正しい食事+睡眠+ゆるみ時間を作る
精神科医・産業医の奥田弘美先生によると、日中に受けたストレスや疲労のメンテナンスをするためには、こまめなケアが必要だと言います。
「心身がゆるむことで睡眠の質がよくなり、日中体や心に受けたストレスのメンテナンスをしてくれたり、蓄積疲労で感情が不安定になるのを防いでくれます。もしもストレスホルモンが長期間分泌され続けると、脳の海馬が縮小して記憶力や認知力の低下にも影響するとも言われています。ストレスはこまめにケアしてうまくつきあうことが大切です。
そのために必要な、基本のケアがあります。心の動きは体が受ける刺激の反応から生じます。よい食事で体に栄養を与えて、睡眠でメンテナンスを行い、ゆるみ時間で心と体をゆるませる。これがすべての基本です。 そこまでできて初めて、ストレスとつきあう対策1〝心と体をゆるませる〟レクリエーションを行いましょう。
また刺激過多の現代において、私たちの心は未来の不安や過去の後悔にさまよいがちです。対策2として、マインドフルネスで心を〝今ここ〟に戻すトレーニングも有効です。定期的に取り入れることで、自分の感情に振り回されにくくなっていきます。
そして最後の対策3は、自分自身を知ること。心のクセを理解することで、ストレスを回避できるようになります。いろいろお伝えしましたが、最終的には、自分の心にわがままになることが大切なんです。本当は何を望んでいるのか。心と対話をしてみてください」(奥田先生)
奥田先生曰く、まず生活を整えることが大切だそう。
・心
心は五感(味覚、聴覚、触覚、嗅覚、視覚)を通じてキャッチした刺激を、脳で統合することで生じるもの。心を元気にするためには、体ごと元気になることが重要。
・睡眠
朝日を浴びて生体リズムを整え、寝る2時間前にはスマホをやめて睡眠モードに切り替えることで、良質な睡眠を実現。最低6時間の連続睡眠を確保。
・食事
たんぱく質を豊富に含む肉や魚、卵などを、ミネラル豊富な野菜や果物、海藻とセットでとることが基本。疲れたら疲労回復物質が含まれる肉や魚の赤身部分を。
【まとめ】
対策1:心と体をゆるませる
まずは時間に追われないひとときをもつこと。半日でいいので、スマホや時計を見ない日をつくるのも効果的。
対策2:マインドフルネスで心を鍛える
マインドフルネスを行って、感情や思考と行動を切り離すトレーニングを継続すると、頭の中がすっきり。
対策3:自分自身を知る
自分がストレスを受けやすい傾向を知り、それを対人関係に活かしてストレス軽減を図る。
SNSとの付き合いを制限する
ITジャーナリストの高橋暁子さんによれば、メンタルが不調なときは、SNSと接する時間を減らした方がいいと言います。
「SNSでの通知や連絡ごとが多すぎたりすると、どうしても疲労につながりますよね。メンタルが不調なときは、こうしたSNSと接する時間を減らしたり、使うとしても日中限定がいいかもしれません。内省的になり落ち込みやすいのが夜中だということもはっきりしているので、ぜひこれも意識してみてください。
私も最近、スマホやPCの見過ぎなのかだるかったり目が疲れているときがあって、そんなときはあらかじめ、周囲に『お返事遅くなるけど、ごめんね』と伝えておきました。連絡できる状況にあるのにしないと思われて、些細なことでトラブルになったりするのは、避けたいですからね。こちらの状況をあらかじめ伝えておくことは、有効だと思います」(高橋さん)
旅行に出かける
心を癒すために旅行に出るのも効果的。ダイエット王子の小山圭介先生曰く、日帰りでもいいので、今住んでいる場所から100km離れることで、良い気分転換になるのだとか。
気持ちを言語化する
精神科医・産業医の奥田弘美先生が言うには、自分の気持ちや考えを言語化することで、頭の中が整理されるのだとか。ただし、メンタルの不調が、日常生活に悪影響を与えるレベルなら、専門医に相談することをおすすめするとのこと。
「人に話をすると、気持ちや考えを言語化でき、頭の中が整理される効果があります。ですが何度もグチを聞いてもらうことは、相手の負担になりかねません。そんなときにはカウンセラーなどのプロに相談するのもひとつの手です。またメンタルの不調が増して日常生活に悪影響が出るレベルなら、ぜひ診察を受けてください。精神科では薬を用いながら症状を和らげ、先生からアドバイスを受けられます。心療内科は、メンタルから起こる体の異常にも対応してくれます。カウンセリングルーム併設のところも増えているので、ご自身の調子と向き合いながら、大切な心と体を守ってください。」(奥田先生)
どうしても辛いなら、医療機関を受診して
心の疲れを感じ、さまざまな対策を行ってみたものの、それでも改善しないというなら、医療機関の受診をおすすめします。
我慢しすぎると深刻な状況を招くこともあり得るので、まだ大丈夫だろうという憶測はやめ、思い切って相談してみましょう。
ストレスの原因が仕事にあるとわかっているなら、転職を検討するのもひとつの手です。休職するという方法もあります。状況を変えることで心のあり方が変わる可能性は大いにあるため、無理を強いて心身がパンクしてしまう前に、自分を守る決断をしてあげましょう。
SOSサインが出る前にしたい予防法も
仕事とプライベートをしっかり分ける
仕事や職場での人間関係で心の疲れを感じることが多い人は、プライベートとの境界線をしっかり持つことを意識してみてください。
休日に積極的に外出する予定を立てたり、意識的にゆっくりする時間を作ったりすれば、自動的にオンオフを切り替えられるのでおすすめです。
マイペースを心がける
マイペースはときにデメリットとしても捉えられることがありますが、心が疲れやすい人には必要な要素です。
どんなときでも自分のペースを守ることで、安定したパフォーマンスを発揮できます。自分に集中できるので他人と比較し競うこともなく、おおらかでポジティブな思考も手に入ります。つまり、心に余裕が生まれるのです。
マイペースというと好き勝手にして周囲に迷惑をかける、というイメージを持つかもしれませんが、実はそんなことはありません。とくに仕事においてのマイペースさは、作業の優先順位をつけて自分のペースを作り仕事を進めていくということ。ただ呑気にやっていればよいという意味ではないのです。この戦略的マイペースさを身につけたい人は、スケジュールを立てた後、作業記録をつけ自分のペースを把握し、報告と連絡、相談をしながら進めていくクセをつけていきましょう。
苦痛な人間関係にこだわらない
人付き合いが原因で心が疲れてしまうこともあるでしょう。もう無理だ… となるまで我慢する前に、一度人間関係を見直してみるのも手です。
どんなに頑張っても、歩み寄っても相性が合わない相手はいます。仕事の都合上であればとくに、自分が選ぶことができない関係で疲弊してしまうこともあるでしょう。そんなときは、仕事をうまく遂行させることだけを考え、割り切った距離を保つ方向に思考チェンジしてみませんか?
プライベートでも、本当に苦痛な人間関係にはこだわらないこと。その人と付き合わずしても自分の生活が変わらないのなら思い切って距離を置く、不都合があるのなら自分が壊れない程度の付き合い方や基準を見つけ、割り切った関係を続けられないかどうかを模索してみましょう。
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