コミットってどんな言語?語源・意味を確認
ビジネスシーンでよく使われるようになった「コミット」という言葉には、どのような意味があるのでしょうか? 「commitment」という英語から派生した言葉といわれていますが、本来の意味とは異なる和製英語としての使われ方をしているケースもあります。
コミットの語源・和製英語としての意味・業界別の使われ方などを解説します。
語源は英語の「commitment」
コミットは、英語の「commitment」(コミットメント)を略した和製英語です。「commitment」は名詞で「義務・責任・約束・献身・専念」などの意味があり、動詞は「commit」(コミット)で「~をささげる・~に専念する・〜に委任する・〜(罪など)を犯す」などの意味があります。
しかし、日本のビジネスシーンで使われる和製英語のコミットには、もとの英語にはない独自の意味があり、英語とは別の使い方をする点に注意が必要です。
意味1.「積極的に関わる・全力で取り組む」
日本では、ビジネス用語として「コミット」という和製英語が頻繁に使われます。その場合は「目的や目標に対して積極的に関わること」「仕事や案件に全力で取り組むこと」という意味合いで用いられます。
例えば「このプロジェクトにコミットする」と表現する場合、「責任を持って行動する」「全力でそのプロジェクトに取り組む」という強い意思を示すという意味で使われるのが一般的です。
意味2.「結果を約束する」
もう一つ、「コミット」は「結果や成果を約束すること」という意味でも使われます。例えば「今月中にこの案件にコミットする」「売上目標の達成に向けてコミットする」という文章を見てみましょう。
この場合の「コミットする」とは、前述した「積極的に関わること」以上に、「自分や他者に対して明確な期限や目標を設定し、それを守ること」を表すとも捉えられるのです。
IT業界・政界では異なる意味で使われる
「コミット」の持つ意味は、上記の2種類だけではありません。IT業界や政界では異なる意味で使われています。
IT業界では「トランザクション処理(データベースにおける一連の更新処理)が全て正常に完了した結果を確定すること」という意味で用いられます。例を挙げるならば「データの更新が完了したらコミットする」という使い方です。
一方、政界では「公約する」「確約する」「関与する」といった意味で用いられています。ビジネスシーン以上に「必ず実行する」というような強い意味合いが込められた表現といえるでしょう。
ビジネスシーンでのコミットの使い方・例文
コミットという言葉は、さまざまなシーンで使われますが、使い方によっては相手に誤解や不信を与えるケースもあります。どの文脈であれば、どのような意味合いになるのかを例文で確認し、コミットの使い方を押さえていきましょう。
基本は「○○にコミットする」
コミットの基本的な使い方は「○○にコミットする」という形です。○○には目的や目標などを入れることで、「○○に対して積極的に関わる」「○○を必ず達成する」という意味合いに。例文は以下のようになります。
●私はこのプロジェクトにコミットします
●お客様の満足度向上にコミットします
●今期の売上目標にコミットします
アレンジした使い方も確認
コミットは以下のようにアレンジした使い方もできます。
●先月は仕事へのコミットが足りないように感じました
●来期こそは売上目標にコミットしたい
●来年からコミットできますか?
一つ目の例文は、日本語にすると「仕事量が足りない」「仕事に対する姿勢が足りない」という厳しい表現になってしまいます。そこで「コミット」と言い換えることで、受け手の印象を和らげる効果に期待できるのです。
また「コミット+できる」「コミット+したい」という使い方も可能で、目標を示す際に役立つ表現です。特に「コミットできますか?」という表現は、単なる「できるか」というニュアンスよりも「目標を必ず達成できるか」という強い意味合いになるので、明確な使い分けができるでしょう。
コミットを使う際の注意点
コミットという言葉はさまざまな意味合いを持っているため、誤解を招くケースも少なくありません。ビジネスシーンで使用した際に恥をかくことがないよう、確認しておきましょう。
安易に使用しない
コミットという言葉は、自分の行動や結果に対して高いレベルの責任を負うことを意味します。したがって、安易に使用すると、相手に信頼性や誠実さを疑われる場合も。
例えば「明日までにこのレポートを仕上げることにコミットします」といって、期限に間に合わなかったり、品質が低かったりすると、相手はあなたの言葉に不信感を抱きかねません。自分が本当に実現できることや、約束できることに対してのみ使うようにするのが賢明です。
日本語で伝える方がよいケースも
コミットは英単語と和製英語で意味が異なるほか、和製英語としての意味合いも「積極的に関わる」と「結果を約束する」というように若干違いがあるため、相手に誤解を与えてしまう可能性があります。
きつい印象を和らげることに期待もできますが、誤解を与えないよう配慮するのであれば「全力で取り組む」「必ず結果を出す」といった日本語での明確な表現が望ましいでしょう。
また「コミット」という言葉には、押し付けや無理強いのような否定的なイメージを持つ人もいるようです。和製英語自体を好まない人も少なくないため、誰に対しても配慮できる日本語で表現するのが無難といえます。
コミットと類義語・関連語との違い
コミットと似たような意味を持つ言葉として「プロミス」「フルコミット」があります。ただし、これらの言葉はコミットとは微妙に違う意味やニュアンスを持っているので、違いをしっかり理解することが大切です。
プロミスとの違い
プロミスとは「約束すること」「約束」という意味の英語です。
プロミスは「約束したこと」自体や「約束したことを守ること」が重要ですが、コミットは「約束したことを守るだけでなく、それ以上の努力や成果を出すこと」「自分自身がその約束を達成するために努めること」に重きを置いています。
例えば「プロミスしたことは必ず守る」という場合は単に「約束した期限や目標を遵守する」という意味合いになりますが、「コミットしたことは必ず守る」という場合は「期限や目標を遵守することだけでなく、そのために全力で取り組む」という意味が込められます。
フルコミットとの違い
フルコミットとは「完全に関与すること」「全力で取り組むこと」という意味の和製英語です。コミットは「他のことも考慮しながら取り組む」可能性もありますが、フルコミットの場合は「専念する」という意味合いが強まり、重要度が高いことがうかがえます。
例えば「このプロジェクトにフルコミットする」という場合は、「このプロジェクトに最大限注力して専念する」というようなニュアンスです。
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