ルート」「販売ルート」のように、道順や経路のみを示す場合に用いられます。

一定の道筋という意味を持つ「軌道」

軌道は本来、物体の運動が描く一定の経路や電車などの線路を指します。ビジネスシーンでは、考え方や物事の進め方が定まることを「軌道に乗る」と表現します。

軌道はベクトルと同様に方向性を示す言葉ですが、必ずしも目的地に最短で向かうというニュアンスは含まれていません。「軌道修正する」といった言い回しからも分かる通り、軌道は途中で変更が加えられる余地を残した概念ともいえます。

「ベクトル」は、初めに定めた方向と大きさを変えずに進んでいくイメージが強い言葉であるため、上手に使い分けたいところです。

メイン・アイキャッチ画像:(c)AdobeStock

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