失念とは? 意味をチェック
自分がうっかり忘れていたことに気づいたとき、相手にどう伝えようか迷いますよね。特にビジネスの場では、なるべく丁寧な印象で伝えたいもの。そんな場合に適している言葉が「失念」です。
しかし、場にそぐわない使い方をすると、意味が正しく伝わらないことも。誤用を防ぐためにも、失念の使い方などを把握しておきましょう。
失念とは「うっかり忘れること」を指す
辞書による失念の意味は、次のようになります。
しつ-ねん【失念】
1 うっかり忘れること。ど忘れ。物忘れ。
2 仏語。記憶をさまたげる心の作用。
(出典:『デジタル大辞泉』小学館)
日常生活やビジネスシーンでは、「うっかり忘れること」の意味でよく使われます。口頭はもちろん、メールでも使える言葉です。
また「失念」は、それ自体が丁寧や謙譲の意味を含むわけではありませんが、目上の人や取引先に対しても使われます。「忘れる」は表現がややカジュアルとされるため、硬めの表現である「失念」を使う方がしっくりくるからです。「うっかり忘れていました」と言うより、「失念しておりました」と伝える方が、より丁寧な印象を持ちますよね。
失念したことを伝える際は、謝罪の言葉も添えるとよいでしょう。失念は、自分自身の落ち度。謝罪の言葉を言い添えて、よりしっかりと謝罪の気持ちを伝えるのもひとつです。その場合、「私が失念しておりました。申し訳ございません」のように使うことができます。
失念の類語、違いは?
失念の類語も押さえておきましょう。それぞれの意味や違いを把握すると、適切に使うことができます。
▷「忘失」
忘失は、「すっかり忘れてしまうこと」「忘れてなくすこと」(『デジタル大辞泉』小学館)という意味です。忘失は、物を紛失したという意味で「〇〇を忘失する」という形でも使うことができ、この点が失念との大きな違いと考えてよいでしょう。
▷「放念」
放念は、「気にかけないこと」「心配しないこと」(『デジタル大辞泉』小学館)を表します。メールや文書などの書き言葉で使われることが多く、日常会話などではあまり使わないかもしれません。相手から「ご放念ください」と言われたら、それは「(そのことは)忘れてください」「心配しないでください」という意味です。
失念はどう使う? 口頭やメールの使い方
実際に失念をどう使うかについて見ていきましょう。例文も紹介するので、参考にしてみてください。
口頭で失念を使う
会話などで失念を使うときは、たとえば以下のように言うことができます。このとき謝罪の言葉を言い添えると、気持ちがより伝わるかもしれません。
《例文》
・説明会の予定を失念しておりました。大変申し訳ございません。
・申し訳ございません。ミーティングの時間変更について、お伝えすることを失念しておりました。
メールで失念を使う
失念をメールでどのように使うかもチェック。メールの場合は、メールの内容確認が遅れてしまった場合や、メールの返信忘れ、ファイルの添付忘れなどで使われることが多いでしょう。
《例文》
・〇月〇日にお送りいただいたメールの確認を失念しておりました。大変申し訳ございません。
・データの添付を失念しておりました。大変失礼いたしました。
「失念していた」というメールへの返信例文
取引先などから、「失念していた」というメールをもらうこともあるでしょう。その場合、どのように返信するのか一例を紹介します。
取引先などから「失念していた」というメールが来たら、まずは相手を気遣う言葉をかけましょう。この一文があると、相手を安心させることができます。また、自分も気づくべきだったと思うときは、その旨も伝えるとベター。
《例文》
・ご丁寧にメールをいただきありがとうございます。〇〇の件はどうかお気になさらないでください。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
・ご連絡のメールをありがとうございます。こちらこそ、気がつかず大変失礼いたしました。
失念を使うなら、注意したいこと
失念を使う際、注意しておきたいことを紹介します。使い方を誤ると、相手が違和感を覚えたり、正しく伝わらなかったりする可能性もあるので、意識しておいてはいかがでしょうか。
「もともと知らなかったこと」には使えない
失念は、既に知っていたことや情報を「うっかり忘れた」際に使う言葉。知らなかったことに対しては使いません。もともと知らないのであれば、「存じません」、より丁寧に伝えたいときは「存じ上げません」などを使うとよいでしょう。
《例文》
・私はその商品を存じませんでした。
・〇〇様については、存じ上げませんでした。
「忘れること」を相手にお願いする場合は使わない
先に送ったメールの内容や、すでに伝えた予定などに変更が生じ、「先のことは忘れてほしい」というお願いをしたいときには、失念は用いません。
《NG例文》
・昨日お送りしたメールの内容は、失念なさってください。
・今回の件はどうか失念してください。
上記の場合は「忘れてください」「ご放念ください」を使うのがよいでしょう。
最後に
使う言葉によって相手に与えるイメージは変わり、「忘れていました」ではなく「失念しておりました」と伝える方が丁寧な印象に。失念という言葉は比較的硬い印象があり、ビジネスシーンでも使いやすいといえます。だからこそ、しっかりと意味や使い方を把握し、適切に使えるようにしたいところです。
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