まずは敬語の基本をおさらい
社会に出ると、さまざまな年代の方と関わる機会が増えるため、敬語を使う場面も多くなりますよね。敬語は、相手や人物に対して敬意を表する言葉ですが、使い方や使い分けは、少し複雑。敬語で話した際、使い方の間違いを指摘され、恥ずかしい思いをした人もいるかもしれません。
一般的に使われている敬語でも、実は間違った表現だったということは多々あるもの。敬語の使い方について、おさらいしていきましょう。
敬語は、相手や人物に対して敬意を表する言葉
敬語は、話し手もしくは書き手が、相手や人物に対して敬意を表す言葉です。日本語では、敬意の表し方により、次のように分類しています。
▷尊敬語
・相手や第三者のしている動作や状態などを高め、相手に敬意を表す
・主語は相手であり、目上の人に対して使うことが多い
《例》おっしゃる、召し上がる、いらっしゃる、お忙しい など
▷謙譲語Ⅰ
・自分もしくは自分の側にあると判断されるものについて、へりくだった表現をする
・主語は自分や身内
《例》申し上げる、差し上げる、お目にかかる、ご案内する、伺う など
▷謙譲語Ⅱ(丁重語)
・自分の行為や物事について、相手に対して丁重に表現する
・高める相手がいない場合に使われる
《例》申す、参る、いたす、拙著、小社 など
▷丁寧語
・丁寧な言葉づかいをすることで、相手への敬意を表す
・相手の有無は問わない
《例》ます、です、ございます など
▷美化語
・上品で丁寧な言葉を使うことで、相手への敬意を表す
・相手を高める意思は、含まれない
《例》お体、お茶、お料理、ご飲食 など
間違いやすい敬語の使い方をチェック
ここからは、間違いやすい敬語の使い方を見ていきましょう。例文とあわせて、間違いを紹介します。
尊敬語と謙譲語が混合している
最初に紹介する尊敬語と謙譲語は、どちらも相手を立てて高める言葉なので、混同しやすく、誤用も多いです。
《例文》電話で問い合わせたところ、「担当者に伺ってください」と言われた
「伺う」は謙譲語Iであるため、顧客の動作に用いるのは誤り。顧客を立てるには、尊敬語を用いるのが適切です。この場合は、「担当者にお尋ねください」もしくは「担当者にお聞きください」とするとよいでしょう。
二重敬語になっている
同じ種類の敬語を重ねて使うことを、二重敬語といいます。表現が過度に丁寧になるため、かえってイメージを損ねるということも。特にビジネスシーンでは、二重敬語を使わないことをおすすめします。
《例文》来週の公演を拝聴させていただく予定です
→この場合、「拝聴」は謙譲語のため、そのあとに「させていただく」を用いると二重敬語とみなされます。適切とされる「来週の公演を拝聴します」に言い換えるようにしましょう。
《例文》お客様がお見えになられました
→「お(ご)〜なる」+「れる(られる)」のパターンは、もっとも誤用しやすいかもしれません。どちらも尊敬語にあたるため、この表現はNG。「お客様がお見えになりました」が正しい表現です。
また、二重敬語は敬称にも見られます。敬称とは、敬意を表す呼び方のこと。間違いが多いのは、役職に「様」や「殿」をつけるパターンです。たとえば、「社長様」と呼ぶのは、一見ていねいなようにも思いますが、これは誤り。呼び方は「社長」で問題ありません。
ウチとソトが違う
敬語は、「誰を立てるのか」により、使い方が変わります。一般的には、ウチ(身内や同じ会社の人)とソト(外部や社外の人)とで使い方を分けるのが自然です。
《例文》取引先から部長の予定を聞かれたので、「来週、部長は海外にいらっしゃいます」と答えた
→この場合、「ソト(取引先)」からすると、部長は発言者の「ウチ」に該当しますので、「ウチ」を立てるような言い方は適切ではありません。この場合は、「海外に参ります」が適しています。
「ソト」に対して話す場合は、誰が「ウチ」になるのかを適切に見極め、その上で使う敬語を選ぶ必要があります。
敬語にまつわる疑問をチェック
敬語を使う際、「尊敬していない人にも使う?」や「年下にも敬語を使うの?」と疑問に思うこともあるでしょう。「相手を敬う表現」でありながらも、過剰に敬語を使うのはNGとされているため、戸惑いますよね。
ここからは、敬語にまつわる疑問に感じやすいことを紹介します。判断の参考にしてください。
敬語って、尊敬している人だけに使うの?
敬語は、敬意を表現する言葉ですが、「敬意=尊敬のみ」ではありません。その人の社会的な立場を尊重するということも、敬意の一つ。たとえば、「あの上司は尊敬できない」ということがあったとしても、その人の存在や立場を認めることは、一つの敬意にあたり、敬語を使うのも自然なことといえます。
また、敬語を使うのがふさわしい場面で敬語を使わないのは、相手だけでなく周囲に対しても礼を失することになります。尊敬できないからという理由で敬語を使わないと、相手や周囲にどのような影響を与えるかは、容易に想像がつきますよね。
敬語の役割には、「社会人としての常識を持つ自分」を表現できるという側面もあります。つまり、敬語は、自分自身のためにも使えるということ。この点もよく理解しておきたいですね。
目下の人にも使うの?
敬語というと、目上の人に対して使うものと思うかもしれませんが、実際は異なります。上述したように、敬語はその人の存在や立場を認めるという側面を持つ言葉。年齢や立場が自分より下であったとしても、場面によっては敬語を使う方がベターです。
たとえば、子供の担任である教師が自分より年下だとしても、その立場を配慮し、敬語を使うのが一般的です。自分が年長であったとしても、相手を立てて敬語で話す方が、良好な関係を築くことができるでしょう。
相手に配慮しながら言葉を選び、相手とよい関係を築くには、敬語を使うのが欠かせません。そのためにも、敬語の間違いに気づき、適切に使えるようにしたいものです。
最後に
あらゆるシーンで使う敬語ですが、その使い分けや使い方は複雑なことが多く、間違いに気がつかないまま使っているということも少なくありません。しかし、敬語があるからこそ、年代や立場の違う人ともコミュニケーションが成り立ち、信頼関係を築くことができているということは意識したいもの。敬語を適切に使い、周囲とよい関係を築きたいですね。
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